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言い聞かせる
10月10日、給湯器が壊れた。
いつもの朝の手順で、ヤカンに水をいれてコンロにかけたあと、抽斗から取り出した流し台用布巾とテーブル用布巾を蛇口の下で濡らしたら、水がキリリと冷たい。
あら、やだ。ガスのリモコンをいれてなかった。壁に取り付けられたリモコンの運転ボタンを押す。押した瞬間、ボタンの押し具合がいつもとちがう気がした。押すとともにあるはずの「入りましたよ」のデジタル合図音「ピッ」がない。リモコンに何も表示されない。
浴室のタイル壁に貼り付いているリモコンの運転ボタンも押したけれど、こちらもいつもとちがう。反応なし。
この日の夕方。修理をお願いしたガス屋さんが給湯器のふたを外し、複雑に配置されている管やら基盤やらよくわからない何やらに、懐中電灯を当てる。上から下へ。下から上へ。右から左、左から右へ。
「水が漏れてるんでね、うーん、これはここら辺を取り替えることになりますね」むき出しになった部品の広い範囲をさして、ここら辺を示した。思いの外広範囲の部品の交換である。折しも3連休と台風上陸がせまっている。ガス屋さんによると、修理できるのは、早くても16日か17日。
「困ったな」自然とこぼれた。こぼれた途端、ニュースでみた震災や台風の被災地の映像がよみがえる。
「震災や台風の被災地のことを思えば、こんなことは困ったうちにはいらないですよね」この言い訳めいた言葉はガス屋さんに向けたのか、独り言ちたのか、自分でもわからない。
ともかく。あたしったら、困ったに格差をつけたのだ!
そりゃ、困るの事態には程度の差はある。でもだ。困った問題が生じたひとにとっては、目の前のそれが大問題なのだ。困ったのに困ったことにしないのはちと、ちがうんでない? それはそれ、これはこれ。自分に言い聞かせる。
で、うちの困ったは、翌日、ガス屋さんの知識と技術のおかげで少しばかり解消された。お湯は出ないが応急処置で、追い炊き機能が使えるようになった。浴槽に水を張り追い炊き機能で沸かすのだ。湯船に浸かれはしないが、ザブザブと手桶シャワー、風呂はこれで十分のような気さえする。
10月18日、給湯器復活。
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