ディスコミュニケーション名人戦

会話が成り立たなかったエピソードを三つ思い出したので棚卸しします。
古い順にいってみよう。相変わらず脱線まみれです。

その一。
学生の頃、アルバイト先の偉い人たちが飲みに連れていってくれたときだ。
「人間や動物の赤ちゃんがかわいいのは、まだ力がなくて弱いから相手の本能に訴えかけて守ってもらうためなんだよ」
と語ってくれた人がいて、たしかにそんな話聞いたことあるなーと思った。
「すると、『弱い者ほどかわいい』ってことになっても良さそうですよね…。成長して大人になった人間がそれに当てはまらないのは残酷ですね、どうしてなんでしょうね」
と若い私は目をキラキラさせて(いや忘れたけど)返したが、
「赤ちゃんがかわいいのはね、まだ力がなくて弱いから相手の本能に訴えかけてるんだよ…」
っていう、ほぼ同じせりふが繰り返されたので驚いた。ドラクエのNPCかと思った。
そんなに飲んではいなかったはずだけど、どうしたことだろう。
その席では別の偉い人が煮えた鍋物にビールを注いでいたことにも衝撃を受けた。地域によっては普通なんでしょうかこれ。
あと、その鍋ビールの人が他の人たちから妙に崇拝されていて「この人はね、雲を消せるんだよ! 一緒に露天風呂へ行ったときに見たんだけどね…」等のソフトな超能力? 神通力? みたいな話が大部分だった。
それとは別の理由(事務所があまり治安のよろしくない街にあり、通勤時に大人のガチ追いかけっこを見るなどしてビビった)で、ここは早めに辞めてしまった。惜しいことをしたかもしれない。雲が消えるのを見たかった。嘘です別にいいです。

その二。
少し前のこと、当時の勤め先のお客さんだった。
「あんた、変わった名前だな。何て読むの? 見たことないよ」
と名札を指差して半笑いで仰る。
たしかに読みづらい名前で、珍しい方ではある。でも他に全然いないという程でもないのよ。少なくとも指差して笑われる感じではないと思う…。
ので、
「同じ名前の人、時々いますよ。有名なところだと服飾研究家の方、少し前まではNHKの番組とかけっこう出てましたね」
と話したところ、だ。
「他で見たことない名前だな」
だから!
話しましたよ! …今!
って部分的にローリンガールみたいになっちゃうよね。お前の息を止めてやろうか、今。
まあ勤め先の名札がフルネーム表記なのが事故の元だと思ったので、その後自分で苗字のみのやつ作って差し替えた。
ここ読んでるのはほとんどリアル知人ばかりだと思う(平素よりお世話になっております)から油断してもうちょっと名前のこと書くと、マジシャンの人もいるんですよ、同名で。確認のためにさっきエゴサしてきた…! マジシャン。一回見たい。お金持ちになったらパーティーに呼ぼう。
服飾研究家の方は85歳だそうです。いっぱい長生きなさって今後も私を助けてください! 何とぞ!

その三。
これはいつだったかな、手伝っていたイベントの会場で、他県から来た人と立ち話した。
あなたは秋田のどこ? と聞かれ、横手ですと答えると
「横手やきそばっていうの、見かけたんだけど、何なのあれ」
というご質問だった。よし、ここまではふつうの会話だ。
さらっと特徴を説明して、付け加える感じで
「地元民には珍しいものじゃないんですよ、町なかにお好み焼き屋さんやもんじゃ焼き屋さんが複数あるようなものd」
言いかけた途端の、
「もんじゃ焼きー!? あなた食べたことある? もんじゃ焼き!」
フルスロットルでの車線変更ー!
「もんじゃ焼きなんてね、あんなのおいしいと思わないね! だって見た目があれだし、それでコテとかいうの? あれで削って食べるとか」
わたしはこのあと、急に持ち場が忙しくなった。
出先で地元の名物をPRしきれなかったこと、不甲斐なく! 思っております!
もんじゃ焼きは地雷になり得るメニューだったのか、知らなかった。ずっと前に食べた覚えあるけど、まあたしかに謎の風習だと思ったな。いやでもあんなに力を込めてディスれないわ…。逆に改めて食べてよく考えたい。もんじゃ焼き。


と、本日は、神の見えざる手かはたまた天使のいたずら、不思議に会話のキャッチボールが成立しなかったお話を並べてみました。
似たような経験を多くされている方はもうわかっちゃうと思うのですが、三つともすべて、相手は「ひと世代かそれ以上年上の男性、すなわちジ…おじさん」です。

わたし自身がコミュニケーション能力に問題を抱えているので、老若男女あらゆるタイプの人と接することにまあよく失敗はします。
今日は無印良品でサンダルキュッキュ鳴らして歩いてたお子さんに会釈したら彼のほうで気をつかって全力お辞儀を返して身体が二つ折りになったはずみに唾液が鼻から額まで垂れ下がってました。本当に申し訳ない。
あと動物相手もだいたい失敗する。猫には「ハア?」みたいな顔で見られる。

だから一概におじさんが悪いなどと言いたいわけじゃないんだ、ないんだけど、
・じゃあこういう見方はどうでしょうか
・必ずしも仰るとおりではなくて、こういう例もあります
・まだお伝えしていなかった情報でこういうのがあります
といった話をするとおかしなことになるのはおじさん相手のときなんですよ! わかって!

で、その帰り道とか、あるいは何年も経ったのち、
・すごい、知りませんでした
・仰るとおりです
・もんじゃ焼きは奇妙な食べ物です
などなど、相手の気持ちを逆なでしない、納得してもらうことを重視した優しい返事をしておけば良かったじゃないか! 優しさが足りなかった! と反省してはうじうじ考えるわけです。

最近になってですね、一体なぜこうなるんだ…。ということを人と話したり、今日のように多少面白がって文章にまとめたり、なんかこう客観視できるようになってきましたよ。
歳をとって良かったですね、この点では。

いや、待って、ここまで書いた分を読み返すと、多少じゃなく完全に面白がってますねこれ、おじさんとの会話のドッジボールぶりを。

わざとじゃないんです。
最低限、自分からぶつけにいくことだけはしないでおきたいものです。

#ディスコミュニケーション #会話のドッジボール #思い出

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