GMフレンドリーなGMガイド制作:より多くの人に遊んでもらうために

GMガイドの重要性

自分が作った作品をより多くの人に楽しんでもらいたいと思うのは制作者として当然のことです。ではどうすればたくさんの人に遊ばれるでしょうか。
もちろん作品そのもののが面白いというのは最も重要な要素ですが、それだけでたくさんの人に遊んでもらえるわけではありません。キーアートやキャラクターアートといったビジュアルだって大事でしょうし、ユドナリウムやハンドアウトのデザインだって質が高いに越したことはありません。バズりやすいフックがあるというのも必要なことでしょう。
そんな中で後回しになりがちで実は大切なのが「いかにGMがプレイしやすいか」です。

BoothなどでリリースされているGM必須の市販マーダーミステリー作品はどのように遊ばれるでしょう。
店舗やプロGMが公演することもあるでしょうが、それはほんの一握りの作品、一握りのプレイヤーが浴する機会で、ほとんどの場合は知り合い同士、あるいは有志のアマチュアGMの下でプレイされることになります。
どんなに面白い作品であっても、GMがいなければ、あるいはGMがプレイしたいと思わなければプレイヤーの元には届きません。そしてアマチュアGMのモチベーションを左右する大きな要素の1つが、フレンドリーなGMガイドが揃っているかどうかです。GMガイドを一読してもどうやってゲームを進めるかわからないようでは、その時点でお蔵入りになってしまいます。
しかしGMフレンドリーなGMガイドが揃っている作品はごくわずかで、それどころか資料を読み解かなければGMできない、GMが補完しなければプレイできない作品もいくつもあります。

プロGMとアマチュアGMの違い

プロGMとアマチュアGMの大きな違いは「1つの作品にどれだけコストをかけられるか」です。
たとえば、プレイするとめちゃくちゃ面白いが、GMは非常に難しい作品があったとします。
プロGMであれば金銭的な収益が得られますし、公演だって何十回、何百回と行える可能性があるので、習得に時間がかかったとしても1公演あたりの習得時間で考えればコストパフォーマンスは高くなります。準備に8時間かけたとしても、20公演すれば1公演あたりの準備時間は24分です。
しかしアマチュアGMにとっては金銭的な見返りはありませんし、作品を習得してもプレイする機会はわずかです。わずかどころかほとんどの場合、友人同士でプレイする1回限りとなるでしょう。コストパフォーマンスが非常に悪いということです。
ではGMとして事前に習得するために8時間かかるとしたら、1回のプレイだけのために、果たしてどれくらいの人がGMをやろうと考えるでしょうか。
もちろん8時間というのはたとえ話に過ぎませんし、作品の習熟にどれくらい時間をかけられるかは人それぞれです。これはと思った作品であればいくらでも時間をかけられるという人はいるでしょう。
とはいえ準備時間が少ない方が、より多くの人がGMをやろうと考えるのは当然です。

またGM自身の習熟スキルもプロとアマチュアでは大きな違いがあります。プロGMはマーダーミステリーの経験が豊富で、どのポイントを押さえればGMできるかという勘所がわかっています。それだけ読み込みの時間も早くなります。
一方でアマチュアGMの習熟スキルはバラバラです。プロ顔負けの人もいるでしょうが、初めてGMする人だっています。GM初心者はラーニングに時間がかかってしまいますし、作品に足りていないところがあっても経験でカバーできず、その場面に直面して初めてまごつくことになります。
GMレスでプレイできる作品も成立している中で、GMが必要な作品ということは、プレイヤーでは処理できない複雑な操作がある訳で、できるだけ容易なGMガイドが求められます。

簡潔に資料をまとめる

では具体的にGMフレンドリーなGMガイドとはどういったものでしょうか。
1つは資料がまとめられていること、もう1つは必要な資料が揃っていることです。

ダメなGMガイドの類型として、ゲームを進めるにあたっての説明が複数の資料に分散していて、リファレンスもないというのがあります。
ゲームの流れに関する資料はファイルA、ゲーム中の処理はファイルBとファイルC、キャラクターAのハンドアウトに書かれていて、「この処理についてはファイルBを参照」といった説明はいっさいないといった場合です。
ゲームを把握するために資料を読んでいても、「この部分はどう処理するんだろう」というのが容易には理解できませんし、後から見返すにしても、「どこかに説明は書いてあったけど、どこだったっけ?」ということになります。
読んでもわからないようであればそもそもプレイされないでしょうし、仮にプレイしたとしても適切にゲームが運営される可能性はきわめて低く、プレイヤーにとってもよくわからない作品ということになります。
作者の中でゲームの流れが整理できていない、あるいはすべてを把握してしまっているがゆえに説明不足に気づけていないのいずれかが要因でしょう。

必要な資料を揃える

揃えておくべき資料は何かというと、「ゲーム概要」、「ルール説明」、「進行ガイド」、「キャラクター概要」、「犯人の見つけ方」で、これらがあれば非常にGMフレンドリーなGMガイドになります。
1つにまとめてあっても良いですし、リファレンスがしっかりしているのであれば、複数の資料に分かれていてもかまいません。

「ゲーム概要」はゲーム全体の説明です。
殺人が起きて犯人を探すというだけの単純なマーダーミステリーであれば説明することはほとんどなくて、せいぜいGMがどの順番で資料を読むと理解しやすいかを提示するくらいです。しかし昨今は犯人探し以外のイベントが発生したり、凝ったギミックの作品が増えています。そんな作品こそ、概略の説明が必要です。
どんな作品なのかという大枠が見えていれば、個々の説明も頭に入れやすいので、まず「どんなゲーム」で、「ゲーム中に何が起きるのか」というあらすじを提示することが重要です。
プレイヤー視点ではこの先に何があるか知らない方が作品を楽しめますが、どうやって進行させようかと考えているGM視点では、全体像がつかめていないと理解が難しくなるだけです。

「ルール説明」は言わずもがなでしょう。
ルールに不備があるとGMがその場で補うしかありませんが、そのためには経験が必要です。情報カードの取り扱い方、投票の方法、これらが1つ変わるだけでプレイヤーの立ち回り方が大きく変わります。
どういったルールを整備しておくべきかについては、「マーダーミステリーのルール形式チェック」という記事を掲載しているので、そちらを読んでください。
ただし記事では汎用的なルールにのみ触れています。その作品の独自システムがある場合は、そのルールをきちんと説明しましょう。
ルールの不備はプレイヤーの満足度を損なうことにも直結します。

「進行ガイド」は最も重要な資料です。
ゲーム開始前の準備からゲーム終了までにGMが何を行うべきかを時系列で説明し、ゲーム中はこれさえ見ていればゲームを進められるというのが理想のガイドです。
プレイ時にGMが何を話すべきか、どういう行動を行うのか、どう処理するのかをすべて記述します。
ほとんどのマーダーミステリーで進行ガイドが用意されていて、ゲーム中はこれを参照することになります。そのため、進行ガイドに書かれていない処理、シーンなどがあると、GMのミスを誘発しやすくなりますし、混乱の元となります。

また細かいことではありますが、進行ガイドの中に書かれている文章をプレイヤーへ提示するため、GMがテキストをコピペすることがあります。コピペ前提の文章に関しては、GMがただコピペするだけで使える状態を意識しましょう。
レイアウトやデザインを優先して文章の途中で改行されている、PDFからコピペすると文章が重複されるといったガイドが結構あります。それらはGM側でプレイヤーへ提示する前に編集、加工が必要となりますが、それだけGMの負担が増えますし、ミスの余地が生まれることにもなります。

「キャラクター概要」は各プレイヤーキャラクターがどういった人物なのか、目標が何なのか、どうすれば目標達成となるかをまとめたものです。キャラクターシートを読めばたいていはわかるとはいえ、全キャラクターを読むのは時間がかかりますし、一瞥して把握できるようにリファレンスが用意してあるのが理想です。
特にキャラクターの目標については、どうすれば達成できるかという条件を明示するのが必須です。曖昧な達成条件の場合は明確化されていなければ判定できません。キャラクターシートをすべて読めばわかるとしても、概要に記載しておいた方が便利ですし、ミスが起こりません。
中には全員分のキャラクターシートを読んでも、正解が何かはっきりわからない作品もありますが、その場合はもちろんGM向けの条件提示は必須になります。

犯人の見つけ方を解説する

「犯人の見つけ方」はGMフレンドリーな作品であっても用意されていない場合がほとんどです。
各キャラクターが何を行っていたかが時系列で説明されていることは多いのですが、そこからどう推理すれば犯人にたどり着くことができるかまで解説されていることはほとんどありません。
たとえば「XXXという証拠から犯人はAさん、Bさん、Cさんに絞られ、YYYという証拠から犯人はBさん、Dさん、Eさんに絞られる。両方に該当するのはBさんなので、犯人はBさんである」といった説明です。
プレイヤー、特に犯人を探しあてることができなかったプレイヤーにとって、「ではどうすればよかったのか」は最も関心があるところです。
これが曖昧であれば、犯人探しの納得感が薄れてプレイヤーの満足度も下がってしまいます。きちんと犯人へ至る論理が用意されていて、しかもさりげないが気づけないことはない伏線があれば、気づければ優越感、気づけなくても悔しさを感じて感想戦も盛り上がることでしょう。

「犯人の見つけ方」をGM向けガイドとして用意する副次的な効果もあって、犯人探しが論理的に成立しているかを再確認できます。きちんと解説できないようであれば、犯人探しの導線を見直した方がよいでしょう。

たくさんの人にプレイしてもらうカギはGM

マーダーミステリーをたくさんの人に遊んでもらうためのキーになるのがアマチュアGMです。
GMに気に入ってもらえなければ、いかにプレイすれば面白い作品であっても日の目を見ることはありません。
GMフレンドリーというのはマーダーミステリー作者がもっと大切にすべき要素でしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?