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「勝手に DI 室」 最近のアトピー性皮膚炎治療 - モノクローナル抗体

アトピー性皮膚炎(以下、AD)の治療は 2018 年モノクローナル抗体 デュピルマブの登場以降、3 種のモノクローナル抗体と 3 種のヤヌスキナーゼ阻害薬、1 種の PDE-4 阻害薬が登場しています。


AD 治療薬の歴史的経緯

本邦における AD の治療は、1952 年に発表された研究結果(PMID: 14955641)、1953 年にヒドロコルチゾン酢酸エステル外用が承認されたのをきっかけに始まりました。
その後、カルシニューリンに作用するタクロリムス軟膏、シクロスポリンカプセルの開発、承認が行われました。 そして 2018 年以降にモノクローナル抗体、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase)阻害薬、PDE(ホスホジエステラーゼ)-4阻害薬が登場しました。 


現在 AD に国内外で使用されている薬は以下の通りです。 
国内外で使用、試験されているのは全部で 16 種類 その内、日本で承認が得られているのは 8 種類でした。(1)

参考:Curr Allergy Asthma Rep. 2022 Dec;22(12):183-193. PMID: 36348149

モノクローナル抗体

何故モノクローナル抗体が、AD の治療に用いられるのでしょうか?
AD の病因論として、外傷や搔破による表皮損傷、抗原・刺激物質への暴露により、Th2 型免疫反応が維持されるサイトカインネットワークが維持されます。搔破行動は搔破などの外的刺激と傷害 IL-25、IL-31 などのサイトカインを産生して、Th2 型の反応を維持させてしまいます。 それらのサイトカインを押さえるために、モノクローナル抗体であるデュピルマブなどが使用されます。(2)

現在 AD に使用可能なモノクローナル抗体は、デュピクセント®(デュピュルマブ:2018年登場)、ミチーガ®(ネモリズマブ:2022年登場)、アドトラーザ®(トラロキヌマブ:2023年登場)の3剤があり、いずれも注射薬です。

各添付文書、RMPより作成

デュピルマブとトラロキヌマブ は IL-4 と IL-13 の働きを抑え、ネモリズマブは IL-31の働きを抑えることで、アレルギー症状を和らげる効果が得られます。

特に前者は、インターロイキンのサイトカイン反応を抑えるため、AD だけではなく気管支喘息などのアレルギー症状にも有効と考えられており、デュピルマブ は実際に、気管支喘息と慢性副鼻腔炎に適応が承認されています。[トラロキヌマブも、気管支喘息に対する治療の臨床試験が進んでいます。(3) ]

ネモリズマブの特徴

ネモリズマブは、痒みの神経伝達を抑制する作用機序があり、評価項目として、皮疹状態改善よりも掻痒感を和らげる効果の方がより顕著に見られています。 (4)(5) 

各臨床試験より作成

参考:

1.Curr Allergy Asthma Rep. 2022 Dec;22(12):183-193. PMID: 36348149
2.アレルギー 68(7)815-822.2019(令1)
3.Eur Respir J. 2013 Feb;41(2):330-8. PMID: 22743678
4.J Eur Acad Dermatol Venereol. 2021 Sep;35(9):1797-1810. PMID: 33991374
5.Front Immunol. 2022 Apr 26;13:825312. PMID: 35558086
※1:Lancet. 2017 Jun 10;389(10086):2287-2303. PMID: 28478972
※2:N Engl J Med. 2016 Dec 15;375(24):2335-2348.PMID: 27690741
※3:N Engl J Med. 2020 Jul 9;383(2):141-150.PMID: 32640132
※4:Front Immunol. 2022 Apr 26;13:825312. PMID: 35558086
※5:Dermatol Ther (Heidelb). 2023 Apr;13(4):997-1011.PMID: 36905481
※6:Br J Dermatol. 2021 Mar;184(3):437-449. PMID: 33000465
※7:Br J Dermatol. 2021 Mar;184(3):450-463. PMID: 33000503
※8:日臨皮会誌:40(1),059-073,2023(令和5) ECZTRA8試験

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