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鯵の囁き

先日、僕は合羽橋の専門店のご丁寧なアドバイスのもと包丁を新調した。

毎度、魚屋さんで『あら』を分けてもらっているが、どうせなら自分で三枚おろしするのがいい。

『鯵のあら』は鮮度良ければ、さっぱりした味噌汁の出汁になり、刺身も美味しくお得な魚だ。

そんな鯵は頭を落とそうとした時、きまって口がわずかにパクッとあく。

もしかして命絶えたはずの鯵が僕に何かを伝えたがっているのか?
僕はそれが無性に気になる。

鯵は『母ちゃん』と言ったのかも知れない。

あるいは一緒に網にかかった仲間の名を叫んだのかも知れない。

もしも、その仲間の名が『ニモ』だったら僕は世界中の子供達を悲しませ、それからディズニーに袋叩きにされるだろう。

でもしかしである。
人間は魚の身だけ食べて、あらを捨ててしまう。

そうすると魚の50%は捨てる事になり、東京ドーム何個分か知らんけど、えっらい出汁フードロスになるのである。

鯵は僕に謎のメッセージを呟き続け、僕は鯵にそっと耳を傾ける。

分かる事より分かろうとする気持が大切。なんにせよ霊視能力なくてよかったー!

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