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多系統炎症症候群

これって英国で第一波の流行があった時に川崎病様の症状が出たということで話題になったものと同じということかな。

米国で570例ということなので、それほど頻度の多い状況ではないということであるだろうけれども、小児の新型コロナウイルス感染症で起こりうる状況としては気をつけなければならないだろう。

ニューズウイークの記事では米国の小児新型コロナウイルス感染症患者数は累計33万人余りであるらしいのでこの多系統炎症症候群の発症率は小児コロナウイルス患者1000人に1.6人くらいの計算になる。

記事中でやはり気になるのはショックや心不全、低血圧のような心血管系症状であろう。ウイルス感染症では心筋炎を併発することがあって、急激に心機能が低下すると予後不良となって恐ろしいこともあると思うけれども、MMWRのデータを見ると死亡率は1%ほどのようである。これは集中治療により救命できたということなのか、心血管系の症状がそもそもSelf-limitedなのかはよくわからない。

治療についてはIVIGが8割で行われて、再投与は76例とのことであるようだが、これはIVIGが有効だったということなのかどうか。多分、投与されたIVIGにはまだコロナウイルスの抗体は含まれていないのではないか。

いや、なんの根拠もないのだけれど、私は川崎病にIVIGが効くのはなんだかわからないけれど、川崎の原因病原体がいて、その病原体と宿主因子の相互作用で血管炎を発症して川崎病という表現型を取るが、多くの人ではただの風邪くらいで済んでいるから気がつかないと思っていたのである。

つまり、IVIGには「川崎病病原体」抗体が含まれているからその抗体の効果で症状が消褪するのではないかと考えていた。いわば抗血清療法的な作用機序を考えていたのだが、今回は病原体はわかっているわけである。その病原体は新型であり、多くの人の血液ではまだ抗体が出来上がっていないはずである。けれども、そういう人たちから集めた免疫グロブリンが効果を現したということは、抗血管炎作用を持つものは病原体特異抗体ではなくてむしろ非特異的な成分なのかもしれない。

もちろんこれは今のところなんの根拠もないSpeculation に過ぎない。こういうところを誰か明らかにしてほしいという他力本願モードではある。

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