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もう理解されなくていい話2024

かなり前の話だが、とある芸人さんの漫談で、
「師匠やスタッフに付いて行く途中、次々とみんなが改札を通り過ぎていくのに、自分のパスモの料金が足りず、自分の番に改札が閉まってしまい、自分が通ることで手こずってしまってひどく怒られた」
と言っていた。

もちろん、芸人なので面白おかしくしゃべる。会場は笑っていたが、自分はそのときのことを想像して、おそろしくて笑えなかった。

想像してみるといい。パスモの料金不足で改札が通れなかった場合、駅の券売機まで行ってチャージしなければならない。これにはかなりの時間がかかる。師匠や年上のスタッフをその場で待たせるとなると冷や汗が出ただろう。
しかも、パスモは家にいる状態で、「いくら入っているか」を確かめることはできない(できたらすいません)。

パスモでぜったいに改札でひっかからないためには、常に多めにお金を入れておくことが必要だが、貧乏な芸人の場合、それも無理だろう。
とても他人事とは思えなかった。

思えば自分はそういう失敗の連続だった。しかし、それを人に話しても強く共感されることがない。あまり同情もされない。
このテの失敗が多すぎて自分はノイローゼになり、以後、世捨て人として暮らしています。

ついこの間は、スマホのストラップ(「スマホにストラップを付けるのか」と疑問に思う人がいるかもしれないが、私は付けている)が、タクシーに乗ったときに後部座席のすき間に挟まってしまい、出るときにそれがひっかかってヒヤリとした。そのまま後部のドアが閉まり、車が出発していたらと思うと恐くなった。
幸い事故には至らなかったが。

そもそも「スマホをなくさないように」とストラップを付けているのに、それでトラブルが起こったらもう自死しても仕方ない。

何かをやるときでも小さな失敗が起こらないか、最新の注意を払わないと行けないのでいつも疲れているし、常にイライラしている。

この手の失敗、みんな経験しているように思うのだが、私が思っているよりずっと頻度が少ないようだ。

相手のミスの話だが、会社で忘年会の幹事をやった際、二次会の予約が取れていなかったことがある。
このことがめちゃくちゃショックだった。今でも忘れられない。
当時はメール予約もなく、こういうのは「言った言わない」で私なのか店側七日、責任の所在がわからなくなる(まあどう考えても店側だが)。
その場ではウヤムヤになってしまった。
以来、(当たり前かもしれないが)電話予約の際には相手がたとえバイトでも、従業員の名前は必ず聞くことにしている。

他にも思い出すミスは、以下のものがある。
大勢のお客さんの前で順番に数分間、トークしなければならないことがあり、リハーサルで、私の前の番の人(仮にSさんとしておく)が、教卓みたいな台の上に彼がしゃべるためのメモ書きを置いてしゃべっていた(次の番の私は、そのことを知らない)。
私は自分がしゃべるためのメモを、書店の袋に入れて持ち歩いていた。
自分の番が来て、袋から自分のメモ書きを取り出し、それを観ながらの5分くらいのトークのリハーサルが終わると、私の前の番だったSさんが「自分のメモがない、メモがない」と騒いでいる。

すると、私の持っていた書店の袋の中に、彼のメモ書きが入っていた。
つまり、Sさんがメモ書きを教卓みたいな台に忘れて行って、それを、次の番だった私が自分のトーク終わりで自分のメモとまとめて書店の袋にしまっていた、というわけだ。

私も不注意だったかもしれないが、メモ書きを教卓みたいな台に忘れて行ったSさんが悪くねぇか?
しかし「ダメじゃないか!」と怒られた。
この件、いまだに恨んでいる。

トークライブではもうひとつ、忘れられないことがある。
壇上が掘りごたつみたいになっていて、そこに足を入れて座ってしゃべるのだが、私は呼び込まれて後から登壇することになっていた。
そうしたら、すでに登壇していた人が資料の入ったクリアファイルを、自分の後ろに置いていたのだ。
私はその人の背後を通って、所定の位置に座るはずだったので、そのクリアファイルを踏んで、滑って転びそうになった。かなり焦った(周囲は薄暗く、こちらも緊張していたのでクリアファイルが見えなかった)。

冗談ではなく言うが、M-1グランプリの決勝の際、登場するときに足元に気づかない状態でクリアファイルが置いて滑りそうになったら、どんな気持ちになると思いますか?
気持ちを立て直すのに数十秒はかかると思う。
謝罪されたが、怒りを抑えるのに必死だった。そもそも人が通る後ろにクリアファイルを置く意味がわからない。繰り返すが薄暗いところだったのだ。

しかしこのようなエピソードも、話して強く共感されたことがない。
みんな、細かいミスなどそう滅多に起こさないのだろう。

ネットのない頃は、マンガの単行本が何巻まで出ているのか、続くのか、完結しているのかよくわからず、続刊の予定がある作品を「全二巻」と表記してしまったり、そういうことが非常によくあった。ネットがあれば防げたミスだが、この手のものは今からガタガタ言ったってしょうがない。

ひとことだけ言いたい。

みんな死んじまえ!!!!!!








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