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火星の観測車(抒情詩)

火星には
キュリオシティという
観測車があります

観測車の周りには
人類が見たことのなかった
景色が広がっています

宇宙線が降り注ぐ
薄青の金色の夜明けや

蛍光する青色の山塊に
流れる水の痕跡や

まるで巨大な花のように
クレータへ落ちていく水の流れや

マイナス百四十度に凍り付いた
幾何学的な
四千メートルの崖の淵や

純白のドライアイスに満ちた
巨大な黄銅の歯車のような
クレーターや

季節によって動く
赤い砂山に銀の粒を載せた
砂丘の姿や

人類が初めて耳にする
火星を吹く
砂の風の音が
その周りにはあるのです

キュリオシティは
今も一人で働いています
太陽の周りを巡る
火星と地球が
二年に一度
最も近づく日に
地球に向かって
データを送るために
いつか壊れてしまう時まで
キュリオシティは
観測を続けているのです

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