感動感涙小説 ビェンデレラ


ビェンデレラは、それはそれは美しい少女だった。
だが父親がバカだったため、後妻としてえらく性格の悪い女と結婚。
名前はゲベ子。
ゲベ子には、ブタ美と死肉喰い、という名の二人の娘がいた。
ブタ美が姉で、死肉食いが妹。
ゲベ子、ブタ美、死肉食い、だれもが性格最悪だった。
ただ、ゲベ子はなんとも妖艶な美女で、ビェンデレラの父・「屁助(へーすけ)」もその色香に騙されてしまったらしい。

屁助は、由緒正しい貴族の生まれである。
今から300年前、宇宙から来た昆虫生物を撃退した武装集団「蟲狩り族」がいた。それが国の権力を握り、長い年月を経て貴族となったのだ。
だから、貴族に反感を持つ者は、彼らのことを「たかが虫狩り」と言ってはばからない。

屁助の前妻は「ぶぶ漬け淀魅(よどみ)」という名の女だった。
生のアスパラガスを、手づかみでムシャムシャ食べ、飛んでいる蠅を指先でつかむことができたという。
しかし、ぶぶ漬け淀魅(よどみ)は、近頃めずらしい、「宇宙昆虫生物」の生き残りに襲われて死んでしまった。

それに付け込んだのが、平民であったゲベ子、ブタ美、死肉食いである。
ゲベ子の誘惑に屁助はめろめろになり、町の教会で結婚した。

さて、屁助は貴族だが、町内会の役員など、何かと忙しく、家を不在にすることが多かった。
屁助がいない間、ゲベ子、ブタ美、死肉食いの三人はビェンデレラをいじめ抜いた。

それが三か月間くらい続いた。

ビェンデレラもいいかげん頭に来ていたのだが、たまたま自分の武器である「ベルセルク」に出て来る「ドラゴン殺し」みたいな巨剣をとぎに出していたため、面倒だったがいじめを放置していたのだ。

しかし、ブタ美と死肉喰いが家の中に落とし穴を掘っているのを観て(もちろん自分を落とすためだろう)、
「家を傷つけるなって言ったじゃろうがああああああああ!!」
とキレてしまい、手刀で一閃。

気が付くと、ごろりとブタ美、死肉喰い、二人の首が転がっていた。
「あわわ、やっちまった」
ビェンデレラも、父の屁助の気持ちを大事にしてあげたいと思う気持ちもあり、継母や義姉たちを見過ごしていたのだが、すでに二人殺してしまった。
「これはもう、ゲベ子を殺すしかないな」
ビェンデレラはため息をついた。
「もう人は殺したくない」と思う日もあったのだ。
だが、そんな日は終わりを告げたようだ。

「蟲狩り族」の血を引く「貴族」たちは、基本的に気性が荒い。
まぬけな名前の屁助も、ビェンデレラも、「蟲狩り族」の血を色濃く引いている。
血を観ないではいられない性格なのだ。

仕方ない。そう心に決めたビェンデレラは、廊下の向こうから歩いてくるゲベ美に、
「熱波光臨八つ裂きビーム」
を浴びせた。
彼女の両手から放たれたビームは、一瞬にしてゲベ子を消し炭にしてしまった。
ゲベ子は驚くヒマもなかった。

そのすぐ後に、屁助が帰って来た。
「なんだこれは!」
二つの首なし死体と、熱が強すぎて炭になってしまったゲベ子を観て、彼は驚いたが、
「……まあいいか。今日は特別に肉増しの豚焼肉弁当を買ってきたから、早く食べたい。さっさと死体を片付けよう」
と言って、無造作に手を交錯させると、ビェンデレラのビームより強いビームを、三つの死体に浴びせた。
すると死体は消えてしまった。

物体を異次元に飛ばす、屁助の必殺ビーム「裏霞(うらがすみ)」である。

ビェンデレラと屁助はひさしぶりに、二人で向かい合って肉増しの豚焼肉弁当を食べた。

しかし、ゲベ美とその娘たちの死を知って、おそろしい組織が動き出そうとしていた……。

(以下の「完結編」につづく)

https://note.com/nittagoro/n/n28aa7bca9daa



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