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江戸の鰻屋台

頭がおかしくなったのだろうか。

 ここ数日、夜な夜な味醂のことを考え過ぎて寝つきが悪くなる。

 まず、整理して考える。

 鰻の蒲焼きは江戸の屋台料理から始まった。

 鰻の蒲焼きには濃口しょうゆ、味醂などを混ぜて煮詰めたタレを使う。

 僕は『鰻の蒲焼き』を江戸のスターにのし上げたのは『味醂』の功績だと考えている。
 
 鰻職人の屋台成功の鍵は、いかにして江戸の町に『あの芳ばしい蒲焼き風味』を団扇で仰ぎ叩きだすようにして漂わせるのかという事だ。

 この薫りこそが店の看板代わりなのだ。

 実際に検証してみたが、濃口しょうゆを煮詰め焦がした風味と、醤油と味醂を煮詰めて焦がしたもの。

 その二つを比較してみると、もう薫りは圧倒的に違う。
 
 肉体労働が中心の江戸の男達は、自然に甘さを欲する。塩分を伴う旨味に味醂を足したほうが断然に好みの薫りだった筈なのだ。

 (当時、江戸中期から後期の上方では、味醂を使った蒲焼きは発展していなかった!)

 屋台から芳ばしく焼けて漂う『甘しょっぱい』蒲焼きの風味に、江戸っ子は自然に引き寄せられたはずなのだ。



 こんな事をムキになって考え込んでしまう。

 そんな事を考え続けて何の足しになる?
 俺のバカ!バカ!バカ!という時も無いでもない。

 でも僕は、そんな江戸風情を想像して頂きながら鰻や穴子で日本酒を嗜んで欲しいと思っている。

 そうだ!そうそう!これを考えながら、僕は宮島の穴子めしを食べに行ったのだった。

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