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「進研ゼミでやったところだ!」現象

過去に経験した何かに遭遇したときに発する、万人共通のフレーズがある。

それは、「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」である

元ネタは、各家庭や学校に届く、進研ゼミのダイレクトレターに同封されている漫画である。内容はその時々によって変わるが、大筋は勉強が苦手な主人公が進研ゼミで学ぶことによって成績が上がり、人生が好転していくというストーリー。

こういうの、見覚えありません??笑

その際に主人公が言うセリフが決まって「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」だった。そのセリフがネットでバズを起こした。

ベタで、オチも大体わかるんだけど、つい見ちゃう漫画だったなあ。
実際、純粋だったころの私は「へぇ!進研ゼミってすごいんだ!!」と感じて、両親に進研ゼミの定期購読をお願いしたこともあるくらい。

「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」という言葉。

今ではネタとして使われることが多いのだが、勉強のみならず、スポーツにも必要な感覚のように思う。

すべての練習は「予習」である。きたる試合での局面に対して、最適解を提示できるようにするために練習する。
ブロックが来そう→バックシュートをする
スティールを狙ってきた→ビハインドでかわす
ドライブが得意な選手がいる→ヘルプ&ローテをする
といった具合だ。

試合では予測不能なことが多いといわれる。
だが、練習でその予測不能なことを、最大限予測しながらプレーしていたら?

「あっ、これ知ってる。練習した!真剣ゼミでやったのと同じじゃん!」となるわけだ。そうなればあとは練習通りのアクションを起こすのみ。焦りも、緊張もいらない。

試合中での『進研ゼミでやったところだ現象』は多ければ多いほど良い。レブロンの余裕を見ていればわかる。
「ああ、守り方はそういう感じね」って具合に、大した力みもなく試合を進める。

「うわああ!な、なにこれ!初めて見た問題だ!どうしよう、どうしよう😵😵😵」

と慌てふためくレブロンは見たことがないでしょう?「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」だらけなんだろう。


レブロンと同様、日本代表が戦ったスロベニアのルカ・ドンチッチも異常な落ち着きを見せる。

ルカ・ドンチッチは生後7ヶ月のときにバスケットボールに触れ、1歳の頃にはおもちゃのゴールでよく遊んでいたという。

ドンチッチは「後出しの天才」とも呼ばれ、あらゆるディフェンスに対しても最適解を提示し続けることができる。

どうしてそんなに落ち着いてプレーできるんだろう。

テストでは、
全くやったことない・知らない問題には対処が難しくなる。
逆に、やったことある・知っている問題には対処が簡単になる。

スポーツにおいても同じである。

練習したことないものには、対処が難しくなるし、
練習したことのあるものには対処が簡単になる。

きっと、そういうことだ。
ドンチッチはたくさんの敵と戦い、たくさんの練習をし、たくさんの情報に触れてきた。

あらゆるディフェンスに対してその場で後出しできるということは、「出す手札の用意ができている」と言うこと。出す手札の用意ができているということは、そのような場面の練習をたくさんしてきたということである。

学生には身近で、多くの大人が経験してきた「オールコートプレス」を例に挙げよう。

オールコートプレスをされたことが無い選手は、焦って簡単にターンオーバーしてしまう。強豪校にオールコートプレスを受けてアワアワしてしまうのはよく見る状況だ。

オールコートプレスは経験したことが無いと、技術的にも心理的にも適応できない。出す手札が分からないし、「あっ、これ進研ゼミでやったところだ!」という余裕も自信も持てない。

この論理でいうと、ドンチッチでも昔はオールコートプレスで泣くほど痛い目を見てきたはず。ターンオーバーしまくって、落ち込んだことがあるはず。まあ、まったく想像できない。

同じチーム、同じ練習をしていても、『進研ゼミでやったところだ現象』が起きる選手と起きない選手に分かれていく。

ただのドリルでも、そこに本当に敵がいるとイメージしながら練習しているか。ただのフリースローの練習でも、「これを外したら負ける」という緊張感を持って練習しているか。
その内的なクオリティの差が大きいのだろう。

練習試合では『進研ゼミでやったところだ現象』が起こるけど、公式戦になるとそれが起きないことがある。

強い相手や、公式戦になると心理的なストレスが大きく増す。このストレスが、正常な認知・判断を狂わせる。

「バスケは経験の数がものをいう」とは言うけれど、公式戦の数は限られてる。高校生なんて、県大会が大きく4つ程度しかない。その中で自分が主力となってプレーに絡める試合が無数にあるだろうか。きっとそうではない。

掴んだチャンスで結果を出すためには、日々の練習を自分自身のフィルターで「公式戦そのもの」に映し出すしかないのだ。たった1つのドリルでも、気持ちを込めて行わないといけない。

毎日淡々とドリルをこなし、毎日慣れた相手と慣れた戦術でプレーしていてはだめなはずなのだ。色んな相手に色んな方法でボコボコにされている状況の方が健全なのだ。

「楽あれば苦あり。苦あれば楽あり。」



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