【ショート評論】法然について
法然は卓越した仏教者であり、宗教家である。法然と親鸞の異なるところは、親鸞の教理が仏教の枠組みを超えて一個の「思想」にまで昇華されているのに対して、法然はあくまでも仏教の枠組みの中で一つの「宗教改革」を起こしたというところにある。法然自身はもともと当時仏教の一大権威であった比叡山延暦寺の優秀な学僧だったが、あるとき反体制に身を転じて山を下りる。そして黒谷というところで市井の民衆のために称名念仏による平易な仏教を説きはじめる。さらに当時の民衆が抱いていた仏教教義に対する誤解や