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今年から不妊治療に選択肢が増えました

2022 年 8 月 25 日に令和 4 年第 4 回薬事・食品衛生審議会第一部会が行われました. (1)
新規 GLP-1 作動薬マンジャロ皮下注の新規承認やデュファストン、メトホルミン、フェマーラ、などの生殖補助医療(つまり不妊治療関連)に関する適応追加が承認されることが了承.

生殖補助医療について

今回の見どころの 1 つは、生殖補助医療分野の多くが保険適用となった点ではないでしょうか.
生殖補助医療には ①体外受精 ②顕微授精 の 2 つが該当します.(2)

薬局 2022 Vol.73,No10 2472

2022 年 4 月からの保険適用スタートするまでの助成関連の道のりをまとめてみました.
助成の始まりは、2004 年. 当時はまだ給付額が低かったり、事実婚は対象外、所得による制限がありました.
それから 16 年紆余屈折を経て、体外受精、顕微授精、精巣内精子採取術、タイミング法、人工授精など多くの方法が自治体による助成から保険適用となり、事実婚が対象内、所得制限の撤廃などが行われるように.(3)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html

さて、今回承認された医薬品は、生殖補助としてどう関わるのでしょうか?
適応を確認してみると、「調節卵巣刺激法」とあります.

調節卵巣刺激法(controlled ovarian stimulation :COS)とは?

卵巣から多くの卵胞を発育させる為に排卵誘発を行い、発育卵胞が排卵しないように内因性の早発 LH サージを抑制して「採卵」のタイミングで回収する卵子数を増やす方法のことをいいます.
そもそも COS という方法は、1978 年イギリスにおける自然週における採卵が開始されたことがきっかけで、より採卵数を増やしていくために様々なホルモン製剤を介入していく事から始まっているのです.(4)(5)

刺激をする方法には、上記の図のように複数の方法があります.
それぞれ薬を使用するタイミングが異なり、使う薬も異なります。近年は、PPOS 法(Progestin primed Ovarian Stimulation)が主流とも言われているようです.
PPOS 法 で調節卵巣刺激を行うメリットは、早期 LH サージの発生率が有意に低く(RR=0.03:0.01-0.13 P<0.001)卵巣過剰刺激症候群(卵巣腫大や腹水、胸水などを引き起こす)の発生率が有意に低かった(RR=0.52:0.36-0.76 P<0.001)という報告があります.(6)

ちなみに、この卵巣過剰刺激症候群 を予防するために、カバサールが承認されました。

参考:11-14

多嚢胞性卵巣症候群とは?

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS: polycystic ovary syndrome)は、5-10 %の女性に生じています.
卵胞の成⻑が途中で止まり、沢山の⼩さな卵胞(嚢胞=のうほう)が卵巣内に留まってしまう病気です. 卵胞が育たず定期的に排卵が起きないため、⽉経周期に異常(無月経、希発月経)が表れて、不妊の原因にもなります. 
また、典型的な症状としては軽度の肥満、軽度の男性型多毛症、不規則な月経などがあります.(7)
この症状に対して、メトホルミンが承認されました.

参考

1:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27291.html   
2:薬局 2022 Vol.73,No10 2472
3:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html
4:日産婦誌62巻9号 N-141 クリニカルカンファレンス3 生殖医療のup-to-date 調節卵巣刺激法 
5:Lancet. 1978 Aug 12;2(8085):366.PMID: 79723.
6:Front Endocrinol (Lausanne). 2021 Aug 31;12:702558.PMID: 34531825
7:MSDマニュアル プロフェッショナル版
8:薬局 2022 Vol.73,No10 2472
9:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html
10:日産婦誌62巻9号 N-141 クリニカルカンファレンス3 生殖医療のup-to-date 調節卵巣刺激法
11:Front Med (Lausanne). 2021 Jul 27;8:581927.PMID: 34386503
12:Trials. 2018 Aug 22;19(1):455.PMID: 30134964
13:Hum Reprod. 2018 Feb 1;33(2):229-237. PMID: 29300975
14:Drug Des Devel Ther. 2019 Dec 31;13:4461-4470. PMID: 32099323


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