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小学校英語の学習内容

2020年から、小学校5・6年生で英語の授業が正式な教科として必修になりました。

年間70コマ(週2コマ程度)の授業を行い、学習内容はこれまで中学1年生の授業で扱っていた内容を含みます。

学習する単語の数は600~700語です。学習指導要領改訂前の中学英語で学習する単語数はおよそ1200語だったので、その半分と考えると随分多く思えます。

どんな学習をするのだろうか?どのように対応すればよいのだろうか?と不安に思っている方も多いと思います。

そこで、今回は小学校英語の教科書や学習指導要領をもとに、小学校英語について考えてみたいと思います。

学習指導要領で強調されていること

平成29年版の小学校英語の学習指導要領解説は付録も合わせて192ページに渡りますが、全体を通して特に強く主張されていると感じるポイントが3つあります。

それは、
①とにかく基礎をしっかり身に付けさせる。
②自分の考えや意見を英語で表明する力を身に付けさせる。
③知識の教え込みをするのではなく、言語活動の中での自然な気付きを重視する。
以上の3点です。

基礎をしっかり身に付ける

①とにかく基礎をしっかり身に付けさせる。に関して
小学校英語では、「聞く」、「読む」、「話す[やり取り]」、「話す[発表]」、「書く」の五つの領域別に目標を設定しています。

この中の、「聞く」、「読む」、「書く」の領域では、英語を学ぶ上で重要な基礎をしっかり築くことが目標にされています。
「聞く」能力に関しては、ゆっくりはっきり話されれば、簡単な英語を聞き取って理解できるようになることを目標にしています。
「読む」能力に関しては、文字の読み方を発音できるようになり、簡単な語句や表現の意味が分かるようになることが目標です。
「書く」能力に関しては、大文字と小文字の書き分けができるようになること、身近なことがらに関して、簡単な語句や表現を使って書くことができるようにすることが目標です。

どれについても、たくさんのことをできるようにするのではなく、身近にある基礎的な内容をきちんと理解できるようになることが大事だとされています。

ここには、中学英語との連結が強く意識されていると言えます。
これまでも、外国語活動という教科とは違う形で、小学校では英語の学習が行われていましたが、そこにはこんな課題がありました。
(1)音中心の小学校での学習は、文字中心の中学校での学習と結びつかない。
(2)日本語と英語の音声の違いや英語の発音と綴りの関係の理解に課題がある。
(3)より体系的な学習が必要である。

つまり、小学校で英語に触れてはいたけれど、音と文字が結びつかず、体系的な知識になっていないということです。

この反省を活かし、基礎的な内容に限定しつつ、「読む」「聞く」「書く」を体系的に学び、土台をしっかり作ろうということが企図されています。

それぞれをバラバラに身に付けるのではなく、音と文字とイメージをきちんと結びつけて、バランス良く身に付けさせようということです。

これから、中学英語がオールイングリッシュで行われるようになりますので、そのためにもこうした基礎的な能力は必須と言えるでしょう。

自分の意見を表現する


②自分の考えや意見を英語で表明する力を身に付けさせる。に関して
「読む」「聞く」「書く」に加えて、「話す」能力にも目標が定められています。
「話す」力は[やり取り]、[発表]と別れていますが、身近なことに関して指示、依頼、質問、返答ができ、自分の考えや気持ちを表現できるようにすることが目標です。

英語を使っての表現は、特に意識されています。「読む」「聞く」「書く」と比べても、一番ハードルが高い気がします。

そもそも、小学校で外国語を学習する理由として、「コミュニケーションの基礎となる資質・能力」を身に付けるためということが学習指導要領には定められています。
このコミュニケーションは、英語だけに限りません。
つまり、英語の学習を通じて、言語や文化の違いに考慮しながら、状況や場面に応じて適切なコミュニケーションを図る力を身に付けよう、というのが小学校英語の目標です。

コミュニケーション力の大前提として、意見や考えを話す力を養うことは重要なのでしょう。

言語活動の中で自然な気付きを

最後に、③知識の教え込みをするのではなく、言語活動の中での自然な気付きを重視する。に関して。

小学校英語での学習内容として、否定文、be動詞や助動詞で始まる疑問文、基本的な動名詞や動詞の過去形などが含まれています。

これまでは中学校で教えられていた内容も含んでいますが、これらに関しては、「文法事項」として取り上げて指導することはしない、という風に明記されています。
そうではなく、日常的な表現の中に現れるものとして、繰り返し触れさせることで、自然と規則性に気づいたり、構造を理解させたりすることを目標にしています。

多様な文脈の中で自然に文法を獲得していくことは言語獲得理論から見ても理想的ですが、大量の英語のインプットが必要になります。

さて、こうした学習指導要領の内容を踏まえて、小学校で使われている教科書を見ながら、どんな授業が行われるかをイメージしましょう。

小学校の教科書ってどんな感じ?

小学校英語の教科書のパターンとして、次のような構成が多いです。
まず、ひとまとまりのテーマ、例えば好きな食べ物とか、将来の夢とか、夏休みの思い出などが設定され、それに関連した単語が絵とともにずらりと並びます。
そして、テーマについての例となる文章や会話が書かれ、その後に自分の考えや気持ちを書くスペースがあります。
各テーマが一区切りしたページに、海外文化の豆知識や、アルファベットと音を結びつけるフォニックス学習用の教材がある。
このようなイメージです。

こうした教科書の内容から授業内容を推察するに、まず、関連する単語を、音を聞きながら発音し、音と文字とイメージを結びつけます。
次に、それらの単語を用いた文を実例として音を聞きながら読み、どのような文脈で使うのかを学びます。
最後に、例文の単語を入れ替えることで自分の考えを書き、クラスの皆の前で発表するというような感じでしょうか。
これとは別で、毎回の授業で少しずつフォニックスの学習をすることでしょう。

小学校英語の懸念点

上記の小学校の授業のイメージから見えてくる懸念点を書いてみます。

基礎と活用のバランス

まず、基礎的な学習と「話す」学習の比率です。
自分の意見や気持ちを表現することは、学習指導要領でも重視されていることですが、これをきちんとやろうとするととても時間がかかります。
1コマ45分の限られた時間をこれに使いすぎると、フォニックスなどの基本的でとても重要な学習がおろそかになってしまう場合も予想されます。
逆に、基本的な学習で時間を使いすぎて、自分の意見や気持ちをしっかり話す時間がなく、例文を丸写しするだけで終わってしまうというパターンも想像できます。

文法事項は身に付かない

次に、文法事項に関しては、完璧には身に付きません。過去形や疑問文にも触れますが、具体的な説明がなく、耳にしたり目にしたりする英文の量も限られているので、こうした文法的概念を形成するのは難しいでしょう。
こうした内容は、小学校で何となく頭の中にイメージを作っておき、中学校の授業で補うことになりそうです。

先生の対応力

最後に、先生の英語授業への対応力です。
小学校は教科別に先生が別れていないので、中には英語があまり得意でない先生もいることでしょう。先生方は日ごろの業務で多忙でしょうから、英語の授業にどれだけ労力を割けるかもまちまちです。
先生方も試行錯誤しながらの授業になるのは避けられません。

先取りとフォローの重要性

これらを踏まえて、ご家庭ではどんな先取りやフォローができるでしょうか。
「話す」能力のための、自分の意見や気持ちを話したりする練習は難しいかもしれません。
ですが、音と文字を結びつけるフォニックスの練習や、絵本やアニメなどを通じて英語の文脈にたくさん触れさせて、文法構造に対する気付きを与えることで、学校で行う学習をより効果的にすることもできるでしょう。

逆に、なかなか音と文字が結びついていないと感じる場合は、中学英語に備えて早めに対策を講じた方が良いかもしれません。

中学校のオールイングリッシュ授業を実のあるものにするには、小学校での基礎がとても重要です。

ご家庭でも少し意識をしながら学校英語に臨みましょう。

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