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通ったことがない、オーディションには(倒置法)

ネタ番組のみならず、若手芸人がテレビに出るためにはほとんどの場合オーディションが必要だが、表題の通り今までオーディションを通ったことが一度もない。

短いものでは2分ネタのオーディションのためにネタを考え調整し、片道1時間近くかけて会場まで行き、10分かけてメイクをし、全力で2分ネタをやりきり「はい、ありがとうございましたー」の番組スタッフさんの一言で何の手応えもなく終わる。

そりゃ肌も荒れるわ。


オーディションは「ネタ見せ」がメイン、必要であれば質疑応答があるくらいのものなので大体の場合は芸人と番組スタッフさんは必要最低限のやり取りしかしない。

聞いた話だと、スタッフさんも1日に何十組もの芸人のネタを見るのでオーディション後半は笑うどころかゾンビのような顔になるらしい。

ただ1度だけ、オーディションでとんでもなくウケたことがある。

オーディション会場に入るとスタッフさん数人の中に昔番組でお世話になったことがあるスタッフさんがいた。

その瞬間から空気が和らぎ、ネタが始まると最初から最後までウケっぱなしだった。

ほくほくの顔で会場を出ると外で待機していた先輩芸人に「外にも笑い声が聞こえてきた、オーディションでこんなにウケてるのは初めてだ」と言われ更にご機嫌になった。

控室で帰りの支度をしていると先ほどのお世話になったスタッフさんがわざわざ控室まで来てくれ「元気そうでよかった、またよろしくね」と声をかけてくれ、僕は清々しい疲労感と共に帰路へ着いたのだ。

その番組からまだ連絡は来ていない。


オーディションに受からない理由はなんとなくわかっている。

僕のネタは番組スタッフさんや作家さんにとって「よくわからない」のだ。

初めてネタ番組に呼ばれた時、オーディションが無かったのでスタッフさんになぜ自分を使ってくれたのか聞いてみた。

そのスタッフさんは以前僕が出ているライブをたまたま見に来ていたらしく「正直よくわからなかった、でもお客さんが笑っていたから使ってみようと思った」と答えてくれた。

あるオーディションでは「キレが良すぎて真似できない」と言われた。

オーディションではないがこんなこともあった。

ライブでユニットコントを作ることになり、僕が出演者のセリフや照明・音響のきっかけを口で説明し、それを後輩の作家さんがパソコンで台本に起こしてくれていた。

しばらくすると後輩はパソコンを打つ手を止め頭を抱え「なんだこれは!」と叫んだ。


一般的なネタ、お笑いは「フリ、ボケ、ツッコミ」に対し僕は「ロマンティック、歌、ダンス」なのだからよくわからないという気持ちはよくわかる。

ましてやそんなネタをお客さんのいないオーディション会場で見せられたら不安どころか恐怖を感じたっておかしくはない。

もしその時スタッフさんに「おもしろい」と思ってもらえても「視聴者は笑うだろうか」という不安要素が出てくるのだろう。

「それならわかりやすい構成でネタを考えてスタッフさんが安心して見れるようなネタを作ればいいじゃないか」という人もいるだろう。

それができたらもっとテレビ出てるってばよ。


ちなみにテレビ以外のオーディションも通ったことがない。

それでも腐らずに芸人を続けられている話はまた次回に。

(自分の名誉のために言わせていただくが、僕の記憶が確かなら先述の初ネタ番組もユニットコントもちゃんとウケたしネタはめちゃくちゃ真似された、以上過去の栄光終わり)


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