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中高年は何をやっても気持ち悪いのでこの世からいなくなって良いという発想はどこから来るのか

ハライチ・岩井と奥森皐月の結婚だか婚約だかが発表された。

その段階ではまだ、細かいなれそめなどはよくわかっていなかった。
しかしX(ツイッター)では、私の印象としては「気持ち悪い」、「異常だ」、「グルーミングだ」という書き込みの嵐だった(「グルーミング」などという、本来の意味以外の専門用語みたいなものが駆使されてタレントが叩かれるのが、最近の流行)。

岩井は三十代半ば、奥森は19歳だから、法的に結婚できる年齢である。
中には高橋ジョージと三船美佳の結婚のことまでほじくり返して文句を言っている人がいて、あきれてしまった。
もう一度繰り返すが、詳細について何もわかってないときにすでに、「批判」があったのである。
いくら何でも脊髄反射しすぎだろう。

芸能人の多くは見た目も若いし、気持ちも若いらしく、昔から年の差婚が多い。
ちなみにスピードワゴン・井戸田の再婚相手は30歳、年齢は19歳差だが、すでにお相手の女性が30歳だからか「年が離れているから」というバッシングはなかった。

岩井は自身がパーソナリティをつとめる深夜ラジオで、結婚相手とのなれそめを語ったらしい。内容をいっさい知らないが、まさか「相手が13歳の頃から好きでした」とはぜったいに言っていないと思う。断言できる。
事実はどうあれ、「世間一般が認めてくれるストーリー」を組み立てているだろう。
南キャンの山ちゃんが結婚発表したときも、オードリーの若林が結婚発表したときも、「世間が納得するような」物語を語っていた。ちなみに山ちゃんと蒼井優は実は(いわゆる「世間」が)引くほどの年齢差ではないが、若林の方は、けっこう離れている。
オードリーがMCをつとめる日向坂46の番組では、メンバーの最年長が26歳くらいで、若林の結婚相手と年齢がそう変わらないので「メンバーもそういう目で見ているのでは?」という嫉妬にまみれたどこかの知らんヤツのツッコミもネットで目にしたが、まあそんなものはほおっておいていいだろう。

ちなみに最近の芸人の中で「なれそめ語り」がいちばんテキトーだな、と思っていたのが、元アイドルと結婚したバカリズムで、それでもバッシングに至らずやり過ごしたようである。……などと書いたところで検索したら、バカリズムも相手が元アイドルということで、結婚や世間への発表については、かなり悩んだようだ。まあこれは「年の差」とは別の話。

本来は、一直線に疑似恋愛の対象になっていそうな、イケメン俳優とか女優がそういう「なれそめ語り」をしないといけないのではないかと思うが、世間は「美男美女なら、そりゃくっつくだろう」くらいしか思わないらしい。
奥森さんがもしも36歳の超絶イケメン俳優と結婚を発表していたら、まさか、まともななれそめも披露する前にバッシングされるようなことはなかっただろう。

このことから導き出されるのは「芸人のくせに」というサベツ感情が、一般人の間に無意識にあることがひとつ。
この件に関しては、今回は深入りしない。

もうひとつ、「年の差婚」という観点から観る、
「中年おやじが生意気にも若い子と結婚しやがって、中年おやじのくせに」というサベツ意識である。

今回は、芸人としてわりとシュッとした方の岩井だったから騒ぎが大きくならなかったものの、いわゆる「いじられキャラ」の芸人、あるいはプレイボーイキャラを前面に出した芸人だったら、もっとひどいことになっていたかもしれない。
「もしも相手が東ブクロだったら」と思うと、無責任にちょっと笑えてしまうのだが、それもまた別の話。

しかし結婚の場合、合法で、当人も、両家の人々も納得しているのなら、外野も文句の言いようがない。やれグルーミングだーなんだーとむずかしい言葉は知っていても、他人の結婚の詳細を知る前から「気持ち悪い!」と書いてしまえる人間は、ポテチを食べるような感覚でネットに悪口をまき散らしているにすぎない。
リアリティーショー出演者に直接罵声を浴びせたり、辻ちゃんのブログに「野菜の切り方がおかしい!」とコメントを付けるような人間とそう変わらないのである。

しかし中高年男性(岩井は私から観るとそこまでおじさんっぽくはないが)は、ずいぶんと「気持ち悪い」と言われることが多くなった。逆に、中高年女性が「気持ち悪い」と言われることは、ほぼない。
侮蔑語として「気持ち悪い」という言い回しがいつ頃から使われるようになったか知らないが、80年代頃にはそこまで広まっていなかった。
昔話になってしまうが、若い女性と言えば「ウソ、ホント? 信じられな~い」が「良く言う言葉」とされ、そこに「何でも『かわいい』と言う」が加わっていた。
80年代、「笑っていいとも!」のテレホンショッキングに「ルパン三世」の声優で有名な山田康夫が出演した際、客席の女性たちが「かわいい~!!」と口々に言ったため、
「大人の男をつかまえてかわいいとは何だ!!」
と内心激怒した、と、彼が何かのエッセイに書いていた。余談ですが(笑)。

その「かわいい」が、いつの間にか「気持ち悪い」にくるっと反転した、と私は思っている。
若い女性の言う「かわいい」がきわめて広範な言葉になり、ほとんど「肯定的」程度の意味しかなさなくなっているのに対し、「気持ち悪い」という表現は、かなり決定的な拒絶を表す。
男性に対して「気持ち悪いけど、いい人」とか「気持ち悪いけど、付き合ってもいい」というようなことはまず絶対にない(笑)。

「嫌い」という言葉が「好きか嫌いか、いちおう検討したうえで嫌い」であり、「アリかナシか」が、いちおう検討したうえで「アリかナシ」なのに対し、「気持ち悪い」は「完全拒絶」の言葉である。

もちろんニュアンス的には、虫や爬虫類を「気持ち悪い」というニュアンスとも違う。というか、テレビや動画などを観ると、若い女性は虫や爬虫類や両生類に対してはあまり「気持ち悪い」とは言わない。「私、虫がダメなんです」とか「ヘビは苦手です」みたいな言い方をする。
なんとなく「外見が気持ち悪かろうが自然界の動物なのだから、それに『気持ち悪い』と言ってしまったらイメージが悪くなる」と思っているのではないかと思う。

というわけで、若い女性が、美しい青空のもと、どこからの批判もなく、悪いイメージがつくことも気にせず、当人の罪悪感もなく、心の底から「気持ち悪い」と言い放っていいのは、

「中高年男性」

一択ということになる。

もちろんそれを「かわいそー」とかばってくれる人もいない。
情報商材の商人たちは、「自分が悪い、努力しろ、反省しろ」と言い、後はいい塩梅に、ダムが決壊した際に、人間堤防になって死んでくれないかなとか、兵隊として戦地に言って死んでくれないかなとか、臓器提供をした後に、臓器が活かされるかたちで死んでくれないかな、と思っているだけである。

なおタイトルに「発想はどこから来るのか」と、気を引くような言い回しを使ったが、単に気を引くだけ……と思ったがそうでもなかった。

「中高年男性」が恨まれ、さげすまれるのは、「家父長制」を絶対悪と規定した場合、独身だろうが何だろうが、それを補完する存在だからだろう。

おしまい

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なんでもかんでもすぐ、中年男性を「気持ち悪い」という女性は……(男性も……)。
遅く起きた朝は……。(未完)









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