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死亡率の検索 death と mortality どっち?

医学論文で真のアウトカムである死亡率がどこに書いてあるかな?と検索するときに、death で検索して中々ヒットしないなぁ、という経験ありませんか?

死亡という英単語には、death ともう一つ mortality が使われている事を知りました。この違いについて以前勉強会で質問されていた方がいらっしゃいました。私もよく理解できていなかったので調べてみることにします。

どうやら現代英語の成り立ちは、 11 世紀のノルマン人によるイングランド侵攻が大きく関わっていると考えられており、主に語源が三層化されていると言われているようです。

①学者層 → ラテン語系(ラテン語はギリシャ語から派生)
②支配層 → フランス語系
③庶民層 → ゲルマン祖語(インド-ヨーロッパ語系 )

death  

death は dead 、更に dhew daudaz というゲルマン祖語から来ています。
ゲルマン祖語は、インド・ヨーロッパ語から分化した言語であり、 old English とも呼ばれます。

old English とは何でしょうか?

イギリスにおいて、4 世紀頃まではケルト民族(ケルト人)がケルト語を使用していました。4 世紀後半から 5 世紀にかけては、ドイツ北部のゲルマン人がイギリスに流入してくると、元々イギリスにいたケルト人は、北部に追いやられたのです。その結果イギリス領土で使用された言語は今の英語の元になったと言われています。これが古英語 = old English になります。
また、当時のゲルマン人は、現代のドイツ語ではなく西ゲルマン系の言語を使用 (west germarmanic languege) でラテン語に近かったという説もあるようです。

600 年後の 11 世紀にはノルマン人(フランス語使用)がイギリスを征服すると、イギリス領土での言語は、ラテン語+フランス語+old English が入り混じった言葉になります。これが現代の英語に近いと言われています。
更に、14-16 世紀にかけて起こったルネサンス期に科学や哲学の中にラテン語が大量に英語の中に入っていきました。

英語史

特に征服した側=支配層はフランス語系統の英語を、一般庶民は古英語を使用するような住み分けに近い事が生じました。この影響は今でもみられます。
例えば「羊」 。動物や家畜の羊は sheep 、料理された羊は mutton 前者は古英語 後者はフランス語由来
家畜は支配される側=一般庶民であり、後者は支配する側=征服した側の言語と分かりやすい構図になっている事に気が付きます。

mortality 

mortality の語源は、ラテン語の mort から来ています。そして、ギリシャ語の mors が由来になっており、ギリシャ神話の死神 mors がいることから、「死」を連想させる事は容易かと思います。
ルネサンス期に多くのラテン語が英語に(特に学術や芸術分野に)流入しました。この様な経緯もあり mortality は学者らが主にラテン語系統を用いて表現をしていた影響を考えてみると、医学文献における「死亡」の表現には、mortality の使用が自然なのかもしれません。

まとめ

death 古英語由来なので、話し言葉として利用する 「死」
学術的に使用(特に医学論文として記載)する「死」は mortality 。
文献で真のアウトカムを検索するときに、死亡率を検索するならば、 death で検索するよりも mortality で検索した方がヒット率が高いかもしれませんね。

参考:

英語の医学用語の語形成に及ぼすラテン語の影響について
長崎国際大学論叢 第14巻 2014年 3月 13-20



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