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アコギ回顧録NEW ②「激鳴り、爆鳴りって?」「セットアップ(調整)のお話」「ハカランダの一人歩き」

 ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
 その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。

「激鳴り、爆鳴りって?」
 ネット上、特にフリマサイトなどで「激鳴り」とか「爆鳴り」と言う言葉をよく目にします。どちらかと言えば素人さん(プロの売り手ではない方)が、こういった言葉をよく使われているように感じています。“よく鳴ります!“ということを伝えんがためのキャッチコピーのようなものとして使われているのだと思いますが、自分にとってこの表現はかなり違和感があります。
 全部がそうかどうかはわかりませんが、どちらかと言えばプロの方(ショップ等の業界関連の方)ほどそういう表現はされていないように思います。一般の方(素人さん)がフリマサイト等で売る場合に、そのような表現をされているのを見かけます。鳴りかたの感じ方、表現は人それぞれの感覚の問題なので、否定するつもりはないのですが「何か違うよなぁ。」と思ってしまうのです。

 自分の思う激鳴り、や爆鳴りは、「これは!!とんでもない音や~!」みたいに感じたギターにだけしか使いません。(使えません)ギターを弾き始めてかれこれ53年ほど経ちますが、そこまで思えるようなギターには数えるほどしか出会っていません。
 普段「よく鳴るギター。」という話をする場合、ほぼ間違いなく“相対的に鳴る”(価格の割にはよく鳴る、あるいは同じクラスのギターと比べてよく鳴る)ことを言っています。絶対的な音の評価でよく鳴っているモノとなると、戦前のマーチンやギブソンそれもゴールデンエラ期のものとか、ハンドメイドの最高峰と言われるSOMOGYIのアタリの個体ぐらいしか思い浮かびません。ですので、軽々しく激鳴り、爆鳴りという言葉を使ってほしくはないなと思ってしまうのです。自分で書いていながら、うまくまとめることができないな~と思っています。申し訳ありません。

 言いたかったことは、本当に激鳴り爆鳴りなら手放さないでしょ?ということでした。そんなギターを手放してしまったら、次が見つからないかもしれません。ずっと悔やみ続けることになってしまいます。

過去に自分が所有した中で、これぞ爆鳴り、激鳴りと言えるギターの一つ
SOMOGYI D-Cutaway 1987年製。今は友人が所有しています。近年のフィンガーピッキングに特化された鳴りとは全く違うサウンドを持っています。本当に「手に負えない感じ!」でした。


「セットアップ(調整)のお話」
 先日リペア職人の友人と久々に会って、セットアップの話をあれこれとしてきました。ピックアップの進化(発達)により、最近は生鳴りでそれほど大きな音量を必要としなくなってきています。そのせいかより弾きやすいようにするために、弦高を低めにセッティングする方が多いようです。
 但し、それぞれの音楽スタイルに合った適正なセッティングはあると思います。弦のテンションやカポをした時の変化も考えて調整することが必要です。何でもかんでも低ければ良い、というものではありません。弾きやすいに越したことはありませんが、自分のプレイスタイルにとってのベストは何か?ということを押さえておかないと、ある部分ではマイナスになってしまうかもしれません。
 時と場合によっては複数のサドルを作っておいて、臨機応変に使っていくのが良いと思います。湿度や気温によって微妙にネックが動きます。厳密に言えば常にギター全体が動いていると言っても過言ではありません。特にフィンガーピッキングの世界では繊細な調整が必要になるでしょう。弦の種類(ブランド)やゲージによっても、かなりフィーリング月違います。全ての条件を考慮した上で、自分にとってベストの調整ができるようにしましょう。
 他にも弦高が左右される原因になることが幾つかあります。ネックの状態やトップの膨らみです。(まれに窪んでしまうこともあるようですが)そちらが原因の場合には、サドルをどうこうする以前の話になってしまいます。常にギター全体を見て、その状態がどうであるかを見極めることが大切です。

最近のリペア 1960年のMARTIN D-18です。ブリッジのリプレイス。
サドルも象牙に変更しました。右側が元のブリッジですが、これも
オリジナルではなかったようです。

「ハカランダの一人歩き」
 今まで何度か書いてきましたが、新品のギターを含め価格の上昇が続いています。世界的なインフレで全ての資源や食糧が値上がりしている上に、急激な円安が拍車をかけています。自分の興味があるヴィンテージやハンドメイドのギターをメインに見ていますが、本当に現実味のない価格になってきました。
 特にハカランダ(ブラジリアンローズウッド)はとんでもない値段になってきています。ネットで見つけた情報をいくつか参考にしながら、自分の思うこと、感じていることを書いてみました。
最近最も驚いたのはこれです。

グレードで2種類に分けられていますが、価格の安い方で12,800ドル
高い方では16,800ドル 1ドル=150円で換算すると、
それぞれ 1,920,000円2,520,000円!!という価格になります。

 サンタクルーズのオプションですが、こんな感じです。自分の感覚では(お金に余裕があったとしても)絶対に買えない(買う気にならない)価格です。サンタクルーズは大好きなメーカーですが、さすがにここまで来ると・・・。この価格を基準に考えると、マーチンのヴィンテージがめちゃくちゃリーズナブルに感じてしまいます。サンタクルーズのオプションのハカランダがどれぐらいのグレードなのかはわかりませんが、1969年以前のマーチンのものよりも良いという想像ができないのです。
 今のところヴィンテージに関しては、アメリカよりも日本の方が安い感じがします。近い将来その差が無くなっていくのかもしれませんが、その前にアメリカから買いに入ってくる可能性もあります。いずれにしても、よほどのことがない限り価格は下がらないでしょう。この先ヴィンテージを含めグレードの高いハカランダを使ったギターは、今よりはるかに遠い存在になってしまいそうです。

 そんな流れで一番気になっていることは、本当に良いギターを求めている人が買えなくなってしまうことです。ある意味オタクの世界のお話なので、絶対数は多くはないでしょう。それでも買いたい人が買えなくなる恐れは多分にあります。自分1人がガタガタ言ったところで何の影響もないことは明白ですが、それでも何かお役に立てることがないかなといろいろ考えている今日この頃です。

最近のリペアその② Santa Cruz Custom D-45 1996年製
フレットを打ち換えました。
 バインディングのある指板にフレットを打つ場合、端の部分の処理(下側)が必要になります。
それがうまくできていなかったために、フレットの両端が浮いていました。ほとんど弾かれていなかったのでフレットの減りはありませんでしたが、思い切って交換しました。バッチリです。
サドルも象牙に交換

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
宛先 e-mail:mail@acogian.com または twitter(@acogibucho)にお願いします。

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