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週刊レキデンス ~第20回~ スタチンの2次予防はいかに?

前回までスタチンの1次予防に対する効果を見てきました。  
次は 2 次予防を見ていきましょう。果たしてスタチンは 2 次予防に対して効果があるのでしょうか?

その前に、2次予防とはなんだろうか。心筋梗塞2次予防の定義を例に挙げてみます。
心筋梗塞2次予防とは一般的に心筋梗塞後の症例を心血管系事故から予防することをいう。心事故とは心臓死(致死的心筋梗塞、心臓突然死、心不全死)及び非致死的心筋梗塞を指します。心血管事故とは薬剤抵抗性狭心症、心不全による入院、脳卒中などを指す。また全死亡(心臓突然死、非心臓死)や冠血行再建術をエンドポイントとして調査を行うこともあります。(1)

2次予防のエビデンス

1994 年心筋梗塞や狭心症の罹患歴のある 4444 人に対してシンバスタチン 20 ㎎/日とプラセボを比較して死亡率を見た 4S(Scandinavian Simvastatin Survival Study)試験では、総死亡率が 30 %(RR:0.70 (95% CI 0.58-0.85, p=0.0003))減る可能性を示しました。細かい結果を見てみると死亡率の内、冠状動脈死が -42%、非心血管死亡が -34% でした。(2)

WOSCOPS 試験で致死的な心筋梗塞と冠動脈心疾患死亡率の複合アウトカムを約 31% 減少させた効果とわりと近い結果ですね。 疾患リスクを持っていても同じくらい将来的なリスクを減らすことが出来る可能性があるのはなんだか面白くないでしょか? 

LIPID 試験

その他にも、LIPID 試験でも冠動脈疾患を持つ高コレステロールの患者さんに対してプラバスタチンとプラセボを比較した試験で、冠動脈死亡率が-24%(RR:0.76 0.65-0.89))を示しました。この試験は平均年齢62歳、男性が83% 過去の疾患では心筋梗塞が約 64 %と欧州寄りの患者背景ですが、脳卒中が多い日本にとって、9000 人を越える Study でスタチンが脳卒中を 19 %(RR:0.81 95%CI:0.66-1.00,P=0.048)減らす可能性が示されのは、前向きに捉えても良いかもしれません。(3)

その他の2次予防試験

この様に幾つかの臨床試験で、スタチンの2次予防効果について報告が発表されています。
各試験の死亡率は以下の通りでした。PROVE IT HR:0.70(4) IMPROVE-IT で HR:0.99(5)REAL-CAD HR:0.81(6)と PROVE IT 以降の試験結果のメインは複合アウトカムですが、死亡率を減らす傾向がある事が読み取れます。

スタチン2次

どのくらい下げるか?

スタチンで LDL-C を下げる治療をするは、将来的な心筋梗塞や冠動脈疾患イベントリスクが下がる事は分かってきました。
次に考える事と言えば、「どこまで下げよう?」問題です。 例えば、高血圧に対して血圧は下げた方が死亡率などのリスクを下げることが出来ますが下げすぎると、これもまた死亡率を高めてしまう要因になることが示されています。(7)

糖尿病における血糖値(HbA1c)も同様です。(8) この様な現象からU字またはV字、J字などと呼ばれる事があります。 果たしてコレステロールはどうなのでしょうか?

2014年に発表されたある研究では、LDL-C を175以上で治療された場合と比べて LDL-C は低いほど心血管リスクや冠動脈リスクが低下することが示されました。 この様な現象からスタチンによる LDL-C 治療は 「the lower, the better 」(低いほど良い)と称されることがあります。 この現象は動脈硬化性疾患予防ガイドラインにも影響を与えています。
ガイドラインを参考にすると、1次予防は低リスクLDL-C<160mg/dl、中リスク<140、高リスク<120 2 次予防は<100 (糖尿病がある場合は<70)とリスクに応じて低めに設定されています。(9)(10)

スタチン低いほどよい

参考

1.心筋梗塞二次予防に関するガイドライン 2011年改訂版
2.Lancet. 1994 Nov 19;344(8934):1383-9. PMID: 7968073.
3.N Engl J Med. 1998 Nov 5;339(19):1349-57.PMID: 9841303
4.N Engl J Med. 2006 Feb 16;354(7):778. PMID: 15007110
5.N Engl J Med. 2015 Jun 18;372(25):2387-97.PMID: 26039521.
6.Circulation. 2018 May 8;137(19):1997-2009. PMID: 29735587
7.Stewart IM.Lancet.1979 Apr 21;11(8121):861-5.PMID:86103
8.Lancet. 2010 Feb 6;375(9713):481-9.PMID:20110121
9.J Am Coll Cardiol. 2014 Aug 5;64(5):485-94. PMID:25082583
10.動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版


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