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少子高齢化は楽観できるものではない話

他の人のnoteを見ていても、少子高齢化の何が悪いのかわからん。たとえ人口が半減してもこじんまりと世界の後進国としてひっそりと暮らしていけばいいじゃないか的な主張をしているものが散見される。

もちろんこれは明らかな誤りである。

これは  国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (https://www.ipss.go.jp/)から引用した1965年の日本の人口ピラミッドである。きれいな富士山のような形をしているのがわかる。

こちらが同じホームページから引用した2020年の人口ピラミッドである。明らかにオレンジと赤の高齢者人口が増えて逆に黄緑色の若年人口が減少している訳である。形は富士山から壺型に変形しているのがわかる。これは戦後の団塊の世代が後期高齢者即ち75歳の赤い部分に入り始めていることを表している。その中で一番多いところは団塊ジュニアである。

青の生産年齢人口が急激に減少しているわけではない。けれども一般に言って、65歳で定年になる企業は多い。つまり、オレンジと赤の部分の人の多くはもう収入源が年金などに限定されてしまっている可能性がある訳である。そういう人たちをたくさん支えなくてはいけないので青色の年代の負担は今重くなっているということである。それでも青には団塊ジュニアが40代後半で頑張っているので、税金と年金医療費で50%手前といったところである。一方で少子化は明らかであり、年を追うごとに今後、青の部分はさらに痩せてゆくことが想定される訳である。

同様に2040年である。これは予測図であろうが、団塊の世代はもう90代に突入するので多くがお迎えが来ていることが推定されて、同世代の人数はさすがに減ってきているが、団塊ジュニアは大きな塊として残っている訳である。残念ながら第三次ベビーブームは起こらなかったので老年世代に突入した団塊ジュニアを支える世代はいない。0-14歳人口なんてこういうふうに止まっているというのは一種の願望が入っているかもしれない。現実はもっと少子化が進行している可能性も十分ある。

これから起こる少子化は決して1965年の富士山型の人口分布がサイズを小さくしたものではない。仕事を定年退職して収入がなくなっても死ぬに死ねずに長寿を生きていくしかない大量の高齢者が減少した現役世代にのしかかってそれでも生きてゆくために搾取せざるを得ない社会になるわけである。

恐らくは多くの楽観主義者たちは1965年の人口分布で人口減少が起こるはずだから大丈夫だと根拠なく主張しているようにしか見えない。残念ながらそれは天変地異でもなければ起こりようがないユートピアでしかない。

ではどうすべきか。一つは移民の大々的な解禁である。つまり、少なくなった若者層を移民で補うということである。けれども、移民解禁については保守層の反発も強く、現実に移民を受け入れるとしても受け皿は小さいわけである。加えて、外国人研修制度などで外国人の若者を安くこき使おうという悪質なものもあり、そもそも研修生の妊娠出産を認めないという制度自体がアナクロニズムの産物であった様子である。そういう制度を基礎にして移民を求めても特殊技能を持ち優遇される少数の人以外は日本を移民先に選ばないかもしれない。

もう一つは老年世代の定義を変えて今の後期高齢者の基準である75歳を老年世代の定義にあらためて定年を75歳に伸ばすことである。そうすれば2040年になっても団塊ジュニアを変わらずこき使うことができ、年金の受給者ではなく年金医療費の負担者にさせ続けることができる。この場合、問題はポストであろう。役職定年も伸ばさざるを得ないため、高齢者がポストに留まり続けることになる。そうなると、若者はポストがなかなか空かないので昇進の望みがなければ有能なものから転職してしまうかもしれない。また、高齢者も仮に退職しても年金はないため、体調が悪くなっても職場にしがみつかざるを得ないことになる。老齢による身体機能の低下からは仕事の能率は下がるだろうし、生産性も低くなることはやむを得ないだろう。これは社会の活力を下げることにも繋がってしまう恐れがある。
良いところは年金の受給期間が短くなるため、年金の破綻リスクが下がることだろう。

そういう状況で病気になったらどうなるか。日本人の健康寿命は平均寿命より8年ほど短いという。病気になったとしても(当然ながら)保険で3割負担を求められるだろうし、失職しても年金は出ない可能性がある。そうなると、財産のある人は自らの財産を使って療養できるかもしれないが、財産が少ない人は十分な療養ができないし、生活も困難になるかもしれない。そうなると、団塊ジュニアたちは自ら姥捨山に登って自らの命を断つ決断をしなければならなくなるかもしれないわけである。

無論これは団塊ジュニアが2040年代に直面するかもしれない問題であって、今の団塊の世代は団塊ジュニアを搾取することで生き延びれば良いのである。集団自決を強制されるのは団塊ジュニアであって決して団塊の世代ではないので安心してほしい。

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