結婚の利益とリスクのバランス

朝日新聞が大喜びだが、父親を廃止してゆく制度にすると、男に結婚する動機がどんどん少なくなってゆくと思うのである。いうまでもないことだが、実際に受精から出産まで胎児を育て、出産後も授乳という関係を維持する母子関係は強いので、父子関係を弱くすると、夫婦のバランスも親子のバランスも崩れてゆくことになる。

今は例えば非正規雇用や貧困の男性が主に結婚戦線から離脱しているわけだが、制度的に男の権利が小さくなってくるならば、男が結婚で得られる利益が少なくなることになる。

家制度や家父長制を否定された日本の家族制度では、もう制度的には後継者の必要はなくなっているわけである。民間の風習として相続があり、親の財産は勝手に子供が分けどりしているだけということになる。

まあ、親世代はまだ「孫の顔が見たい」ということで子供に結婚させようとする圧力をかけることがあるかもしれない。けれども、もう、子供は母親のもの、父親は単に財産の供給者として、もしくは家事育児の人手の供給者としてのみ扱われ、母親が自由に離婚できるようになれば親として養育費を支払う義務のみ課せられ、一方ではDV加害者として弾劾され、子供との面会交流を行うことも自由に拒否される親権喪失者ということになれば、まあ踏んだり蹴ったりということになるだろう。

子供の権利には子が父母に養育される権利や子が父母に会う権利というものが謳われているが、今、日本で求められている子供の権利は子供が母親に育てられ、もしくは母親に会う権利だけで、父親の存在は極小化されているようである。

つまり、子供の権利を唱える人たちは父親を既に無視しているし、父親は別に子供に会う必要はない、もしくは母親の支配下で母親の許可もないのになぜ父親が何かを言う権利があるのかわからないということのようである。

つまり、男は結婚しても前の世代ほど父親として存在することができなくなってくるだろうことが予想されるわけである。

逆に、以前の父親と違うのは今の若者は家事もそれなりにはできるわけである。料理もできるだろうし、イクメンとして積極的に育児に関わる男性も増えていると思う。けれども、離婚によって親子分離が行われてしまうと、場合によっては元妻が「お前には子供など一切会わせない!」と叫ばれる可能性があるわけである。そうなると、養育費は要求されるだろうが、子供との面会はそこで終了して今生の別れとなる可能性もあるわけである。

当然ながら子供の権利を叫ぶ人は母子関係の維持を叫ぶ人たちであって、父子関係については否定的な人が多い。離婚夫は全員モラハラとかDVという人も珍しくはない。家庭裁判所は面会交流を推進しているとはいうが、その「相場」は月1回2時間でしかないということである。ちなみに養育費と面会交流はリンクしていないのでいくら養育費を支払ったとしても、それで面会交流が確実に行えるわけではない。「養育費がなかったら子供は生きていけないけれど、面会交流なんてしなくったって構わないでしょう」という考えの人も普通に存在するのである。

イクメンとして濃密な父子関係を確立してしまった人は子供に会えないことがとても耐えられないかもしれない。もちろん、離婚夫婦の関係性によってはもっと多くの面会交流ができる場合もある。もうそこは運でしかない。

こういうリスクが上がってきているのが現在の日本の結婚である。女性には有利になってきているけれど、男には高リスクということである。一年の離婚数は結婚件数のおよそ三分の一もあるわけである。もちろん、その中には子育てを終わった後の熟年離婚も含まれるであろうが、離婚リスクは決して低いものではない。

https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/outline_01.pdf

令和2年の国勢調査では男性の未婚率は25ー29歳で76%、30ー34歳でも51%と晩婚化というか未婚率の上昇はどんどん進んでいるわけである。35ー39歳になってやっと未婚率が38%と半数以上の男性が結婚するというのが今の日本の現状である。もちろん、これには男性の非正規雇用化など低賃金のため結婚どころではないという人も多いだろうけれど、結婚に利益を感じなくなっている人も増えてきているのかもしれない。

今はコンビニやスーパーなども便利に活用できるので、男が一人で暮らしていても結構、自炊なども簡単にできそうである。宅配なども進化している。

そういう便利な世の中では無理に結婚して苦労するよりは独身貴族の方が気楽だという男性も増えているかもしれないね。

少子化はますます進みそうである。

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