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雑記⑦:世界を飛び交う「不特定多数への愛」を感知できることは幸せである、という話

8月は結局一本もnoteを書かなかったため、連続投稿記録は4か月で途絶えた。どこかでは途絶えるだろうと思っていたのであまり悲しくはない。
以前どれかの雑記で話した通り、あと10日も経てば10月になり、この雑記のナンバリングも1に戻る。(正確には、「2-①」になる。第2シーズンだ。)

自分は「一度途切れたものを再開する」力に欠けており、いったん途切れてしまうと必要に迫られないと再開出来ないことが多い。そんなわけでnoteも当分は書かないのだろう、と思っていたのだが、今シーズン中にもう一度筆を執ることになった。必要に迫られたのだ。


昨日、23時すぎに、閉店間際のスーパーにご飯を買いに行った。
24時閉店のため、23時ごろには全ての弁当やお惣菜が半額になる。ちょうどこの時間におなかが空いていたなら、こんな激アツチャンスタイムを逃す手はない。

徒歩10分ほどの距離を、Anki(単語帳アプリ)を回しながら歩いた。短文基本の問題群はあまり手間取らないからありがたい。生活にAnkiが組み込まれたのはごくごく、本当にごくごく最近だ。定着するかは分からない。これも必要に迫られてのことなのだけれど、その話はまた今度。

10分で100枚を回し、何かをした気になって意気揚々とスーパーに入った。
閉店間際の店内は、人も品物もまばらだった。帰り際であろうスーツ姿の男性や、楽しげにいちゃいちゃするカップル、この近くに泊っていると思われる軽装の外国人旅行客などに紛れて、私もごはんの品定めに加わった。
予想通り全てが半額になっていた。普段は「値段の割にボリュームがなぁ」と手を出さずにいた「管理栄養士監修!」のちょっとお上品なお弁当と、それだけではやはり足りないのでいなり寿司と、あと最近あまり摂れていない自覚がある動物性たんぱく質の補充のために5個入りの唐揚げを買った。
合計してわずか600円。昨日はうっかりお昼ご飯を食べ損ねていたため、2食分と考えると非常に安い。ありがたいありがたい。

ほくほく顔でレジに向かう。私のひとつ前に並んでいたお客さんは上記のカップルで、一本のワインと、3種類ほどのおつまみ、そして1kgの氷を購入していた。これから宅飲みなのだろう。


恋愛をしている他人を羨ましく思う感情は、昨日芽生えたものでも、近年芽生えたものでもない。小学生だったころ、もっと言えば物心ついたころから、「恋愛」というものに憧れを持っている。

この憧れが嫉妬に変わることは、幸福なことに今のところなかったのだが、ここ数年は特に「諦念」が強く混ざるようになっている。昔は「いつか自分も……」と思っていたが、気づけば分厚いアクリルガラスを隔てた水槽を泳ぐ魚を見るように、手の届かない別の世界のものだと感じるようになった。

(少なくとも自分は)水族館に行って「うーん、この手がアクリルガラスを貫通したら楽しいのにな」と思うことがないのだけれど、それと同様に、今の自分は恋愛に関してアクリルガラスの外側にいることを是としている。正確には、「アクリルガラスの向こうにいけたら楽しいかもしれないけど、泳げないし、そもそもアクリルガラスを壊しちゃったら大変だよなぁ。やめておこう」となっている。

私が恋愛に対して憧れを抱いている最大の理由は、友情や家族愛とはまた違う、そこにしかない類の「特定個人への愛」が存在すると思っているからだ。これはもしかしたらそんなことはないのかもしれないのだけれど、そうであってほしいと願っている。


「自分があの類の愛を受け取ることは当分、もしかしたらずっとないんだろうなぁ」などと思いながら、何千何万と口にした「レシート大丈夫です」を口にし、するすると会計を済ませて出口へ向かった。

閉店間際の出口前には1人の警備員が立っており、よく聞き取れなかったが、「~~~、ありがとうございました。」と発声していた。呼応するように軽く頭を下げながら、「優しいな」と思った。

警備員の人は「そういう仕事だから」そう発声している。そんなことは分かっている。
そこにいたのが私だから、ではなく、店を出る客であれば誰に対してもそう発声している。そんなことは分かっている。
それでもなお、人が人に向けて放つ「ありがとうございました。」は優しいのだ。


スーパーを出ると、ちょうど雨が降り始めたところだった。

家までは徒歩10分かかる。行きは晴れていたので、傘は持ってきていない。
「どうか小雨のまま強くなりませんように」と祈って歩き始めたが、数分でそれなりに強い雨になってしまった。雨に打たれて急速に暗くなっていく服を「(今朝洗濯して)さっき乾いたばっかりなのに……」と恨めしそうに眺めつつ、風邪まで引いてしまったらたまらないと思い、足早に家を目指した。

雨の中、3つの人と出会った。
途中にある地下鉄の入口から出てきたヌッと出てきたお姉さん。入口から出て10mくらいは雨に打たれながら歩いていたが、止みそうにないな、と観念したように傘を開いた。
後ろから颯爽と抜き去っていった自転車の人。臆することなく、雨を切り裂いていった。
横断歩道を笑いながら走ってきた外国人一家。誰一人として傘を差していなかったが、誰も悲しんでいなかった。全員が雨を楽しんでいた。

私は傘も、素早い移動手段も、ともに雨に打たれて笑いあう相手も持ち合わせていなかった。
なのだけれど、それにしては気分が明るかった。普段慣れてしまって気づけないような小さな優しさに気づけたことが嬉しかったのだと思う。いつの間にか早歩きもやめており、雨に濡れるのも厭わず、その感覚を長く味わいたくてのんびり歩いて帰った。


良い夜だったと思う。忘れないために、noteに残しておく。

またいつか。


翌日追記:風邪をひいた。世界、都合悪がち。

カメラロールにあった、別の良い夜の写真。もうぼちぼちストックがない。

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