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英語教育 何から始めればいい?~文字が読めるようになってきたら編~

英語の学習は早い時期から始めた方が良いとしばしば言われます。
子どもに英語をいつから習わせようか?今から学習を始めても遅いのだろうか?
こういった悩みを持っている方は多いのではないでしょうか。

これまで、初めて英語に触れる幼児向け、英語の音に慣れてきた子ども向けのおすすめ学習方法を記事にしました。
前々回は、英語の学習は、英語の音をいっぱい聞いて、日本語と違う英語の音に慣れようということ(前々回の記事はこちら)、前回は音と文字を結びつけられるようにフォニックスの練習をしようということを(前回の記事はこちら)それぞれ書きました。

今回は英語に慣れてきて、英語の文も少しずつ読めるようになってきた子ども向けのおすすめ学習方法をご紹介します。

多聴多読のすすめ

この時期におすすめの学習方法は、「とにかくたくさん英語に触れる」ことです。
たくさんの英語の文章を読んだり、たくさんの英語の音声を聞いたりすることで、とにかくインプットの量を増やすことで、英語力の向上が期待されるのです。

こうした学習方法は、多聴多読と呼ばれ、昨今、注目を浴びています。
聞き流すだけで英語が身に付くというような謳い方をしている教材なども、このような考え方に基づいているのだと思われます。

読んで聞くだけなら簡単だと思うかもしれませんが、これにもコツがあります。
大事なポイントを押さえずにやると、いくら読んでもいくら聞いても効果はあまりありません。

これから、多聴多読学習の利点と注意点をお話ししたいと思います。

多聴多読のメリット

多聴多読の学習は、文法訳読学習のアンチテーゼとして語られることが多いです。
文法訳読学習とは、文法や単語を日本語で覚え、文章を一語一語日本語に訳しながら読み進めていくという学習法です。近年まで、日本の英語教育は文法訳読法を中心に行われてきました。
しかし、文法訳読法では、英語を日本語の順番に直しすため、前に行ったり後ろに行ったりしながら英文を読む必要があるので読むのに時間がかかるし、発音やコミュニカティブな側面があまり重視されないため、実用に向かないとして、近年では学校教育でも見直されています。

一方、多聴多読による学習では、文法や単語を英語で覚えることも、英文を日本語に訳すこともしません。
そうではなく、英語を英語のまま理解し、単語や文法も、文脈の中で理解するという学習の仕方なんです。

英語を英語のまま理解する


英語を英語のまま理解するといっても、少しイメージしづらいかもしれません。

簡単に言うと、「dog」を「犬」という日本語に結び付けるのではなく、頭の中に浮かぶ犬のイメージに結び付ける。「He’s talking on the telephone.」を「彼は電話で話している」という日本語ではなく、男性が電話しているその状況と結びつける。というような感覚でしょうか。

これの何が良いかというと、英語を理解するのに日本語を介さないので訳読よりも早い時間で英語を処理できますし、いざ英語を話してみようと思った時も、自然な英語のパターンが浮かびやすくなります。
聞くことにも自然となれるので、英会話にもつなげやすいと言えるでしょう。
また、日本語が指すものと英語が指すものは厳密に一致しているわけではないので、日本語で表現できない英語の微妙なニュアンスの差とでもいうべきものも理解しやすくなります。

多聴多読の注意点

「いっぱい読んでいっぱい聞くだけ」と聞くと、とても魅力的な学習法に見える半面、本当に効果があるのかと疑念を感じる方も多いと思います。

多聴多読の学習は、実は「いっぱい読んでいっぱい聞くだけ」では効果は出ません。
注意しなければいけないコツがたくさんあるんです。

理解可能な内容であることが重要

最も重要な点として、多聴多読が、理解可能なインプットであるでなければならないということが挙げられます。
簡単に言うと、読んだり聞いたりして、おおむね内容が理解できる必要があるということです。

そもそも、なぜ多聴多読により英語力が向上するかというと、①なんとなく分かる文や単語が、似ている文にたくさん触れることによりしっかり理解できる。②知らない単語や構造を、文脈やすでに持っている知識からの推測で、なんとなく分かる状態にできる。からなんです。

ですので、多聴多読のコンテンツは自分のレベルに合ったものである必要があります。
内容の7割~9割が理解できるものを読んだり聞いたりするのが良いと推奨されることが多いですが、私の個人的感覚でいうと、純粋に読んだり聞いたりするだけのコンテンツであれば9割近く理解できるものが良いと思います。

最初は絵や動画と一緒に

ですが、特に英語をやっと覚え始めた子供などは、まだまだ語彙が少なく、文字や音だけで9割近くを理解するのはとても困難です。
そこで、アニメや絵本など、視覚的情報で理解の補助ができるコンテンツがお勧めです。
アニメや絵本であれば、文字や音で理解できない部分でも、絵や動きを見れば物語の内容がおおむね理解できます。
目で見た情報を、わずかに知っている文字や音の情報と結びつけていくことで、少しずつ少しずつ英語の知識が脳に蓄えられていくことが期待されます。

内容については、「簡易な情報が豊富」なものがいいと思います。そもそも文脈の中で英語を理解していく学習方法なので、情報量が少なすぎると英語を理解するヒントが少なくなります。
しかし、その情報が高度過ぎても、内容を理解するヒントになりづらいです。
なので、子どもでも分かりそうな身近で分かりやすい単語と、文字や音とリンクしやすい絵や動きがたくさん入っているものが良いでしょう。

ある程度語彙が増えてきたら、そのあとは使われている単語数をもとに、レベルに合ったものを選んでいくと良いと思います。
多聴多読向けの教材は使っている単語数をもとにレベル分けされているので、必ず一番レベルが低いものから始め、徐々に徐々にレベルアップさせていくと良いでしょう。
書店に行くと、今や多読のための英語の本がたくさん置いてあります。使っている単語数でレベル分けがされており、内容も多岐にわたるので、子どもから大人まで楽しく英語の本を読むことができます。

楽しく続けることが大切


多聴多読で次に注意したい点は、楽しく継続することです。

多聴多読の学習で重要なのは何といっても量です。
たくさんの英文に何度も何度も触れることで、英語の構造が脳に染み着いていくのですから、中途半端では効果がありません。
例えば、週に1回数十分といった内容では、頭に入った英語が積み重なっていく前に消え去ってしまいます。
日々コツコツ続けていくことで、量が確保されるだけでなく、1回1回の質が高まっていきます。

そこで、楽しいことが大切になってきます。
嫌々やっているとどうしても長続きしません。英語を読んだり聞いたりするのが楽しい、最低でも嫌ではないという程度でないとなかなか続きません。
なので、聞いたり読んだりする内容は興味のあるものに限りましょう。

寝る前に一冊絵本を読むとか、夕飯は英語の動画を一本見た後に食べるとか、日々の習慣にすることができるとベストですね。

少しだけアウトプットの機会も必要

多聴多読で注意したい最後のポイントは、アウトプットの機会を作ることです。

学習する言語を話したり書いたりする必要性があるのとないのでは、言語獲得の質が大きく変わってきます。
このアウトプットは少量でも構いません。
ほんの少しでも良いので英語を口に出したり書いたりする機会を設けることで、多聴多読の効果が劇的に上がります。

アウトプットの機会は意識しないと作れないものです。

英語塾や英会話スクールなどに通っているとそれが良い機会になりますね。
週に1回程度コミュニケーションに実用する機会があると、頭の中に積み重ねた知識を整理できますし、まだ知らなかった知識を得て、次のインプットに活用できるので、相乗効果が期待できます。
それに、英会話ができる講師がいればそれ自体が大量のインプットになります。身振りやしぐさ、その場の雰囲気などの様々な情報とともに英語をたくさん聞くことが、英語脳の発達につながります。
コミュニケーションはアウトプットだけでなく、最高のインプットにもなりますね。

家庭でアウトプットの機会を設けるには、お子さんに絵本の音読をしてもらうのが良いのではないでしょうか。
週に1回程度すでに読んだことのある本で構いません。
直接的にコミュニケーションにつながる訳ではありませんが、英語を声に出す機会を設けることが、インプットの効果を上げるアクセントになりますし、その後のコミュニケーションへの活用への意欲にはつながるのではないでしょうか。

家庭でのアウトプットの手段として、今はオンライン英会話も豊富にありますが、講師の英語力にムラがあるのと、画面越しでのフリートークはハードルが高く、自信を挫くことにもつながりかねないので慎重に検討した方がよさそうです。

多聴多読は完璧な学習法?

ということで、ここまで多聴多読による学習のポイントをご紹介しました。
正しく行えば効果が出るお勧めの学習方法です。

これさえやっていれば学校の勉強なんて必要ないんじゃないの?と思う方もいるかもしれません。
ですが、この学習方法が万事において完璧というわけではありません。
たくさんの事例からスキーマ化していくという学習方法であるため、教科書で説明されているような文法を100%完璧に理解できるようになるとは限りません。
後々、文法を個別に勉強して、頭の中の概念を微調整していく必要はあるでしょう。

また、母語の獲得ではコミュニケーションを通じて、五感のすべてを使って言語の感覚を身につけていくのに対し、多聴多読で用いることができるのは聴覚と視覚の一部です。
多聴多読だけでネイティブレベルになれるかというと、怪しいのではないかと思います。
やはり、言語習得においてコミュニケーションに勝る方法はないでしょう。

さらに、そもそも個人の特性によって本を読むのが好きでなかったりしたら、多聴多読は効果的ではないので、他の学習方法が必要になります。

自分に合った学習法を探すのがベスト

これをやるだけで誰でも英語ができるようになる、という方法はありません。
今回紹介した学習方法も、そのまま活用できれば良いですが、学習者の特性によって調整は必ず必要でしょう。

学習方法の根底にある考え方を理解し、自分たちに会った学習を継続していくことが、もっとも大切なことではないかと思います。

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