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クマのプーさんとわたし

A.A.ミルンの「クマのプーさん」が大好きで、小学生のころ、繰り返し何度も読みました。

本との出会いって不思議なもので、内容が分からなくても、縁のある本って本屋さんに行くとパッと目に飛び込んでくることがあるものです。
わたしにとって、「クマのプーさん」は、そのような本のひとつでした。
石井桃子さんの素晴らしい訳でのおはなしもそうですが、E.H.シェパードさんの挿絵も大好きで、挿絵に惹かれてプーさんの本に手が伸びたのかもしれません。

あまりにも何度も読んだせいか、わたしの心の中にはプーがそのまま生き続けていたような気がします。
話しが逸れますが、村上春樹さんの小説の羊男とか騎士団長とか、架空なのに、なぜかその存在がありありと感じられることってあるものですよね?

先日、知り合いのオージー(クリストファー・ロビンと同じ名前のクリス)から、US TWOという、A.A.ミルンの詩の一部が送られてきました。

Wherever I am, there’s always Pooh,
There’s always Pooh and Me.
Whatever I do, he wants to do,
“Where are you going today?” says Pooh:
“Well, that’s very odd ‘cos I was too.
Let’s go together,” says Pooh, says he.
“Let’s go together,” says Pooh.

この詩を読むと、プーといつも一緒にいる少年の心情が手に取るように伝わってきます。
そして、なぜかちょっと哀しいような気持ちになるのです。
あえて言うなら、幼少期に感じていた魂のようなものを思い出すのです。
それはとても懐かしい感覚です。

こどものころ仲良くしていたぬいぐるみとの交流は、永遠に心の中のどこかにしまわれているのかもしれません。
寂しいとき、悲しい時、自分の思い通りにならないとき、一緒にいたぬいぐるみがわたしたちを癒してくれたように、おとなになっても空想の世界は残っているのですね。

わたしは仲良しのテディベアは持っていなかったけれど、プーさんのお話が心に刻まれて、その存在はいつも傍らにいたような気がします。

それで、なんとなくA.A.ミルンのことを調べていたら、彼がケンブリッジ大学出身ということがわかりました。
びっくりしたのが、わたしがウン十年前に初めて行った外国が、イギリスのケンブリッジ大学のすぐそばでのホームスティだったことです。
当時は、観光客はあまりいなくて、田園風景の中の道を馬に乗った人が散歩していたり、郊外へ行くと白鳥が泳いでいる池や、小さな古い教会があって、シェパードさんの挿絵と同じ空気感を感じました。
もちろん、ケンブリッジ大学のトリニティカレッジの庭にもよく行きました。A.A.ミルンの出身のコレッジです。
そして、そのトリニティカレッジの図書館にプーさんの原稿が保管してあることも今、知りました。

当時、わたしは「クマのプーさん」が好きだからケンブリッジに行ったわけではなく、成り行きで行ったのです。
ケンブリッジの街中の雑貨屋さんに行くと、プーさんグッズが沢山売られていて、私は便せんとかショップバッグとかいろいろ買いました。
でも、当時はクマのプーさんとケンブリッジの縁を知らず、イギリスだからプーさんグッズが売ってるんだな、くらいしか思ってなかったのです。

今回気づいた偶然のできごとで、こどものころの空想の世界は何かを引き寄せているような気がしてきました。
つまり、空想の世界が現実と呼応しているような気がするのです。
だから、こどものころに読んだおはなしの世界に、たまには身をゆだねてみるのも良いかもしれません。
その中で、こどもの頃の心情を思い出したり、空想の世界にひたる喜びを感じたら、自分の根っこみたいなものを見つけられることもあるでしょう。
それが、どんな風に自分の人生に現れてくるのか、ちょっと楽しみでもあります。

※写真はケンブリッジで買ったプーさんの便せんと、トリニティカレッジのスケッチのカード



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