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本屋の効能

「何の本を買いに行くの?」
本屋に行くと告げた私に、彼は言った。

思いもよらぬ問いかけに、少しだけびっくりした。そうか、本屋に目的がないと行かない人もいるのか。

そういえば以前に「男は用がないと本屋に行かない」と言っていた人がいたのを思い出した。

私はそのとき、欲しい本があったわけじゃない。でもそこに行けば何かしら欲しい本があるのはわかっていた。久しぶりに近くに来たから寄りたいと思ったのだ。

SPBは駅から離れた場所にある。だからわざわざ私がその本屋に行くというからには、何か目的があると彼は思ったのだろう。

その小さな本屋には、いつもステキな本が並んでいる。流通の少ない本やジンも多い。駅前の本屋では出会えない本がたくさんあるのだ。
じっくり店内をめぐり、あれやこれやとパラパラと見て3冊の本を買った。そのとき初めて出会った本もあるし、SNS でみかけて欲しいと思っていた本も手に入れた。ああ、幸せだ。

欲しい本のほとんどはネットでも買える。だけど、本はできるだけ本屋で直接買いたい。紙の手触り、デザイン、サイズ感は実際見てみないとわからない。手にとってみるからこそ魅力が伝わる本も多いと思う。

本屋に行くと好奇心を刺激されて、気持ちが高揚して活力がみなぎってくる。行き詰まっていた仕事のアイデアも浮かんでくる。帰り道はいつも明るくて前向きになるから不思議だ。

本屋は私にとって心の栄養ドリンクなのかもしれない。

#エッセイ #本

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