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少年院に入って分かる"時間とお金と命の価値"

2012年1月1日の朝、私は医療少年院の独居房にいました。

コンクリート剥き出しの灰色の天井を見ながら、なにしてるんだろうと思ったのを覚えています。

さて、少年院に入ることは刑務所同様、処罰を受けるためですが(少年院は更生を目的としてるから少し違うけど、それはまた今度)少年院という場所に入ることで受ける"罰"とは、なんだと思いますか?

拷問を受けるわけでもないし、栄養失調のカリカリになるまで働かされるわけでもない。

多少なり娯楽もあれば、お腹を抱えて笑うことはなくても穏やかな気持ちになる時間もある。

そんな場所で受ける本当の"罰"とは、いったいなんでしょうか。

人から合法的に奪えるものが、時間

人から合法的に奪えるもの、と聞いてなにをイメージしますか?

お金を合法的に奪う、というのは少し違いますよね。譲り受ける、与えられる、もらうという表現が当てはまるので、お金を奪う=非合法となるのではないでしょうか。

命も同様、奪えるものではありません。殺人は命を奪っていますが、それは非合法ですよね。

また、安楽死や依願殺人などは、本人の意思によるものが大きく奪うという表現は違います。

では、罰として人から奪えるものはなんでしょう。

答えは、時間です。

少年院にいる間、ない頭で必死に考えました。

少年院にいることで、なにを失うのだろう。

罰として私は、なにを引き換えにしたのだろう。

時間です。

人生80年と考えれば、少年院で過ごした1年はあってないような時間かもしれません。

しかし、1日24時間は誰にも変えられず、戻ることも先急ぐこともできません。

ただただ時間を消費しては無駄になると、少年院でたくさんのプログラムを受けました。

が、それがなにになるでしょうか。

私が償いとして差し出した時間は、どんなことをしても絶対に取り戻せません。

それと同様に、被害者の記憶も取り戻せはしないのです。

タイムイズマネー、時は金なりとよく言いますが、お金と時間は同等の価値です。

金で解決できないなら、時間で返せよ

と、そうなるわけですね。

時間でも返せないなら?

それが、死刑が存在する意味ではないでしょうか。

仕事の時間と対価について

多くの社会人は、仕事に主な時間を費やしています。

時間を消費する代わりに金銭を受け取るわけですが、それに値しない業務内容も給料も大いにありますよね。

長時間労働に安月給、いじめやハラスメント。

自分の仕事と給料に満足して働いている人は、ほとんどいないかもしれません。

私は今、見込み残業込みで1日12時間勤務をしています。休みは月6〜10日、仕事の量や月によってまちまちです。

給料は手取りで50前後、インセンティブがあるので、40〜60を行ったり来たりしています。

満足しているかと聞かれたら、もう少し欲しいのが本音です。

しかし、それでも働き続ける理由は以下にあります。

・1日12時間以上拘束されることは絶対にない
・土日祝日関係なく、連休が欲しいときは他の社員と相談すればいつでも取れる

・勤務時間、休み、給料、これらは社長に直訴することで改善される

事実、社長と何度も話し合いを重ねて、納得できる給料をもらっています。(私の最初の手取りは、今とほとんど変わらない勤務時間で30でした。)

休みが少なく自分の時間が取れないときは、素直にその旨を話して、時間を確保できるように協力してもらいます。

この世に腐るほど会社はあって、生憎どの業界も人手不足です。代わりはいくらでもいるかもしれませんが、それは社員側からしても同じですよね。

会社はいくらでもあるのだから、そこにこだわる必要はない。

昨年初めて救急車に乗り病院に運ばれたのですが、そのときにスティーブ・ジョブズの言葉を思い出しました。

「明日死ぬとして今日が最後の日なら、それでもそうする?」

明日死ぬとして、今日が最後の日なら…

出社しますか?

働きたいと思いますか?

その給料と時間が見合っていると、胸を張って最後の日を過ごせますか?

毎日問い続けてNOが続くなら、次の出社日に退職届を出しましょう。

お金がなくても、家がなくても、生きてはいけます。極端な話ですが、食べ物を買うお金がなくなっても心臓が止まるわけではないのです。

会社は給料という金銭を支払っているかもしれませんが、人生や日々の保証はしてくれませんよね。

どんなに社員が働かせてくれと頼んだって、会社を畳まれたら成す術はありません。

人生の多くの時間を過ごす場所だからこそ、自分の持つ時間と、代わりにもらう給料を今一度見直してみてほしいのです。

お金で買えないのが、時間と命

世の中にあるだいたいのものは、お金で買えます。

愛やセックスや友情すらも、お金で買うことができます。

そんなみんなが欲しがる万能なお金で、買えないものはなんでしょうか。

それが、時間と命です。

どんなにお金を持っていたって、1日を30時間にすることはできません。

今のところ昔に戻ることもできませんし、先を知ることもできませんよね。

また、命をお金で買うこともできません。

有り余るほどのお金があっても死は確実にやってきて、お金を出すから生きたい!生みたい!と願っても、科学や医療の力ではできないことの方が圧倒的に多いのです。

私たちは会社という場所で、お金で買えない時間と命(体力)を消費しています。

その対価が、給料です。

お金で買えないものを埋められるくらい、あなたは満足した関係を会社と築けていますか?

取り返せないものと取り返せるものを見極めよう

私はバカなので、"こうしたらどうなるか"という想像力が足りずに逮捕されました。

生きているといろいろなことが起こりますが、だいたいのものは失っても取り返すことができます。

仕事もお金も、取り返せるものです。

しかし、命と時間は取り返せません。

どんな大金を積んでも、どれだけ働いても、命と時間を対価としてもらうことはできないのです。

取り返せるもののために、取り返せないものを差し出す必要があると思いますか?

お金のために命を差し出したり、仕事のために必要以上の時間を消費することは、取り返しのつかないことをしているのです。

誰彼構わず、お金をあげる人はいませんよね。貸すにしてもあげるにしても、必要な理由は聞くはずです。

簡単にお金をあげる人はいないのに、簡単に時間をあげる人がたくさんいます。

上司の機嫌を伺うために、お金にならない残業を何時間していますか?

お金にならない残業でも、体力(命)は消耗しています。そして、無意味な時間=お金を捨てているのと同じです。

あなたは、世間体や付き合いという名で、どのくらいの時間(お金)を捨てていますか?

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