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マスコミの叫びについて

そりゃコロナウイルス感染禍において、マスコミが騒ぎ立てたい気持ちはよくわかるのである。けれども、元々ほとんどのウイルス感染に対しては治療薬がないのが現状である。

例えば解熱剤は発熱は抑制するが、別にウイルス粒子を破壊するわけではない。一時期は一部の小児科医は「風邪に解熱剤は意味がない」といって処方しなかったことがある。まあ、高熱が続くと食欲が落ちたり消耗が大きくなるので、寧ろ回復が遅くなる傾向が見られたのでアセトアミノフェンくらいはいいよねってすぐに廃れたけれど。

コメンテーターらしき人が「治療薬!」って叫んでいたけれど、昨日くらいに緊急治験が始まったレベルなのだからまだ残念ながら今回の新型肺炎に「治療薬」は残念ながら存在しないということは認識してほしいものである。

もちろん日本の治験が成功すれば新型肺炎への治療薬ができるということである。

検査についてもあれこれ言っていたが、いったん陰性として下船した人の中に陽性者が現れたということが気に入らないらしい。これは視聴者の不安をも掻き立てる事例であったということだろう。

ニュースピクスのコメントでもあったが、「検査陽性は疾患(+)と言えるのだけれど、検査陰性は疾患(−)を意味しない。ただ『疾患(+)とはいえない』」ということである。インフルエンザの迅速検査だって一回の検査では陽性にならずに2〜3回検査してやっと陽性になる人もいるのである。(その子は何度も綿棒を鼻に突っ込まれる羽目になって大変だった)

感染症状が明らかで臨床的に流行感冒と診断できる人でも偽陰性を示すこともあるのである。潜伏期間は無症状なので感染細胞もウイルス量も少ないので検査をしてもウイルス粒子を引っ掛けられない可能性もあろう。

また、もう一つの要因として、ウイルスがRNAという点がある。人間をはじめとした生物世界では、DNA→RNA→タンパク質というセントラルドグマが成立しており、中間形態であるRNAは合成されてタンパク質の合成に関わった後は速やかに分解するようになっている。即ち、生物の世界にはRNAを分解する作用は強いのである。ということは、せっかくウイルス粒子を採集したとしても処理の過程で知らない間にRNAが分解してなくなってしまっているという可能性もある。

これらには「どうすればいいんだよ」って不安な人もいるかもしれないが根本的にはどうしようもない。感染が顕性化して発熱その他の症状が出てからもう一度検査するのが対応法であろう。

「それなら『完全に大丈夫』となるまで隔離しておけ!」って叫びたい人もいるかもしれないが、『完全に大丈夫』になるのはいつまで?という問いに答えられる人はいないのである。永久に隔離を続けるわけにはいかないであろう。

それでも自宅に帰り着くのに公共交通機関を使ったのは許せない!警察の護送車や自衛隊の車で送ればよかったという人もいるかもしれないが、もしあなたならそうして欲しかったですか?数ヶ月、もしくは何年も「あの家は新型肺炎の患者がいる」って陰口を叩かれることになる可能性を引き受けますか?

日本のいけないところは「我こそリベラル!正義、反差別!」って自認している人が率先して陰口の急先鋒になりがちなところなんである。それは差別と言っても良いんじゃないかとと私は思っている。彼らにしてみれば「自分たち正常者が感染者という異常者を排除して何が悪い!」って気持ちなんだろうとは思うけれども。

感染経路を追えない患者が出現している以上、感染者や無症候性キャリアはそこかしこで普通に生活しているはずである。一応、検査で陰性と出た人はそのレベルでは一般市民と同じと考えていいのではないか。

あ、忘れていたけれど、追加であるが、ウイルス感染による多臓器不全(サイトカインストームによる)って治療の巧拙に関わらず一定の割合で起こると思うのである。今回の流行で重症化した人は大変お気の毒だと思うのであるが、今まで、別のウイルス感染でもサイトカインストームは一定の割合で起きている。それは医療者が治療をさぼったとか不適切な治療を行ったということとは無関係であろう。

今書いている小文は今朝、某テレビ局の情報番組?討論番組?を見ての感想なんだけれど、上記のケースはクルーズ船の乗客で、横浜港に寄港当初は発熱がなく、検査を後回しにされたということで現在、多臓器不全になっている人の事例が紹介されていたわけである。大変お気の毒な事例なんである。テレビにはその人の奥さんが電話で出演されていて、もう少し早く検査してくれたら、ということをスタジオでも言っていたように思う。忙しくて切れ切れにしか見ていないので、見ていなかった時に誰か反論してくれていたら良いと思うのだが、多分、この事例は少しくらい早く診断されていても病気の進行はあまり変わらなかった可能性があるよね、もちろん、サイトカインストームが起こった後の対応法については日本の集中治療分野は様々な知見を持っていると思うけれども。

なんだか正義のリベラル様には「不謹慎!」と叫ばれそうな内容なので有料にしようかどうか迷うのである。(笑)


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