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マーダーミステリー業界の概観(前編):マーダーミステリーはどんなゲームなのか

マーダーミステリーをまったく知らない方向けにマーダーミステリーがどういったゲームなのか、業界の現状がどうなっているかをスライドで紹介する機会がありました。
本稿ではその時のスライドを公開しつつ、各スライドの解説を行っていきます。
今回はプレイヤー向けではまったくなくて、(需要がどの程度あるのかはまったくわかりませんが)業界として捉えている方向けの記事になっています。

スライド3

そもそもマーダーミステリーがどんなゲームなのかをひと言で表すと、「物語の登場人物になって事件の犯人探しを行う」ゲームということになります。
ポイントは「犯人探しをする」と「物語の登場人物になる」ことです。
犯人探しこそがマーダーミステリーの本質で、ほかの形式が整っていても犯人探しがなければマーダーミステリーではありません。
登場人物になる=登場人物の主観で物語を体験するということです。自分ごととしてプレイできるゲームはほかにあまり類を見ません。

スライド4

一度しかプレイできないということ、同じ作品をプレイしてもメンバー次第でまったく異なる体験であったり、物語が紡ぎ出されるというのもマーダーミステリーの特徴です。
犯人探しはロジカルな推理ですが、物語の体験はきわめてエモーショナルで、論理と感情という真逆の要素を兼ね備えたゲームです。これらを合わせ持つのも、ほかのジャンルでは見られない特徴です。

スライド5

これは架空のありがちなマーダーミステリーの設定です。実際のゲームもこのようなオープニングから始まります。
この例では長女や長男、メイドといった6人がプレイヤーキャラクターになります。

スライド6

同じマーダーミステリーという括りであってもゲームシステムやルールは千差万別で、同じジャンルの中でまったくシステムが異なる作品が無数にあります。この点は脱出ゲームに似ています。
とはいえそれではマーダーミステリーをどうやってプレイするのかが想像できないので、一般的なシステムやルールを紹介します。

まず事件(多くの場合は殺人)はゲーム開始前に起きていて、プレイヤーは事件の容疑者でもある登場人物としてゲームをプレイします。
ゲームはプレイヤー同士の話し合いと客観的な証拠の開示で進みます。
各キャラクターにはその生い立ちや人となりといった背景情報、事件当日の時系列順での行動、目標などが書かれた設定書が用意されています。プレイヤーは議論開始前に自分の設定書を読み込みます。ここで初めて犯人なのかどうか、どういた目的を持っているのかがわかります。
設定書とは別にカードという形で客観的な証拠が盤上に置かれ、プレイヤーはカードを取得、公開することで証拠を開示できます。たとえば「検視の結果、死亡推定時刻は20時~22時だった」、「血まみれの包丁が書斎から見つかった」といった事実です。
プレイヤーは自分の設定書に書かれた内容やカードで明らかになった情報を元に議論を進めていきます。
話し合いは全員で議論する全体会議と少人数で会話する密談があります。
各キャラクターには犯人探し以外の目標があります。たとえば「何か(アイテムだったり人物だったり)を探している」、「他人に知られたくない秘密がある」などです。
犯人探しだけであれば全員で議論すればよいのですが、こうした目標を達成するために時には特定の人とのみ情報交換したい場合があります。その際に少人数での密談を行うことになります。

スライド7

これは会話の例です。
犯人以外にも隠したい秘密がある人物がいるため、全員が真実を話すとは限りません。そこに犯人が逃げ切る隙が生じます。犯人以外は自分の目標を達成するために秘密を守りつつ、いかに犯人を追い詰める立ち回りができるかが問われます。

前編はここまでとなります。後編ではマーダーミステリーの現状や歴史、課題について紹介します。

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