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エラトステネース『カタステリズモイ』翻訳㉞兎(うさぎ座)

 この兎は、キュネーギアーと呼ばれる狩りにおいて捕えられるものである。この生き物の足の速さのため、ヘルメースはこれを星々のうちに置いたとされる。四つ足の動物のうちで兎のみが、あるものは産み、またあるものは腹の中に留めて、多くの子を産むとされている。哲学者アリストテレースが動物についての論文において言っているごとくである。
 
 この星座が持つ星は以下。両肩に1個ずつ、胴体に3個。そのうち背中のものは明るい。両の後ろ足に1個ずつ。星は全部で7個。

・キュネーギアー:直訳で「犬を率いること」ぐらいの意味なので、猟犬を伴った狩りの形式のことと思われます。
 
・アリストテレースが動物についての論文において:哲学者アルストテレースは万学の祖と呼ばれているように、動物の生態についての著作も残しています。ここで言及されているのは具体的には『動物誌』および『動物発生論』にある記述です。たしかにアリストテレースは兎は一度に全部の子供を出産せず、しかも妊娠していてもさらに妊娠できる云々…と書いているのですが、実際のところどうなんでしょう?ちょっとググってみたところ、兎は出産直後もすぐ交尾可能という話が出てきたので、連続した妊娠・出産をそのように誤認したのかもしれませんが…。兎の生態に詳しい方はぜひ教えてください。


 うさぎ座については、一般に流布する話がどうこう以前に、特に神話らしい神話がないのでどの本も苦慮しているようですね。一応、オーリーオーンの獲物という解釈を与えているのが主流のようではありますが。
 
 にしてもこの星座、さんかく座と同じく「別に書くことねえ!!」という叫びが聞こえてきそうです。やはりエラトステネースもその例外ではなかったようで、やけに短い記述です。
 
 しかもアリストテレースの論文の話なんぞを持ち出してきちゃったりしてますし。これ神話か…?一応ヘルメースの名前でかろうじて神話要素を申し訳程度に付け加えているようですが…。