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オリエンテーリング専門申込サイト急成長の裏話とこれから

2016年3月から正式に運用を開始したオリエンテーリング専門の申込受付サイト「Japan-O-entrY」。

発足からわずか3年で、年間利用イベント164、のべ申込者数25000人以上手数料売上高250万円超(いずれも2019年内見込)という大きさにまで成長いたしました。

オリエンテーリングというニッチ市場でこれだけのユーザーに利用いただけたということは本当にありがたく、皆様に改めて感謝申し上げます。

本稿では、

第1章 サイトを開発した経緯

第2章 なぜ急成長を遂げることができたのか?

第3章 これからどこへむかうのか

おまけ 技術的な補足

という構成で、Japan-O-entrYのこれまでとこれからを書いてみたいと思います。それでは2019アドベントカレンダー2日目の始まり始まり~

【第1章 サイトを開発した経緯】

それは5年前の2014年1月。オリエンテーリングで申込サイトって成立しないのかな?と疑問に感じたのが始まりでした。

疑問を持つ私→ https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/593466997403368

そして2014年4月には開発の開始を正式に表明しています。早いっすね。今から考えたら競合の調査とか市場調査とか、あるいはすでにあるものを使えないかとか、もうちょっと調べろよって感じですが。なんかもう、都合の悪いところを見ないように、意地でもそこ取りに行くぞというベンチャー精神を感じます。

開発開始を表明する私→ https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/626989760717758  「Orienteering.comやMulkaに匹敵する、OL界のデファクトスタンダードにしたいと考えています。」ってこの時点で言ってます。

とはいえ、業務でのプログラミングは全くの未経験。最初はつまづきまくって、不具合の原因が分からず半日フイにすることもザラにありました。とはいえ、学生時代からプログラミングはなんとなく好きで、前職の経験からも、自分が出来ないわけがないという自信があったのは事実で、諦めずに進めることができました。

また、ちょうど当時はJOAの公認大会の存亡が話題になっていた頃だったでしょうか。「せっかく競技者登録してるのになんで毎度毎度個人情報を入力しないといけないのか」「クレジットカード決済できれば便利なのに」こういう声を多数観測し、そのたびに、やはりこのプロジェクトはやり切らねばという思いを強くできたのは大きかったです。

人々の声に勇気づけられてる私→https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/949508368465894「オリエンティアMLから始まる一連のお祭りを見て思ったことは、「エントリーサイトの開発がんばろう!!」でした。」

結婚と第1子の誕生で家にいる機会が増えたこともあって、作業時間が取れるようになり、2015年8月についに施行版をリリース

リリースに喜ぶ私→https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/893276790755719 「 エントリーシステムのリリース告知を行いましたが、安堵感ハンパないです。(中略)使ってもらえなきゃ意味がないし、いろいろと不具合・トラブルもあるかもしれない。それでも、走り始めたら何がなんでも維持していかないといけない。そういう場面に追い込むことができたということが本リリースの最大の収穫であります。」

それから、正式版リリースに向けて、既存フレームワークを利用する形式に変更して、1からプログラミングをしなおしました(このあたり、最終章「おまけ」参照です)。

しかしリリース目前の2016年4月、大問題が。

クレジットカードの審査が通らない。

JCB, American Express, Diners Clubの3者は、うちのような「CtoC」ビジネスモデルを原則受け付けておらず、門前払いだったんです。なんてこったですよ。クレジット使えなきゃサイトの魅力半減。なんでここまでがんばってきて肝心なところのリサーチ出来てなかったのかと

他にも、手数料設計でも悩んでいました https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/979627318787332

でも、幸いにして、VISAとMasterCardは利用規約の書き方を修正することでなんとか通してもらえ、晴れて正式リリースすることができました。みんな、クレジットカードを作るときはVISAかMasterCardにするんだぞ!

リリースを前にして高揚する私 https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/1002721199811277

【第2章 なぜ急成長を遂げることができたのか?

実はオリエンテーリングの世界で申込代行が試みられた例は、このサイトが初めてではありません。古くは早稲田のOBの池ヶ谷さんがインターネットもない30年前にすでに申込代行サービスを考案されていました。

池ヶ谷さんのかつての申込代行サービス→ https://www.facebook.com/tokumasa.nishimura/posts/979627318787332?comment_id=982657481817649

また、スポーツの申込代行サービスと言えば「スポーツエントリー」、ランニング大会だと「Runnet」などが有名ですが、スポーツエントリーは一時期東大大会等で利用されていた時期があるものの、年間ほんの数イベントしか使われていませんでした。

先行サービスがことごとく普及しない中、なぜJapan-O-entrYはわずか3年で急成長ができたのでしょうか?様々考えられますが、ここでは7点取り上げてみましょう。

1.申込が簡単

利用者にとってはまず「簡単である」ということが最大のメリットです。こだわったのは「会員登録をしなくても申し込むことができる」点でした。メールで申込するのに会員登録必要ないですよね。既存のシステムと比して不便になる点があったら決して浸透しないため、この仕様は絶対でした。

他にも、一度入力した個人情報は何も指示しなくとも勝手に上書きする仕様もこだわりです。

銀行の振込したあとに「この振込先情報を保存しますか?」って聞かれることありますよね。そのたびに私なんか勝手にやっといてくれよ!!って思うわけです。

もちろん一時的な変更まで保存されるのはデメリットでもあり、改善の余地がある部分でもあるのですが、それでもこのひと手間がないことは動作がとてもシンプルになります。

2.申請から受付開始までが速い

これは主催者側。スポーツエントリーを利用していた時の不満点でもあるのですが、担当者と申込仕様の打ち合わせのメールやりとりがすごく時間がかかる。それに契約書の取り交わしやらなんやら。せっかく狭い世界なのでこのあたり阿吽の呼吸でパッパッパッと進めたいわけです。

そのために導入したのが、イベントの各種設定をイベント主催者自身にやってもらうことでした。

参考:設定画面のヘルプ↓
https://japan-o-entry.com/help/event/create_all

どういう仕様で受付したいかを主催者に直接入力してもらうことで、このやりとりの時間を大幅に削減。申請から受付開始まで概ね2~3日、場合によっては即日開始ということも出来るようになりました。

これもオリエンティア(特に運営者)の情報リテラシーの高さを信頼しての仕様です。なお、この部分がややこしいと感じて離脱されることを防ぐために、要項送付で設定を管理者側で行うサービスも継続的に実施しています(導入に二の足を踏んでいる方はぜひご利用ください)。

3.大会のWebサイトを兼ねられる

通常大会の情報を告知する場合は、専用のwebサイトを立ち上げる必要がありました。しかし、このサイトでPDF等の書類を簡単に掲載することができるようになって、大会HPそのものが極端な話必要なくなりました。

もちろん大きな立派な大会だと不十分ですが、よくよく考えてみると大会のWebサイトの最小限の機能は要項とプログラムと成績を載せることだけです。この結果として省力運営で開催される大会の利用実績が大幅に上がりました。

4.当日支払の無料プラン

無料プランを用意する。まさにフリーミアムですね。ITの世界はコピーのコストが極限に小さいため、せっかくそこにソフトウェアがあるならたとえタダに近い料金でも使ってもらった方が最終的に収益が上がる、ということが良くあります。

無料プランの位置づけは2つ。まずはイベント主催者にとってのお試し。すなわち、「これ便利だな。次の大会で使ってみるか」と思ってもらうため。もう1つが参加者側の満足度向上。つまり、小さな練習会も全て申込をこのサイトに集約させることが出来ればかなり楽になりますよね。

5.団体申込対応

これは最近で一番の大改修で、システムの肝でした。特に学生クラブで、誰かが取りまとめて申込、という使われ方がとても多いです。この機能がないと主催者はExcel添付メールでの受付を斬り捨てることが出来ず、システムの本来の力が発揮できません。

6.複数イベントへの合算入金機能

これはリピーターが非常に多いという業界の特性を生かした機能です。銀行振込の場合、複数のイベントに対する入金を合算で払い込んでもOKだし、なんなら前もって振り込んでおけばプリペイドとして預けることも出来る。

毎度同じ口座、同じ入金番号で振り込むことが出来る。これも主催者の口座が都度バラバラではなく、一つに集約できるメリットを最大限発揮しています。

7.管理者がオリエンティア

最後はなんといってもこれでしょう。というか、上の6つ全部大元はこれです

どういう仕様が潜在的に求められているかを推察するうえで中に居ることは圧倒的な価値です。運用面でも、イベント設定に不備があればすぐ気付けるということ、さらに例外的なリクエストにも柔軟に応じやすいです。

やっぱり情報システムは中の人がちゃんとイニシアチブ持ってないと良いものが出来ませんよね。

【第3章 これからどこへむかうのか】

みんなが使うようになってくれると、出来ることがいっぱい出来てきます。ここではJapan-O-entrYの今後の主な方針を5点記載してみます。

1.初心者導入用記事の掲載

これは実はすでに動き始めているプロジェクトです。多くのサイトで利用してもらえるようになったことで、オリエンテーリングをしたことがない人が、初めて触れるサイトがここになる、ということが多々出てくるため、そういう場所にこそ初心者向けの記事を掲載すると大いに生きるのではないかと考えました。

オリエンテーリングの大会ってかなり特殊で、スタートの仕方、通過証明の取り方、ゴールの仕方、それぞれ初めてで直感的にわかるものではありませんよね。そのあたりを丁寧に解説する記事の置き場として、当サイトはうってつけです。

おかげさまでライターに手を上げてくれた方がいらっしゃったため、ベータ版を今年中に公開すべく進めています。

2.リレー・チーム競技対応

リレー競技やロゲイニングなどのチーム競技にはまだ正式に対応していません。やろうと思うとまた大改修になるのですが、どこかでは必ずやろうと思っています。

ついでに、大会直前のメンバー変更・オーダー登録機能もサイト内で完結させたいですよね!

3.LapCenterとランキングのコラボ

今密かにNishiPRO版の日本ランキングを作成中です。距離が決まっていないという競技の特性上、あらゆるレース結果を公平な基準でポイント化することが困難でしたが、これが少し形になり始めています。

しかしこのランキング、LapCenterに掲載されている氏名をもとに集計しているため、誤字があったり、同姓同名があったりすると正しい反映が出来ません。結婚に伴う改姓も大きな問題です。

もしJapan-O-entrYとLapCenter、そしてランキングがシステムとして裏でつながることが出来れば、そのような問題を解消することが出来ます。

ランキングって大事なんですよ。

ゲームの世界でも必ずあるじゃないですか。人間は序列化を潜在的めていて、序列が可視化され、より上を目指すことに快感を覚えるようにできています。ランキングがきちんと機能すれば、各大会に対してより強い動機で臨めるようになることでしょう。

※もっとも、ランキングの公開は消極的な人も当然いるので全公開は上位のみで、それ以外は本人しか見れないような運用にするつもりです。

参考: 「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」 佐藤 航陽

4.イベント主催者に対する「お礼」機能

主催者に対して直接感想やお礼を言う機会って案外あるようでないですよね。私も自分主催の大会が終わった後はtwitterでエゴサーチしまくって感想を集めるんですが、やっぱり直接的に暖かいメッセージを貰えるととても勇気づけられます。

そういうSNS的な機能も付けようと思えばつけられるわけです。

例えば、申込した人にあらかじめ「スター★」を一定量配っておいて、大会後、良い大会だったらその「スター★」を大会に付与し、併せてお礼のメッセージを送れるような機能を付けたらどうだろうか、と画策しています。

また、サイトの個人情報DBを使えば、主催した役員を登録することも出来るので、その役員に対して大会への参加クーポンを発行するとかいう、より即物的なサービスも可能ですね。

5.登録事務を一手に引き受け?

当初の構想でJOAの競技者登録を引き受けるという構想もありました。技術的にはもちろん可能ですし、あるいはクラブカップ7人リレーのレギュレーションの「クラブ規定」を「このサイトに登録すること」としてしまう、ということだって出来るわけです。

そこまでくれば単なる申込受付専門のECサイトの域にとどまらず、業界を支える基幹システムになります。だれがどの大会に出ているのかの統計情報を取ることが出来れば、それはかなり精度のいい購買情報になり、普及政策にも役立てることが出来るでしょう。

システムはインフラストラクチャーなのだと改めて感じるわけであります。

終わりに

開発当初、本当にいろんなことでつまづきまくっていました。本当に完成するのかと何度も思いました。稼働したら稼働したで、体調不良だろうが主催大会の最中だろうが関係なく管理業務が追っかけてきます。

でも、今こうして稼働し始めたら、私が仕事してるときも、家族と過ごしているときも、寝ているときも、ずっと働き続けてくれて、年末にドカンとボーナスを入れてくれる貴重な相棒になってくれました。

ここまで支えてくれた皆さんには本当に感謝しかありませんし、今後も必要な機能をどんどん組み込んで使われるシステムであり続けたいと考えています。今後ともJapan-O-entrYをどうぞよろしくお願いいたします。

おまけ 技術的な補足】

最後、少し技術的なこと書きます。業務プログラミング経験ゼロから商用サービスを1人で開発・運用するに至った道筋をもとに、同じようにプログラミングをやってみよう、あるいはプログラミングで身を立てようと考えてる人にとって参考になればと思います。

最初に手を出したプログラミング言語はRubyでした。Ruby on Railsというフレームワークで、Webシステムが爆速で簡単に記述できるという宣伝文句に釣られたのですが、結論から言うと挫折しました。

今思えば、Rubyのちゃんとした理解なしに、Ruby on Railsがどういう仕組みで動いているかも全く理解できずに書き方だけなぞって真似しようとしたのが間違いでした。チュートリアルの通り出来ても、そこからの応用が全く効かないんです。数学のテストを、公式の丸暗記で乗り切ろうとして、ちょっとした応用問題で手も足も出なくなる感覚と言えば伝わるでしょうか。

今考えてもRuby on Railsはやはり上級者向きです。Webシステムの基本をしっかり押さえていないと使いこなせる代物じゃないと思います。あと当時は動作も遅かったしね’(もう自分が手を出してから10年近く経ってるのでまた変わってるかもしれません)。

次に手を出したのが今使ってるPHP。これの何が良いかって、極めて単純な、プログラムとも言えないレベルのごく簡単なサイトから始められるんです。昔はセキュリティが脆弱だったりしましたが、今はそのようなごく簡単な初心者導入につかえながら本格的なオブジェクト指向機能を備えているのでとても優秀な言語だと思います。PHP7になって短縮記法も発達したので、ダサい感じもなくなりましたし、速度も速い。あと、なんといっても公式ドキュメントがしっかりしていてハマった時に抜け出すのが速いです。これ初学者にとってはめちゃんこ大事。

Japan-O-entrY試行版は、パーフェクトPHP という参考書を見ながら作りました。この参考書とても素晴らしく、Webプログラミングのフレームワークがどういう仕組みで動いてるのかを丁寧に解説し、自作フレームワークを作るというカリキュラムになっていて、これで一気に理解が進みました。

しかし、自分で書いたフレームワークだと、使いにくい場面が出てきたり、機能が不足していたり、なによりセキュリティの不安が払しょくできません。そのため、現在のJapan-O-entrYはFuelPHPというフレームワークを利用して一から書き直しました。記法がスマートで私自身とても気に入ってるフレームワークなんですが、この選択が正直ミスだった。

今もうFuelPHPは完全にオワコン化していて開発が止まってしまっています。今開発を始めるなら、もうLaravel一択か?というような状況ですよね。。開発の止まったフレームワークはセキュリティ的にもあまりよろしくないので、もう数年動向を確認しますが、システムが複雑化してきていることもあって、6000行くらい書いたソースコードですが、たぶん2~3年後にはLaravelでもう一度書き直すことになる気がします。Japan-O-entrY2.0の爆誕だ。

というわけで、私は上記のような道筋をたどりました。今だったらPythonかJavascriptから始めるのが一般的ですかね。Javascriptはあまり好きにはなれませんが。。あ、そうそう。当サイト極力Javascript使わないのもこだわりです。コテコテ使うと目にうるさい上モッサリすると思いません?やっぱ動作が速いのは大正義だと思います!

以上、ほんとにおーわり。







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