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琵琶湖

『美味しい鮒鮓』とは、いかに食指をそそる発酵臭と熟れ味に仕上げるかという事。

 昔は各家庭のお母さんが手塩にかけて振る舞う『ハレの日のごちそう』だったのだ。

 『鮒鮓』を通して子供達や、お父さん達は、お袋の味自慢をしあったのだろうか。
 (仕込みの煩雑さと、発酵時期の長さからお袋の個性が表れやすい。)

僕の個人的な意見だけど『鮒鮓と日本酒の相性』は、型にはめるものではない。
 『鮒鮓』は、酸の旨味
 『旬の佃煮』は、甘の旨味
 『近江の米味噌』は、塩の旨味
 この要素の揃い踏みが、滋賀の地酒にとって最高の晴れ舞台になる。

 口の中でいく通りにも混じり合う、これら風土のハーモニーこそ、呑み手に委ねられるべき愉しみだと思う

 などの色々を想像しながら、僕は毎日ホテルの部屋で鮒鮓と味噌と旬の佃煮を頂いている。

 きっとホテルの清掃員の方は連日、部屋に残された艶かしい臭気に『何かの事件』を感じ取っているに違いない。



 しかし『本当の事件』は開封した鮒鮓と、各種お味噌と、その他発酵食品がギッシリ詰まった僕のトランクの中の臭気なのであった。

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