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江戸情緒の味噌文化

【書けなかったこの2年間のこと⑤】

 2ヶ月間の発酵旅を終えた僕は、東京にある『味噌、醤油』の老舗販売店を毎日徹底的に訪ね歩いた。

 そして亀戸にある『佐野みそ』はやっぱり凄かった。この店で味噌醤油の世界に触れたいと思った。

昭和9年の老舗『佐野味噌』は、亀戸駅から徒歩5分ほど。

 絶え間ない来客相手に粋に、手際よく味噌を量り売る、江戸の繁盛店さながらの光景を体現出来る。

 右手に、しゃもじ、左手に、へらを持って味噌を桶に移し換え、富士山型に美しく盛る風情は江戸っ子そのものだった。

佐野味噌さんに入ると味噌富士山のこの光景。
スタッフさんの味噌さばきに見惚れる、これはもう江戸観光に近いものがある。

80種類もの味噌の違いを流暢に説明するスタッフさんも凄かった。

 身体の事情を理解して頂き、佐野味噌で働き出した僕は、出勤前に近くの公園で『しゃもじとへら』を持って砂を美しい富士山型に仕上げる練習をした。

 砂場の子供達とそのお母さんに怪しまれない様に『これは砂アート』なのだと説明した。

 砂場に居合わせた子供に、しゃもじとへらを奪われて押し問答になった事もあった。

 けれど毎日、砂場に出没する僕を怪しく見たのか、やがて公園の砂場から子供達とその親御さんの姿が消えていった。

この佐野味噌さんの近所の公園で『砂の富士山』を作った。
鳩のおじさんと友達になった。

しかし、その代わりに『佐野味噌ご常連のお爺さん達』(公園で鳩に餌をやる人)が僕の事情を知って毎日やって来たのであった。

【※僕はもう佐野味噌さんにはいませんが、是非ご来店ください。素晴らしいお店です。】

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