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なぜVHSっぽい映像にこだわるのか?これまで、これから。

フィルムエストの映像を見ても、「懐かしさ」を感じたことはさほどありません。

90年代半ばに生まれた私。
物心ついたころ、録画手段はVHSからDVDに取って代わられていました。しかも、その数年後にはHDDに保存する時代へシフトしていきます。

フィルムエストが再現する「VHS録画」という手段を、私自身がほとんど経験せずに生きてきたのです。「懐かしさをあまり感じない」のは、当然ともいえるわけです。

それでも、VHSに録画されたような映像にこだわる理由。それは、私にとって〝全く新しい世界〟だったからです。

私が中学生、そして高校生のころにドはまってしまったもの…それが80~90年代のテレビ番組でした。

知らないタレント同士が
知らない話題で盛り上がっていたり、

見たことないリポーターが
番組内で熱狂的な支持を得ていたり、

衝撃的なロケや演出を
平然とやってのけていたり、

今では当たり前とされる情報が
眉唾物として取り上げられていたり…

そんなパラレルワールドのような世界につきものだったのが、あの〝VHS感〟だったのです。

当時中学生だった私は、その〝全く新しい世界〟とモロにぶつかり、出会ってしまったのです。しかも、テレビではない場所で。

しだいに私は〝VHSに録画された世界を自分で作ってみたい〟と思うようになりました。

◆◆◆

はじめて作ったのは、2016年12月9日。
昭和50年代のローカルニュース番組のオープニングを模したものです。

ニュースライン「桐島逮捕」
桐島って誰?

VHS風の加工方法が今とは異なっているのが、なんとなくうかがえます。
この〝タイムマシンにかける作業〟の試行錯誤は、ここから3年ほど続くことになります。

「トレンチ秋ちゃん」初お目見え

2019年4月
グリッジ加工が流行りだした影響をモロに受けた手法になっています。試行錯誤の様子がうかがえます。

この間に、「VHSっぽい映像」を簡単に再現できるアプリも登場していました。しかし、単にフィルタをかけたものでは、画質の劣化具合(大袈裟な劣化)に納得できなかったことや、映像の奥行きが潰れてしまうことから、最後まで自分で再現することにこだわり続けました。

リアルナイトかんさいOP

2019年7月26日
「リアルナイトかんさい」という架空の情報番組のオープニングタイトルを製作しました。今の手法にかなり近づいてきました。


そして2019年12月2日——。

「今週のヘッドライン」

この映像を作ったときのメモに、こんな文章が残っていました。

VHS時代の表現方法もこれで一応の結論をみてしまった気がするな
個人用Instagramから

ようやく、腑に落ちる「VHSっぽい映像」を作ることに成功したのです。

大学生から就活を経て、拠点を東京に移し、ようやく仕事が板についたころ。実に3年を要しました。



(3年かけることではない!!)



目標を達成した私は、「VHSっぽい映像」のさらなる展開を考えていましたが、しっくりくる活用方法がどうにも思いつかず、関心を失いつつありました。


そんな矢先にやってきたのが、
新型コロナウイルスでした。


リモートワークが声高に叫ばれるなか、どうも響きが古臭い「テレワーク」というワード。そこでひらめいたのが、バブル期っぽいテレワークロゴでした。

何をツイートしても、どんな動画を上げ続けても、ずっと日が当たらなかった私に、小さなスポットライトを当てていただいたのが、このツイートでした。なりやまない通知、リプや引用RTがどんどん増えてゆく…1万リツイート・2万いいね。

それは、「私が追い続けてきた世界観と、本来交わるはずのない現代社会が融合したら面白いのでは?」と気付いた瞬間でした。

VHSに録画されて残っていた…という設定の「テレワークCM」が完成するまでに、そう時間はかかりませんでした。

◆◆◆

「フィルムエスト」チャンネル開設から8年。
当初はVHSなチャンネルではありませんでしたが、一貫して私がやりたいと思っていること。
それは、映像を通して人に夢を見せたいということです。

不思議な世界に迷い込んだような、私が中学生の時に感じた〝あの感覚〟を、多くの人に追体験してもらいたい。そして、一緒に楽しんでみたい。

そんな思いが、いまのフィルムエストの原動力となっています。

「フィルムエスト」という謎すぎるチャンネルが目指すところを、最近になってようやく、私自身が理解できるようになってきた気がします。
なんだかおかしな話ですが。


そのうえで、私が今後目指したい映像は、
コミュニケーションする映像を作ることです。


自分が作ったもので笑ってくれたり、一緒になって考えてもらえたり、面白がって遊んでくれたりするのは、いくつになってもやっぱり嬉しいものです。


一人でレゴを組み立てるように
作品をつくるのではなくて、

いろんな人と
コミュニケーションをとりながら
映像を作って、

つくった映像が
またコミュニケーションを始める…
そんな映像が作れるようになりたいです。


いつか、フィルムエストが本業になったらいいのになあ、なんて思います。



なんでもない日の、決意表明でした

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