スマホ・AI時代で、スポーツ指導者の心構えは何が正解か
以前、Z世代に関するツイートをした。
現在、私が関わっているチームの指導対象はいわゆる「Z世代」にあたる。
①いまの時代の学び方
Z世代はデジタルネイティブな世代で、スマホを扱い慣れている。そのため、彼らは「自分の課題を自分で解決するための要素」をたくさん持ち合わせている。ネットを使えば、簡単にシュートの技術を学べる。YouTubeを使えば、ドリブルの自主練方法を学べる。Twitterを使えば、論理的な情報が言語化されたチーム戦術を学べる。
スマホをひらけばそこにはたくさんの答えやヒントが隠れている。
自分がバスケを始めた18年前には考えられなかった。
NBAのハイライトも、DVDを通して見ていた時代。携帯はガラケー。携帯を通してYouTubeが見れるなんて考えてもみなかった。
スポーツの技術は所属チームの指導者から学ぶのが一般的であった。指導者が絶対であり、その方から情報を得ないとなかなか新たな情報が自分に蓄積されなかった。
けど今は違う。
別に、自分のチームの指導者の方がバスケに詳しくなくとも、技術の知識はスマホを通して蓄積できる。できてしまう。
そう考えたら、今と昔じゃ指導者の存在価値は違うはず。
改めて考える。「じゃあ今現在、指導者って何のためにいるんだ?」
②オフラインとオンライン
この問題を再考する際に鍵となるのは指導対象の学びの方法である。
今でいうと、大きく2通りに分けることができる。
スマホ(オンライン)での学び、実際の現場(オフライン)での学びである。
私が小学校の頃は一切オンラインでの学びは無かったのかというとそうではない。前述の通り、DVDは私の小学校の頃には主流となっていたため、DVDを通してNBA選手のプレーを見ることはできていた。時代が進むにつれ、オフライン中心の学びからオンライン中心の学びになってきたことを再確認したい。
この2つの学びの方法において、選手にとって違うことは何か。
それは「直接自分を見てくれているかどうか」である。
スマホで学んだ場合は当然、その指導対象を肉眼で捉えてから話している内容ではないため、その指導が指導対象に"ハマる内容"では無い場合がある。「動画で見たやつを見よう見まねでやってみたけど、なんか上手くいかない」なんてことはよくある話だ。
その点、現場での指導においては、その指導対象を肉眼で捉えてから直接指導できる。するとどうか。その指導対象のニーズに合った個別的な指導が可能になる。修正点も、第三者が見てくれるだけで明確になりやすい。指導者に的確な観察力と分析力が備わっていた場合、指導対象に"ハマる内容"を提示できる可能性がある。
③「最高級の魚料理」を用意する
こちらが一方的に情報を与えなくとも、Z世代の人は情報収集できるし、日々情報収集している。
その事実を踏まえると、指導者とは、その選手が1人で行き詰った時や方向が逸れたときに、肉眼で捉えた情報をもとに、彼らを正しく修正する役割を持つのではなかろうか。それは技術のみならず、マインドセットや、組織論も含め。
ただ、そんなことは昔の指導者もやっていたこと。
スマホやAIが台頭する時代に生きる指導者が存在する価値は、従来の役割に加え、「スマホには無い知恵」を提供することにあると思う。
一般論だけで語らず、どれだけ目の前の対象に"ハマる"内容を提示できるか。スマホには書かれてない、スマホでは語られないことをいかにダイレクトに指導対象に浸透させるか。「こんな話聞いたことない!」ということをいかにその指導対象のニーズに沿って伝えられるか。
つまりは、「強豪校がやってるから、この練習をやる」とか、「NBA選手の〇〇がやってるから、この方法をやってみよう」といった短絡的な物事の考え方では意味を成さないと言うこと。そんなこと、指導者がいなくとも選手だけでできるからだ。
この失敗は過去の私にある。指導を始めた当初は「強豪校がやっていること」「あの指導者が言っていたこと」を神格化し、そのまま選手たちに提供していた。今思えば、目の前の選手たちに全く合っていなかった。言うならば、和食を食べたいと言っている人に、「俺は中華料理が美味しいと思う」という理由だけで中華料理を食べさせていた。やはり、その選手たちには中華料理はハマらなかった。確かに中華料理は美味しいのだが、その選手たちにもニーズがあるということを忘れてはならない。和食の中でも、どんな和食が食べたいかを聞き、魚料理が食べたいと答えれば、相手の好みに合わせたオリジナルの最高級の魚料理を提供することが指導者の役割である。
その練習をやる意味、その情報を与える意味を自分なりに考察して、必要であればアレンジして提供する。
それこそが今後を生きていく指導者にとって必要なことなのかもしれない。
④引き出しを用意しておくこと
"Z世代"たちはこちらがなにかアクションを起こさなくとも学びを続けられる。冒頭に書いたが、スマホを開けばたくさんの情報が手に入るため、勝手に好奇心は刺激される。
「スマホには無い知恵の提供」と先ほどは結論づけたものの、こんな時代だからこそオーバーコーチングには留意しないといけない。『スマホで得た学び+指導者が提供する情報』が膨大な量のデータになる危険性がある。処理しきれないデータ量は選手をパンクさせる。
大切なのはその指導対象が「〇〇はどうしたらいいですか」と聞かれた時に的確に答えられるよう、引き出しをたくさん用意することだ。
相手が「あっ、これはスマホには無い情報だ」と感じればまた聞きにくるはずで、そのような能動的な学びの姿勢なときほど選手は伸びる。
コーチとして「100%こうだ」と言い切れるような準備をしておく。この世に絶対なんてものは存在しないと私は考えているが、それでも答えを求められれば「こうかもしれないね」よりも「絶対こうだから自信を持ってやってみよう」と伝えられる準備をしておく。
「北海道に行きたい」と言われた時に、
「新幹線に乗ればすぐ着くよ」と言うのではなく、
「今君は〇〇にいるから、〇月〇日の〇〇の電車に乗れば、〇〇に到着するはず。そこから〇〇に乗り換えて1時間ほど経てば北海道に到着するよ」と明確かつ具体的に答えられる準備を日頃から行うこと。
選手がヒントや答えを能動的に求めた際、即座に個人に合った情報提供ができる。そのために日頃から指導対象をよく観察し、分析する。それこそが学びの多様化した現代の指導者に一番求められることではないかと、自戒を込めて、今現在の私は結論づけた。
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今回はサッカーの中西哲生さんのお話を聞いた上でこのnoteを書いた。中西さんは素敵な指導者。
今回はオンラインとオフラインの学びの違いに焦点を当て、指導法について再考した。指導者の役割は学びを与えることだけでなく、練習試合相手の設定や、遠征の調整、栄養管理など、挙げればきりはない。素晴らしい対戦相手を用意することももちろん指導者の仕事の1つと言える。その前提を踏まえた上で今回はこのようなテーマとした。
もちろん、こちらに書かれていること全てを私が遂行できているわけでは無い。まだまだ引き出し不足で、言語化力も低い。
けれど、自分も"Z世代"だ。たくさんのツールから情報を収集し、発信できるはず。続けて続けて、自分の関わる指導対象の可能性を最大化できるよう努めていきたい。
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ちなみにたが、この文章はChatGPTに添削してもらった。
すごくないか。感動した。今後もお世話になります。
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