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ひたすらにやわらかな夜明け


それらの言葉を知らずに運ぶ
ひたすらに嘘を知らず
ひたすらに身を削り
ひたすらに生命は通信する

その意思を知らず
ひたすらに醜い言葉を吐き
ひたすらに己に閉じこもり
ひたすらに失うことを恐れ続ける

放逐されたと
まるで拗ねて迎えを待つように
どうせ救われないのだからと
どこかに正しさがあるはずだと

正しさはこの世にない
苦しみだけが燃えている
それらの言葉の中に正しさはない
過ちを余りに含みすぎる

そして生まれた祈り
夜明けの光に命は震えを補充する
糧はそのための綱

眠るために昼はなく
一つの為に己はない
触れる震えを共にする暖かな手

夜は静かにある
声明を隣に親しくし
一日の罪と恥を解き放つ
祈りを口にするために

また夜が明ける
始まり続ける永劫の一日
発せば即久遠へ響く
真実の言葉の種が世に満ちる

瓦礫の下より光が洩れている
穢れた下水の底から清水が湧いている
無辺の空からは無数の光線が降る
我らの内にある震える炎の運ぶもの

石に嘘がないように
樹木に穢れがないように
命にもまた何にもない
光は唯真っすぐに射す
善悪は唯言葉の檻

石が陽に温もるように
樹木が陽を求め伸びるように
唯明るいほうへ
暖かなほうへ
やわらかな手を触れて
やわらかな目に映るものへ
ひたすらに命やわらかであれ