離婚後単独親権絶対維持派対離婚後共同親権

モラハラ夫

多分、結婚する前に配偶者がモラハラなのかそうではないかはわからないと思う訳である。というか、最初からモラハラだとわかっている人と結婚してモラハラだったという場合にはどうしようもないのではないか。

恐らくは最初はモラハラなんて思わなかったけれど、共同生活を開始した後に問題が起こってくる。で、離婚に至るということであろう。

で、男が十分な生活費を出さなかった、経済的DVだ、男が仕事だと言って家事育児をやらないから精神的DVだということになる。

そうなれば男がモラハラDVなので全責任を負え、慰謝料を払え、養育費を払うのが当然だろう。女性の苦しみを知れ!という叫びになる訳である。

離婚後単独親権

日本では離婚時には単独親権になり、母親が9割近く親権を取れる訳である。そうなると父親は別居親として親の権利は何もなくなる。

かつてはそれで父親はもうかつての妻子は死んだものだと諦めて新しい人生を開拓すれば良かった。けれども、近年、母子家庭の貧困が問題になっている訳である。ちなみに父子家庭が貧困じゃないというのは育児を祖父母などにアウトソーシングしている家庭であって、父親一人で家族を養う賃労働と育児を一人でやる場合にはやはり仕事に差し支えが出て貧困に陥るケースがないわけではない。

このため、それまで「寡婦手当」として母子家庭だけに支給されていた手当は今では「ひとり親手当」として父子家庭にも支給されるようになっている。

男性の育児へのコミットメント

一方で育児負担については男性育休の義務化が推し進められているわけである。平成年代の終わりからイクメンプロジェクトということで父親に積極的に育児に参加してもらおうというプログラムが始まっている。育児は母親が単独で行うものではない、夫婦で共同して行うものだという趣旨である。

多分、それまでの父親は稼ぐことに意義があると信じて育児には最初はタッチせずにひたすら働いてきたわけである。これは母親にとっては「育児を自分に押し付けられている!」という不満の源泉になったわけではあるが、一方では不死の精神的絆は弱かったので離婚になれば比較的速やかに離別が実行できたわけである。その代わり養育費はサボりがちということになっていたわけである。

これがイクメンプロジェクトが開始されてのちは父親が子供に触れる時間が増えたためか、離婚においても父親が子供と容易に離別できなくなってしまった。母親にしてみれば離婚でさっさと父親を無縁に切ってしまいたいわけである。けれども、父親は「妻との離婚は了承した。けれども、可愛い我が子には会い続けたい」という人が増えてきてしまったわけである。

これが男性育休が義務化されると父と子との絆がもっと強まるわけである。そうなると離婚におけるトラブルが今よりずっと頻発することが想定されてしまうわけである。

離婚した後の男のリスク

これまでは「じゃあ結婚しなければいいですね。結婚しなければ離婚はありません。子供もいなければ男の人も『子供に会いたい』と泣くことはないでしょう」と冷たく言っていたわけである。

けれども、ここまで父親の家事育児へのコミットメントが強まってしまうと離婚したからといって「じゃあもう父ちゃんは縁もゆかりもない人です。人間関係の強制はよくないです。ただ男は餓死しても構わないけれど、母子が貧困に落ちるのは避けるべき。男なら自分の食事を諦めても慰謝料として養育費を払い続けなさい。」と言っても納得しない人が多いだろう。自分が育てた我が子だという認識が確立してしまえばそれを断ち切るのは地獄の苦しみになる。

父子家庭であれば父親が禁止してもこっそりと母子で会うことが多いので、離婚後の父子家庭での母子の面会交流率は半分近くになっていたはずである。一方で、母子家庭では母親が元夫を拒否する場合が多いためか面会交流の実施率は3割程度と低くなっている。

かつて、ネットで聞いた話では、子供の運動会を見にきた別居親の元父親を見つけた母親が警察を呼んで追っ払ったそうである。何もそこまでしなくてもと男の私は思うけれど、女性にしてみればもう関係のない男が近づいてくること自体が我慢ならなかったのかも知れない。学校側も親権者の同意なしに非親権親が学校に来るのは好ましくないということが多いそうである。学校にしてみれば家庭のトラブルを学校に持ち込まないでくれということかも知れない。

養育費に関しては面会交流を拒否された父親が再婚するから養育費を減額調停したことに子供が怒ってネットに書いたものも見たことがある。真偽の程はわからないけれど。そんなにいうなら面会交流すれば良かったのにね。

そういうことで、シングルマザーさんたちは離婚後共同親権なんてけしからん。当然離婚後単独親権で母親が親権を持つべき。元父親はもう無縁なのだから黙って請求された額の養育費を払い込んでいれば存在自体は消えてくれ、ということになるわけである。

多分、これが通ってしまえば男の方も頑張って家族を養って働いて家事育児も積極的にやった挙句に妻の一存でモラハラだった、DVだったと言われればあっさり家族の縁を切られるということが明らかになってしまったわけである。

女性にしてみれば現状で養育費を罰則のある義務にしてしまえば都合が良いことは間違いない。現状では女性の負うリスクは多くは経済的なものだけになるのではないか。けれども男側にしてみればさまざまな点でリスクが高いということが明白になってしまっている。

少子化の進行と非婚化

私も小児科医として少子化の進行については大変遺憾に思うわけである。ぜひみなさんが幸せな結婚をして子育てを楽しんでほしい。けれども、このまま離婚後共同親権を潰しましょうということになれば、離婚後単独親権で子連れ別居から離婚という黄金パターンが確立した現在では、結婚を悩む若い男性が、その心配をした時に「いや、そんなの大したことないから結婚しなさい。」とは言いにくくなっているわけである。

もうシングルマザーさんやフェミニストさんは不退転の決意だろうし、国も与党も規定の方針は変えないだろう。これで離婚後共同親権が失敗すれば男たちが結婚戦線から離脱することは止めにくいよなあと思ってしまうわけである。

50歳まで一度も結婚しない未婚の男性が28%存在するのが今の日本である。結婚して離婚する人が10%程存在するので、そういう人が再婚することで女性の50歳での未婚率は17%だったと思う。

養育費の徴収が厳格化されるとこういう離婚した男性が養育費の負担のために再婚が困難になることは考えられるかも知れない。そうなると再婚者が減るために女性の生涯未婚率も男性に近づく可能性は十分にあると思われるわけである。

短期的には男が結婚しないというのはリスクヘッジのために有効かも知れないが、それは少子化をますます加速させることになる。無論これは将来的な国の活力を削ぐことは間違いないわけである。

だからといって男たちに「君たちは神風特攻隊員として結婚して死んでこい」というわけにはゆかないのである。一番いいのはシングルマザーさんが離婚後共同親権を飲んでくれることであるが、多分望み薄であろう。もうどうにでもなあれというのはこういうことかもしれない。

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