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コロナ禍でのデフレとインフレ

2020年3月11日、新型コロナウィルスによるパンデミック宣言がWHOにより行われた。

世界経済は大きく動揺し、3月11日より金価格さえも大きく下落することになる。それまで1,650ドル超で推移していた金が12日には1,570ドルと大幅に下落し、3月16日~3月20日と1,500ドルを割った。しかし、幸いなことに金は一時的な下落にとどまり、5月現在では安定傾向にある。

金先物

それに反して、大幅な下落が続いているのが原油価格である。3月16日に30ドルを切った原油先物価格は、4月20日に初のマイナスという前代未聞の価格を付けた。翌日には値をある程度戻したものの、5月7日現在も20ドル前半を推移している。

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この前代未聞の原油のマイナス価格は、コロナ禍により自粛や規制が続く中で世界的に原油の需要が減少し、在庫貯蔵が溢れる中で、その貯蔵能力が限界に達したため起こった現象であると言われている。購入側にとっても更なる売却先の当てがないため、保管コストがかかり、いくら価格が下がっても購入動機に繋がらなかったというのだ。

商品先物取引においては単純な需要と供給では計り知れないことも多い。コロナ禍だけではない災厄(東アフリカ発の蝗害、オーストラリア・ベトナムの干ばつ等)によって世界的食糧危機が懸念される中、意外にも米小麦価格は安定的だ。

小麦

スーパーマーケットではパスタが無くなり、小麦粉が手に入りにくくなる中、原料価格が高騰していないのは2つの理由があるだろう。

1つは、コロナの見通しが不明で、この物不足がいつまで続くか分からないことだとろう。またもう1つは今年災厄にあっている各国が世界の小麦生産に与える影響が微小であるせいであるだろう。例えば干ばつによる農産物の被害が深刻なオーストラリアであるが、世界的な輸出量に占める割合は4%にしか過ぎない。

デフレの波は意外なところにもあった。ネット広告単価の下落だ。コロナ禍において巣ごもり需要によりネットの閲覧数は飛躍的に伸びたが、広告主の出稿控えにより、広告単価の下落が生じたのだ。

例えばFACEBOOK広告では2月に6ドルだったCPCが、3月に入り大幅に下落し、最終的に3分の1近くまでなった。

ではインフレについてはどうだろうか。各国が規制を行う中で、輸出にも影響が出るようになった。特に影響が大きかったのは中国とインドだろう。中国からのマスク輸出規制が影響し、世界的にマスクの価格が高騰したが、高騰したのはマスクだけではない。工事用の中国製品なども輸出規制に引っかかり、建築業界では大騒ぎになっていた。

特にトイレの高騰がすさまじく、仕入れ価格が2~3倍に跳ね上がっていると建築関係者は言う。

しかし、コロナ禍の中でのインフレは、まだ本性を表しているとは言えない。輸入関係者は「解除後」について恐れている。コロナ禍の規制の中での需要に比べ、規制解除後の需要はその何倍にも膨れ上がる。その時、本当のインフレが起こるというのだ。

例えば、あるカレー店はスパイスの価格高騰について懸念している。インドが輸出制限を開始してすでに1か月以上が経過した。現在は数か月分のスパイスを所持している上、営業縮小により消費量も減っているが、規制解除後、全世界的に消費量が飛躍的に跳ね上がるタイミングで本当のインフレが起こるというのだ。

FRBもコロナ後のインフレを懸念している。同様の意見は英経済学者も述べており、さらにスタグフレーションを懸念している

多くの資材を輸入に頼る日本において、本当の危機はコロナ後に起こるのかもしれない。

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