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北大ラグビー部OB・OGインタビュー第4回

大平雄利・No.8・膳所高校 農学部(2020年度卒・副将)→農学院 

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昨シーズンの副将であり、北大ラグビー部を代表する選手として4年間活躍された、大平雄利さん(農学院)のインタビューです。大学でのラグビーとアカデミックな側面から得た多様な経験や、北大での研究の魅力について話していただきました。ぜひご覧ください。


Q.はじめに、北大ラグビー部に入部したきっかけを教えてください。

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高校を卒業した時点でそもそもラグビーを続けるつもりはありませんでした。総合理系入試で入学し、難易度の高い獣医学部への移行を目指していたため、大学では勉強に専念しようと思っていたからです。ただ、高校時代にラグビーをやり切ったと感じていたとはいえ、浪人を経験する中で沸々とラグビーに対する情熱が甦りつつありました。「とりあえず行っておこう」といったくらいのスタンスで参加したラグビー部の新歓にもいつしかのめり込んでしまい、気がつけばラグビー部から離れられなくなっていました。久しぶりに触るボールの感触にラグビーの楽しさを思い出し、大学ならではの自由な雰囲気でのラグビーに惹かれていったのが実際のところです。(笑)また、ラグビーに入った方が先輩とのつながりもあって勉強にも有利に働くかなと思い、流れに任せる形で入部した思い出があります。


Q.北大を目指したきっかけを教えてください!

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幼少期に父親に連れられてバイクで北大の近くをツーリングしました。その時に、都会でありながら自然豊かな広大なキャンパスと札幌の雰囲気に惹かれて絶対にここに住みたい、と決心しました。私は滋賀県出身なのですが、北海道に最短で移住できるのは大学進学しかないと思い、比較的早い段階から北大に行きたいと思うようになりました。北海道に住みたいという気持ちだけで北大にしましたね。(笑)

Q.北大ラグビー部に入って良かったことはありますか?

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一つは、北大という新しい環境で自分にとって一番居心地が良い場所を見つけられたことです。そこで大切な同期や仲間と出会えたことは私にとっても大きな財産です。部活でもプライベートでも一番長く、濃い時間を過ごしたのはラグビー部ですし、自分の4年間の学生生活を振り返っても真っ先に思い浮かぶのはラグビー部の存在ですね。もう一つは、人生の中で一番嬉しかった瞬間、そして一番悔しかった瞬間に何度も遭遇できたことです。私自身、これまで「花園出場」などといったラグビー面で立てた目標を達成したことがありませんでした。それを北大ラグビー部に入って、「大学選手権出場」という形で初めて目標を達成した瞬間は一生忘れられませんし、「人生最高の達成感」を感じることができました。その反面、自分たちの代で選手権出場を逃すなど、とてつもなく悔しい経験や思い通りに行かなかったことも同じくらい味わいました。そういった喜怒哀楽が滲み出るエモーショナルな出来事を4年間を通してたくさん経験できたという点で、北大ラグビー部に入って心から良かったなと思っています。

Q.大平さんは2年時に大学選手権に出場されました。大学選手権は大平さんにとってどのような舞台でしたか。

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一つは、最高の環境でプレーさせてもらえた場所だということです。会場は福岡県にある、ミクニスタジアムというところだったのですが、自分が今までプレーしたスタジアムの中で、段違いに素晴らしい環境でした。それぞれのチームにアップ用の芝のグラウンドや広いロッカールームが用意されていて、これまでプレーしてきた環境では考えられないようなものでした。正直かなり緊張しましたが、そういった要素が「ついに大学選手権の舞台に来たんだな」と実感させてくれました。もう一つは、これまでと違うメンタリティで挑めた試合であったということです。道内でのリーグ戦や北海道・東北地区代表決定戦は「負けられない」という気持ちが強く、ミスが許されれないような状況でプレーしていました。そういった意味で、これまでのラグビーの試合は何かしらの「重圧」と隣り合わせのものでした。しかし、大学選手権の舞台ではチャレンジャーとして、大胆に思い切ってプレーできたと思います。とにかく何か爪痕を残したい、全国の強豪にどこまで通用するのかチャレンジしたい、という純粋にラグビーを楽しむ気持ちが大きかったです。「勝ち負け」や「プレッシャー」といったものを超越して、「本能的」に、そしてこれまでにない高揚感を感じながらラグビーを楽しむことができたと思います。

Q.北海道大学での学業面での経験を聞かせてください

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 私は総合理系入試で北海道大学に入学し、早い段階から学業面でも希望学部やその先のプランを考えていました。しかし実際のところ、学業面では全て思い通りにいかない形となってしまいました。具体的には、大学での進路選択(学部移行や研究室配属)において全て希望通りに行かなかったということです。私は当初獣医学部を志望していました。絶対に獣医学部に行きたいという気持ちは高校時代から持ち続けていて、大学入学後も必死に追いかけましたが、叶いませんでした。そして2年時の学部移行の際は、農学部を選びました。その際は、「工学か農学でいうと生物が好きだから農学部かな、」といったシンプルな思考で決断しました。その後、農学部での研究室配属でも当初希望していた研究室に定員オーバーで入ることができませんでした。最終的に自分が選んだ研究室は、「右往左往した先に辿り着いた場所」で、正直に言うと選んだ理由はありませんでした。
 入学後から研究室配属までの流れはこういった感じで、当初描いていたプランとは大きく異なる形になっています。しかし、このような経験を経て私は大切なことに気付かされました。それは、「なるようになる」ということです。自分が全く興味のなかった分野の研究であっても、毎日コツコツ取り組んだり、知識が深まるにつれ、「学問の面白さ」を再認識させられました。これは何にでも言えることだと思いますが、最初は全然興味がなかったり、やる気が起きなかったりしても、そこでしっかりと頑張れば見えてくる世界があるということです。たとえ自分が思い描いた道を歩めなくても、そこにもまた新たな出会いがあり、その道に出会った者にしかわからない景色があります。今の研究をしていて日々充実していますし、過去の自分にも胸を張れるものだと思っています。
 繰り返しになりますが、自分が思い通りにいかなかったとしても、そこではそこなりに面白い道があると思いますし、そういった道が仮にないな、と思っても根気よく自分で探す努力さえすれば、絶対に見えてくるものがあると思います。泥臭く自分の手で探し出したものは、言うなれば、「自分が欲しかったもの」よりも、「自分が欲しくなったもの」だと思います。そして、それを「自分が欲しがること」も大事なのではないでしょうか。大学での進路選択や研究を通じて改めてたくさんのことを感じさせられました。

今だから言えることかもしれませんが、これまでの失敗が今の研究室や大学生活で良かったなという感覚につながっているのであれば、「失敗」はそんなに悲観するものではないのかな、と思っています。世の中には等しく面白いものがあって、その時たまたま興味があった分野に行けなかっただけで、その先にも絶対に面白い分野があるんじゃないかなと。そういった心の余裕ができましたね(笑)


Q.大学院に進学されるきっかけや理由はありますか?

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これまで私はラグビーと研究の両立して取り組んできました。両立をしていく上で、どちらも自分なりに精一杯力を注ぎましたが、どうしても研究だけに専念している人とは大きく差があるなと実感していました。そこで、大学ラグビーの引退と大学院進学となりを機に、実際に研究に専念して向き合うことでどういう世界が見えてくるのか、自分のこれまでの研究が将来どんな風になっていくのかを本気で見届けたいと思い、進路選択をしました。そして、自分が大学院生として研究に打ち込んだ結果、アカデミックの道に進むのか、研究職に進みたいのか、または違った道に進むのか、自分の将来についても真剣に向き合う時間を取ることができると考えました。大学院での生活では、研究と並行して、自分の将来に対してこれまで以上に真剣に向き合い、いろいろな世界を知っていきたいと思っています。


Q.「勉強」と「ラグビー」
この二つの存在についてどう思われますか。

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「ラグビー」と「勉強」という二つのものは互いに異質な存在だと思っています。「勉強」は将来の「職」につながったり、社会で生きていく上で絶対に必要なものですが、「ラグビー」は一部の人を除いて、将来に目に見えた形で直結するものでないと思います。加えて、ラグビーと勉強の両方を追った時に得られることが本質的に違うと思います。ラグビーを本気でやって得られたもの、勉強を本気でやって得られたものは共通する点はあるとはいえど、どちらか一方だけでは得られない要素があります。その両方で得られるものを得て、得た先に見える世界を両方の側面から見ることができる人って、稀有な存在だと思います。このように、両立に挑戦した者にしか分からない景色を見たいと思う人が、厳しい道にチャレンジしていくのではないか、と思われます。

Q.これまでの「勉強」と「ラグビー」の両立で大切にしてきた考えはありますか?

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他にも単純なことかもしれませんが、「両方に対して高いモチベーション」を持つことが大切だと思います。勉強、ラグビーの両方に対して本質的モチベーションが高ければ、自然とどちらにも真剣に取り組むようになると思います。高校生であれば、「俺は勉強頑張って、あの大学に行きたいし、ラグビー頑張って花園で活躍したい」といった感じで、シンプルなことでも自分自身をしっかりとモチベートしてあげることが第一歩ではないかと思います。そういったモチベーションの原動力があれば、自ずと行動に移りますし、確固たる信念と欲求が文武両道の基本だと思います。もちろん、一つの道を極めて花を咲かせるのも素晴らしいことですし、そう簡単にできることではないと思います。しかし、二つの道を追って両方で目標や夢を達成するのはもっとカッコいいんじゃないかな、という野心的な理由で両立の道に挑むのはもっと格好よくありませんか?

Q.大平さんにとって、「両立」とはどのようなものですか。

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両立の価値は結果論では測れないと思います。もちろん、世の中結果で全て判断されることが多いですが、何事も完璧に両立できる人なんてそんなにいないと思います。大学名とか、経歴で「両立」の価値を判断することもできなくはないですが、人から見て「両立」できていそうな人ほどその人自身にとっては「両立」できていないことが多いと思います。「両立」の道におそらくゴールはないからです。そういった意味で「両立に挑んだ自分の人生」という価値尺度を持てば、本質的に高い目標を志して努力をして夢を達成できればベストですし、その上で結果がダメであったとしても、その先で充実した生活を送って、別のフィールドであっても戦う姿勢を示していることが「両立」であると私は思います。

Q.最後に、勉強とラグビーの両立を頑張る全国の高校生に向けてメッセージをお願いします!

勉強とラグビー、どちらにも区切りの時は必ずきます。目の前の小さい結果や目先のことに囚われず、両方に対して最後までパッションを燃やしてください!その先に広がる景色は、たとえ同じような境遇の人が100人いたとしても、100人共違うものになったいるはずです。自分だけの景色と価値、そしてその未来を掴みとれるよう、熱い日々を過ごしてほしいと思います!


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