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春の嘘(抒情詩)


春の嘘1
春の嘘2

花に
春の雨が
降っている

花芽は
眠るように
濡れている

やさしさへ
靡く
頼りなさへ
燦燦と
雨が降る

萌えんとする新芽に
長けようとする桜の花に

かつて
濡れた春の中で
夢は
唯の夢でなくて
寂しさは
少し冷たい
抱えた膝だった

あの日
しとしと降る
春の雨は
信じたい嘘を
濡らしていた

水に煙り
揺れる
花筏の夢が
青葉城の堀を
桜色に
埋め尽くしていた

忘れられない
漣の水面に
散った花たちが
寄り添って
漂っていた

待つことの
甘さへ
きっと晴れる
明日を信じる
幼いこころへ
ぽとり
ぽとり
春の雨が
降っていた

弘前公園(青葉城)花筏

画像はいずれも弘前城(青葉城、弘前公園)公式サイトより。