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低温調理の温度・時間を決める二つの観点

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TL;DR


魚と肉の低温調理の温度・時間はたんぱく質と殺菌が観点です
考慮すべきたんぱく質は主に3つ、ミオシン、アクチン、コラーゲン
ミオシンとアクチンは温度でコントロール、コラーゲンは時間でコントロール。殺菌は温度と時間でコントロール

はじめに

低温調理する際に、温度と時間をどのようにきめていますか?
私は、魚や肉の部位と調理方法で検索して決めていました。ただ肉の部位によっては検索がうまくヒットしない時があったので魚や肉の部位と調理方法、温度と時間の関係を調べてみました
牛タンのローストビーフ 63℃で5時間低温調理したもの同じ部位でも調理方法で異なります(例えば、リブロースのローストビーフだと60℃で3時間、ステーキだと55℃で1時間)。また同じローストビーフでもリブロースと牛タンでは温度も時間が違うようです
そこで、低温調理するときの温度・時間をどのように決めるかの観点と理由をCooking For Geek(第2版)などで調べたことをまとめました


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温度・時間をきめるときの観点


温度を決める上で重要な観点は安全性と美味しさとです
魚や肉を加熱すると弾力性が増す、肉汁がでる、うまみが増すといったことが起きます
硬くなることで食感が変わり、肉汁が出ることとパサつき、うまみは味とそれぞれの効果が美味しさに影響を与えます。これらはたんぱく質の変性/変形によるものです
また、加熱の大事な効果に食中毒の元になる菌を殺菌することです

まとめると低温調理での温度・時間を決める観点は以下の二つになります

たんぱく質の変性/変形のコントロール
殺菌

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たんぱく質の変性/変形のコントロール


魚や肉を加熱することでおきる弾力性が増す、肉汁がでる、うまみが増すといった効果をコントロールできれば自分好みの柔らかさや食感を得ることができます
そして低温調理は他の調理法よりたんぱく質の変性/変形をコントロールが容易にできます
たんぱく質の変性/変形で大きく美味しさに影響するものは以下です

・ミオシン(変性)
・アクチン(変性)
・コラーゲン(変性/変形)

この3つたんぱく質が動物の種類や部位によってことなるため、自分好みの美味しさに適した温度や時間で低温調理する必要があります
熱による変性/変形による美味しさ効果は実験によって因果関係がわかっております

・ミオシンが変性すると美味しくなる
・アクチンが変性するとパサつく
・コラーゲンは変性/変性させないと硬い、変形するとゼラチンが出る

魚は動物に比べてたんぱく質の変性温度が低いため、より低温で美味しくすることができます

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コラーゲンは、長時間かけると変性ではなくゼラチン化する。ゼラチンは料理にプルプルな食感を与えます
コラーゲンは牛すじやショートリブといった煮込み料理に使われる部位に多く含まれており、ステーキ用のリブロースやサーロインといった部位には少ないです

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豚バラなどは12時間以上必要

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牛タンも3時間以上必要

動物の種類毎の3つのたんぱく質の変性温度を表にしました

Cooking For Geek(第2版) P177抜粋

個人差はあるもののミオシンとアクチンの変性温度の間(肉だと50–66)のどこかに最適な温度があり、その温度内を維持しコラーゲンがゼラチン化する時間が必要があります
たんぱく質の変質/変形をまとめるます

魚、魚介類(イカとタコ以外)は50℃前後
塊肉は60℃前後
塊肉の部位でコラーゲンの分量と温度から時間を調整

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殺菌


加熱の最も重要な効果の一つは食中毒の元になる菌を殺菌することです
低温調理の問題として、すべての菌を滅菌する温度ではないためリスクを0にできない点があります。これが本やWebサイトで低温調理の最適な温度・時間が明確に出ていない理由の一つと考えています

正しく理解するためにも、【Anova】D値: 真空調理/低温調理の食中毒予防のための知識などを確認していただきたいのです

牛の肝臓と豚の加工品は日本の食品衛生法にて63℃で30 分間のか熱が必要と記載されています。家庭での料理に適用する法律ではありませんが家庭での低温調理をする際の基準になります

牛の肝臓又は豚の食肉の中心部の温度を63℃で30 分間以上加熱するか,又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌しなければならない。
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20150814/p1


また、食品安全委員会が家庭での食中毒対策として肉の表面を75℃で1分加熱することを推奨しています。これは低温調理後のフライパンやグリルで表面に焼き色をつけて美味しくする工程が、肉の表面の殺菌という観点も含まれているがわかります

家庭でできる食中毒予防
腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ属 菌などには75°C、1分以上の加熱
https://www.fsc.go.jp/sonota/shokutyudoku_kanetu.pdf

食中毒のリスクを下げるために温度・時間も重要ですが、新鮮な魚や肉を材料とし、清潔な調理環境をすることなど調理工程全体で対策をすることが低温調理にかぎらず重要です


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参考情報


Cooking For Geek(第2版)
家庭の低温調理 ――完璧な食事のためのモダンなテクニックと肉、魚、野菜、デザートのレシピ99
【Anova】D値: 真空調理/低温調理の食中毒予防のための知識

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