バイクのマフラー

地元の友達に石川という男がいる。


彼は中学を卒業して現場仕事をしていた。


彼はいわゆるヤンキーだった。


バカだけど愛すべき男だった。


十六の夏。


ある日石川に呼び出された。


彼はバイクでやってきた。


「発見したことあんだよ!」


彼は興奮気味に言った。


すると突然、自分のバイクのマフラーに唾をかけ始めた。


何度も何度も。


熱々のマフラーはジュ〜と音をたてる。


彼は真っ直ぐな瞳で言った。


「これやると焼きたてのパンのにおいすんだよ!」


そんな事で呼び出すなよと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?