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「あの夜を覚えてる」を出来るだけネタバレせずに語りたい

はじめに
この公演がラジオリスナー以外にどれだけ響くのか、ラジオリスナーの私には分からないけれど、どうしても千穐楽を色んな人に見てほしいと思った。
20日の初演はアーカイブでしか見れなかったから、27日はより多くの人と生で一緒に楽しみたいと思った。

ラジオリスナー的に刺さるのはもちろんだけど、他の視点から見てもどこか心の支えになってくれそうなメッセージがたくさん込められていたように思うので、できるだけネタバレは無しで、千穐楽の前にこうして書いてみようと思う。

あの夜を覚えてる公式HP

それぞれの日常~向き・不向きはあるけれど~

この公演は、ラジオに携わる仕事をする人々がそれぞれの役割・仕事に没頭し、向き合い、その役目を全うする描写が大半を占める。

多分どんな仕事も、それぞれ決められた役割、行うべき作業等があって、その役割の中で個人の色を出していく必要がある。その役割や個人の色を見つめ直せるような、いわゆる「お仕事ドラマ」のように見ることもできる。

職業について考えるとき、向き・不向きはどうしても付いてくるものだと思う。ラジオの業界は全然知らないけれど、作家ならクリエイティビティ(創作性)が求められたり、ディレクターなら臨機応変な対応力が求められたり、パーソナリティもいろんな色があるとはいえ、「向いている人」の共通項はどこかにある気もする。

でも、どこかで「その人がその仕事をする理由」みたいなものも欲しかったりする。この人じゃなきゃ出来ないとか、この人だからこそ出る味とかは、向き・不向きではなく別のところから現れるのではないだろうか。

その別のところが、この公演では「ラジオ愛」ではないかと感じた。ラジオに対する熱意、想いが仕事にどうつながっているのか、が物語全体で見えてくる作品だったように思う。

ラジオ愛

この公演そのもので「あの夜」を創りだしたい、と公式Twitterかラジオかどこかで耳にした。もちろん物語そのものが「あの夜」を表現しているのだけれど、役者さんも皆さんが「あの夜」を持っていて、個人的にラジオが好きというところから湧く熱意が垣間見える。

役者さんのラジオ愛は、GERAというラジオアプリで語られているので、配信を見てからでも是非聴いてみてほしいなと思った。

https://podcast.1242.com/show/anoyoru/

ラジオリスナーとして

私はラジオを好きになってから日は浅い方のリスナーだ。
会社で働いているので深夜ラジオのリアタイはほぼ出来ないし、週末の深夜も疲れて寝落ちしてしまうこともザラにある。

それでも何度かリアタイできた夜はどれも印象的で、リアルタイムで聴くからこそのワクワクがある。

「あの夜を覚えてる」では、ラジオをリアタイするからこそのワクワク感と、公演をリアルタイムで見ることの高揚感という、2つのリアタイを楽しむことができる。ラジオ番組に自分も関わっている感覚や、この瞬間を共有できているという嬉しさ、周りも同じように高揚しているんだという共感など、リアタイでしか味わえないワクワクが詰め込まれていて、とても素敵だと思った。

そしてこの公演には、今ラジオが好きな人が楽しめる工夫があらゆるところに散りばめられている。
パーソナリティの特別出演を楽しめたり、番組グッズが見切れるシーンがたくさんあったり、CMにも工夫があったりと、リアルを知っているからこそ楽しめるパロディの数々は、「私たちには分かるよ!」というワクワクを与えてくれる。実際にニッポン放送で働いている社員さんも、リスナーであれば知っている人が登場したりして、個人的に湧いた。

菅田将暉ANNでは、菅田さんがアカデミー賞の授賞式でラジオリスナーにだけ伝わるような動きをするという風習があるが、「あの夜を覚えてる」は、そんな隠し芸の宝庫だ。まだまだ気付いていないところがありそうなので、アーカイブで何度も見て発見する楽しみもある。

裏方さんすごい

この公演を見ながら一番痺れたのは、見えないところにいる裏方の皆さんの存在だった。ラジオブースはガラス窓でサブ(副調整室)と区切られていて、普通に撮影したらガラスに撮影するスタッフや音響が写り込むはずなのに見えないようになっているし、場面の切り替えと同時に聴こえる音も変わっていたり、ラジオの音源はちゃんとラジオっぽい音になっていたり、気付かないところでもものすごい数のスタッフが息を潜めて裏方に徹していると思うと、余計にすごさを感じる。

ところどころ「今トラブったかな?」と感じるところもあって、物語の理解には問題はないんだけれど、音量が不自然に変わったり、防音で閉鎖されているはずのラジオブースのドアが開いていたりするのも、「いままさに裏方の皆さんがドタバタしているんだろうな」という裏側まで想像してしまい、その裏方の皆さんのこの公演への愛とかも感じることができて、ニッチな楽しみ方が出来た。

ばかまじめな僕らに幸あれ

主題歌の「ばかまじめ/Creepy Nuts・Ayase・幾田りら」が作中で流れるタイミングも流れも、本当に泣かせにきている。

公演の中身と重なるのはもちろん、この劇を知らなくても刺さる歌詞で、トラックも、4人の声も、本当に最高の歌。

記事のはじめに「お仕事ドラマ」という表現をしたが、普段の生活で仕事に、勉強に、そしていろんな挑戦に地道に頑張っている人に向けた曲だと感じた。

どれだけ大変でもそれが全て報われるとは限らない。けれど、また明日もがんばっちゃうような、仕事への愛情と頑張りが詰まった曲。

それがラジオブースをバックに、劇のなかで流れるのだから、もうラジオに携わるすべての人を好きにならざるを得ないし、我々リスナーのために仕事をしてくれてありがとうございますという気持ちにもなるし、ラジオに携われて良いなあ羨ましいなぁという気持ちにもなる。

とにかくラジオ愛、番組愛、スタッフ愛、ニッポン放送愛が爆上がりするような公演でした。

日本語として無茶苦茶なところは多々あり、ばかみたいな文章になってしまったが、今日27日の千穐楽の前に出しておきたいという自己満足で書きました。


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