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「勝手にDI室」プラスグレル錠の適応が追加になった

先日、エフィエント®(プラスグレル)錠の適応「虚血性脳血管障害後の再発抑制」が 2021.12.24 追加承認になりました。

詳細を確認したところ…

適応名:
虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化 又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)
※通常、成人には、プラスグレルとして3.75mgを1日1回経口投与する。
とのことでした。

これは、PRASTRO 試験という試験がきっかけで承認が通ったようです。PRASTRO 試験とは、非心原性脳塞栓症に対してプラスグレルが脳卒中や心筋梗塞、CVD死亡などのリスクを減らすことが出来るのか?といったリサーチクエスチョンに基づいています。

PRASTRO-Ⅰ試験 75歳未満または、50㎏以上の人を対象に、クロピドグレルを対照で統計学的有意差は示されませんでした。 本文を読むことが出来ませんでしたが、症例数が足りなかったため有意差が出なかった可能性があります。

PRASTRO-Ⅱ試験は、75歳以上または、50㎏未満に変更して解析しています。こちらも統計学的有意差は示されませんでしたが、クロピドグレルと比較して脳卒中などのリスクを高めなかったと(ポジティブに見るなら)見ても良いかもしれません。 この解析だけで非心原性脳塞栓症の適応を目指すなら、2.5㎎ が傾向的に向いている可能性があるのではないでしょうか?

PRASTRO-Ⅲ試験は、まだ解析結果が開示されていません。こちらのデータベースを見ますと対象患者さんは、非心原性脳塞栓症で1つ以上の脳梗塞リスクを有する血栓性脳梗塞としているようです。

調剤する時に注意するべき点は4つ。
1.出血傾向及びその素因のある患者(頭蓋内出血の既往のある患者)→出血を生じるおそれ
2 高血圧が持続する患者→出血のリスクが高まる
3 他のチエノピリジン系薬剤(クロピドグレル等)に対し過敏症の既往歴のある患者→投与後に血管浮腫を含む過敏症を発現するおそれ
4 低体重の患者(体重50kg以下)→出血リスクが高いため

以下、試験概要
PRASTRO-I 試験
Lancet Neurol. 2019 Mar;18(3):238-247.PMID:30784555.
P(患者):非心原性脳塞栓症で75歳未満または、体重50㎏以上
E(治療):プラスグレル(3.75㎎/日)
C(対照):クロピドグレル (75㎎/日)
O(成果):(脳卒中、心筋梗塞、CVD死)複合アウトカム
【結果】
RR(相対リスク):1.05(95%信頼区間 0.76-1.44)
非劣性マージン(この数値を越えない場合クロピドグレルと同等とする値):1.35
PRASTRO-Ⅱ試験
Cerebrovasc Dis. 2020;49(2):152-159. PMID:32208397
P(患者):非心原性脳塞栓症 75歳以上または、体重50㎏未満
E(治療):プラスグレル 3.75㎎(216人) 2.5㎎(215人)
C(対照):クロピドグレル 75㎎(223人)
O(成果):(脳梗塞、心筋梗塞、CVD死)複合アウトカム
【結果】
プラスグレル 3.75㎎ vs クロピドグレル 75㎎→ HR(ハザード比):1.13(95%信頼区間 0.44-2.93)
プラスグレル 2.5㎎ vs クロピドグレル 75㎎→ HR(ハザード比):0.51(95%信頼区間 0.15-1.69)


PRASTRO-Ⅲ 試験
P(患者):非心原性脳塞栓症で1つ以上の脳梗塞リスクを有する血栓性脳梗塞
E(治療):プラスグレル
C(対照):クロピドグレル
O(成果):(脳卒中、心筋梗塞、CVD死)複合アウトカム
【結果】
HR(ハザード比):0.949 (95%信頼区間 (0.369-2.443)

サブ解析
J Atheroscler Thromb. 2021 Feb 1;28(2):169-180.PMID:32493881
P(患者):PRASTROⅠの患者 3753人
E(治療):プラスグレル
C(対照):クロピドグレル
O(成果):脳卒中のサブタイプ別リスク
【結果】
大動脈アテローム性動脈硬化:HR:0.79(0.45-1.41)
小動脈閉塞:HR(ハザード比):0.82(95%信頼区間 0.45-1.50)
病因不明脳卒中:HR(ハザード比):1.56(95%信頼区間 0.90-2.27)

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