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南の国でも田舎を求める

私の普段の住まいは、日本でいう渋谷区のタワマンみたいな場所である。ゴミはいつでも出せるし、家の設備もほとんど日本と変わらない。逆に片側2車線の大きい道路に面している為、外が埃っぽい。だから、部屋の窓を開けられないし、外で洗濯物を干せない、夜でも基本明るい、車の音がうるさい点が難点である。

私がスリランカでの自分の住居を知るまでは、何となく現地人が住んでいる広めの一軒家に2階部分か離れを間借りさせて住むものだと思っていた。だからこそ、家の庭にはマンゴーやココナッツ、バナナなんかがあったら良いなぁ…なんて妄想もしていた。勿論、庭にマンゴーやココナッツがある家はハード面において、シャワーのお湯が出ないとか、よく停電するとか、色々大変なこともあるだろう。そんな事を覚悟して、私はスリランカに移り住んだはずだった。しかし、実際は大都市のど真ん中にあるピカピカマンションの1室だったのだ。
最初に私が自分の家の外観を見た時、あまりにも拍子抜けし過ぎて「ここってマンゴーの木とかあるんですかね?」と一緒にいた日本人に聞いた。すると、その人は「マンゴーは…コロンボだから難しいですね」と言われた。それもそうだ、ここは東京(コロンボ)なのだから。

大都市に住んだことのない(むしろ田舎を求めて古民家に住んでいたような)滋賀県民からすると、有難い反面これはこれで新しい環境過ぎて困惑する。埃っぽすぎて窓開けられないってどういうことやねん、と思っていると、日本の空気は綺麗だったのだと思い返してしまう。

そんなないものねだりシティガールの私だが、最近田舎の町に出向くイベントが発生した。

職場で知り合ったNGO団体の方からの招待で、キャンディにある農業の職業訓練を行う施設に行くことが出来た。

久しぶりに野菜や果物の苗を見る。その中には苺の苗もあった。(山などの標高が高い場所では苺なども栽培できる)それを見て、私も日本で苺育てたよ~と言うと、現地の生徒はビックリするような素振りを見せる。

他にも、山の斜面に沿って作られた畑や作業場はいくつもあって、それを見て回るだけでも楽しかった。あまりにも楽しくて「私、このセンターに移ろうかなぁ」と冗談で言葉にしてしまうほどだ。

コンポスト

また、畑を見るために斜面を上り下りしている時に、私がよく滑るものだから、近くにいた女の子の生徒が手を繋いで一緒に歩いてくれた。何だかんだ30分ほど彼女とずっと手を繋いでいたので、最後には彼女のことが好きになっていて写真まで一緒に撮ってしまった。

色々と見学が終わると、スイカやバナナを頂く。いつもならここで紅茶を頂くのだが、今回はキングココナッツをもらった。

しかも、このキングココナッツはその場で木から取ってきたキングココナッツをくれたものだがら、シティガールにとっては感激ものである。「私がしたいのはこういう事なんだ!!!」そう感じながら、またしても「こういう所に行きたい、移りたい」とブツブツ言った。最終的には、そのセンター長のような女性に「(自分の今の職場よりも)ここが大好き、ここにいたい、また来たい」と言っていた。

一緒に手を繋いでいた女の子もそんな私の様子を見てたからか、ナツメグの種を渡してきた。そして「毎日これを見て、私のことを思い出してね」と言ってきた。可愛いなぁ、本当に。

ナツメグの種。買うと高いらしい。

そのセンターから帰る道中。車から見える景色は綺麗で、自宅のあるコロンボに帰るのが惜しかった。車の中で「いやだな~帰りたくないな~」と何度も言うものだから、一緒に行動していた日本人の人から「月に1回スリランカの田舎を巡る旅をしたら良いんじゃない?」と言われた。
確かに、それは妙案である。今から職場を変えたり、生活拠点を変えることは大変だが、月に一回、スリランカの田舎を巡ることで、のどかな生活を供給できる上に田舎の現状も知ることが出来る。これは良いテーマを貰ったなぁと思い、私も嬉しくなって、帰りの道中の車で4時間喋り続けた。

しかしスリランカに来てまで、私は田舎を求めるようになるとは思ってもいなかった。結局、私が今やろうとしていることは、2020年の年末から2021年の3月にかけてやってた事と同じことだし、そこからの古民家生活で良くも悪くも豊かな経験をしたからこそ、今があるのである。何というか、スリランカに来て、本当に自分が大事にしたいことに気付き始めている気がする。

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