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初めてサリーを買って、一人で着た話

生地を買いに行く編

いつものように活動先で授業を見ていたら、その教室の先生から「今日の午後、サリーを買いに行かない?」とお誘いを受けた。その時、私は新居にも引っ越したばかりで、全然その土地のことが分からず、サリーを買いに行く事も勿論難しいと感じていた。その為、その同僚の誘いは大変うれしく、二つ返事で「ヤム!」(行こう!)と答えていた。
私の職場は日本で言うと渋谷区原宿のような場所で、かなり街中にある。さらに、繊維業が盛んな町らしく、服屋さんも多い。だから、同僚と行ったサリー屋さんも職場のすぐそこにあるお店だった。

お店に入ると、いっぱいのサリーが並んでいて、正直手に取って見ていいのか、何から見ていいのかも分からなかった。分からないままに同僚から「これはどう?」「これはキレイじゃない?」と言われたものを見てみたりする。しかし、全然しっくりこない。何というか、自分が着ているイメージが全く湧かないからこそ、頭の中でパズルのピースが合わない感覚で、日本で服を選ぶ時とは少し違う感覚だった。
そこで、私は好きな色から攻めてみようと思った。私はピンク色が好きなのだが、ピンク系で攻めたら、良い感じのサリーも見つかるかもしれない!と苦し紛れに考えたからだ。しかし、それも杞憂でいまいちピンと来るものは出てこない。

そうこうしていると、一緒にいた同僚からは「オヤーアマールイ」(あなたは難しい)と言われた。正直「そんなこと知ってるよ!知ってたよ!だからいつもタニエンインナワー(一人でいる)なんだよ」と言いたい気分は山々だったが、せっかくの好意を無下には出来なかったので「ゴメン」とつぶやくしかなかった。
しかし、私が迷えば迷うほど、お店の店員さんも「まだ迷うのかよ、この日本人」みたいな顔になっていくのが分かったので、とりあえず色が好みだったサリーを買うことにした。同僚は私が見た薄緑のパーティーサリーを買っていた。

ジャケットを仕立てに行く

サリーは5mぐらいの1枚布を色々巻き付けたりして着る。しかし、その1枚布のサリーだけで完成する訳ではない。公の場でサリーを着るには、サリーの下に着るジャケットやアンダースカートも同時に必要になってくる。
しかし、ジャケットは基本的にオーダーメイドなので、すぐに着れるような既製品はない。その為、サリーを買いに行った後、もれなくジャケットを仕立てに行く必要がある。
※アンダースカートはLadyJ(スリランカにあるデパート)にあったりするが、仕立てることも出来る。

そこで、早速近所にある仕立て屋さんに行こうとGoogleマップと睨めっこしていたら、同僚にGoogleマップはやめとけって言われた。彼女曰く、Googleマップは良くないからホストファミリーに近所の良い仕立て屋を聞きなさい、とのこと。
私は早速、ホストマザーに近所で良い仕立て屋さんはあるか聞いてみたら「サリーを着たいなら、私のサリーを使いなさい」と返答があった。違う、そうじゃない。その後も何度か再チャレンジしてみたが、ホストマザーの「私のサリーを着なさい」主張は曲がることがなかった。その為、ホストマザーは諦めて、最終的に家族ぐるみで仲良くしてもらっている同年代の現地人に聞くことになった。

彼女との連絡はとんとん拍子に進み、当日もお店まで一緒に車で連れてってもらった。(約束の時間から1時間ぐらい待ったのはスリランカあるある)そして現地に到着すると、自分が想像していたようなお店屋さんではなく、ひっそりと個人宅で営業しているような所だった。首都コロンボにもまだこんな世界観が残っていたのかぁ…と感心しつつも、確かに、こういう個人でやっている所のほうが安くて良い仕立て屋だったりするんだよなぁ…と思った。さらに、次は自分で来られるようにGoogleマップにピン立てをしようとしたら電波が悪くて出来なかった。(これはきっと、とにかく足で稼げという暗示なのだと思う)

とにかく着る練習をする

そこから、私の初サリーデビュー日は突然決まった。
ある日オフィスで話をしていると一人のスタッフから「1月1日はサリーを着てくるわよね?」と聞かれた。どうやら、スリランカでは1月1日に集まってキリバットを食べたり、牛乳の煮出す儀式をやるそうだ。しかも、その場に一緒にサリーを買いに行った同僚もいたため、「サリーあるよね?この前一緒に買いに行ったし」という話にもなり、これは着ないという選択肢がなくなったなぁと思った。
さらに次の日には、昨日話したオフィスのスタッフさんから「お正月にはサリーと一緒にこのアクセサリーを付けな」と言われ、ネックレスとピアスを貰う。もうこれで完全に外堀は埋められた。

牛乳を煮出す儀式
白いのがキリバット

とは言え、今までサリーを一人で着たことがないため、1月1日までに練習が必要だった。私は幸運なことにサロンを経営するホストファミリーの親戚がクリスマスホリデーで家に遊びに来ていたこともあり、その時に一通りサリーの着方を教えてもらうことが出来た。その後は、ひたすら自主練習に励んだのだが、その時はよくYoutubuの動画にお世話になった。

何でシンハラ語の動画なんだよ、とツッコミが入るかもしれない。けれども、それには訳がある。サリーという服自体はスリランカだけではなく、インドにも同様のものが存在する。正直、どっちでも見た目は変わらないようにも感じるのだが動画を見ていると、着方が少し異なるのだ。
私が親戚の人から教えてもらった着方は間違いなく上の動画の着方で日本語で「サリー 着方」と検索すると、微妙に着方が違う動画が多かったため、最終的に「saree srilanka」とかで検索した上の動画を参考にしていた。

↓これはちょっと着方が違う日本語の動画

↓これはほとんど同じ

しかし、それでも微妙な違いはあって肩から垂らしているプリーツがスリランカはインドよりも少し長めだったりする。他にも、先生はサリーでもお腹を見せてはいけないらしく、お腹が見えないようにサリーを着る必要があるとか…(私は腹見せがあまり好きではないので、かなり有難い)

サリーを着た1日

そして運命の1月1日。前々から練習してたお陰でスムーズにサリーを着ることが出来た。少しドキドキした気持ちで職場に向かう道中、何人かに「キレイだね~」と言われた。また、バスに乗り込むときに少し走っていたら、先にバスに乗ったおばちゃんがバスが行ってしまわないように、止めてくれた。サリーは着物みたいに、小走りでしか走れないので、かなり有難かった。これもサリー効果なのだろうか?

職場に着いたら、色んな人にサリーを褒めてもらった。さらに「一人で着たんだよ~」と言うと「シャー」(シンハラ語ですごいみたいな感嘆詞)と言われて驚かれた。あまりにも皆が「シャー」「シャー」言うので、正直嬉しいを通り越してビビっていた。しかし、よく考えると職場に来て1か月を経たない外国人が一人で着物を着てきたら、そりゃビックリするよなぁと思い、納得した。
とは言え、めちゃくちゃ着方を習得するまでは大変だったので、「すごいね~」と仲の良い同僚に褒められた時は「めっちゃ頑張ったよ、すごい汗かいたし」と言ったら、めちゃくちゃ笑われた。なんかこんな感じで面白トークが出来るぐらいシンハラ語が上手くなりたいな。(関西人)

サリーを着るようになってから、1段階サリーに対しての解像度が上がったように思えた。例えば、この人のプリーツの作り方上手だな、とかジャケットをサリーと違う色にしていたり、形やデザインに少しこだわりがある人を見つけると、参考にしたくなって写真を撮らせてもらったり、カジュアル
サリーの中でもプリント生地やコットン生地のそれぞれの特徴が分かってきたり、少しづつ色んな事が分かってくるようになったからこそ、訳も分からず色だけで選んだ最初のころとの違いを実感することが出来た。たぶん、まだまだ知らないことが沢山あるだろうから、奥深いサリーの世界を楽しみつつ、次回作のサリーにイメージを膨らませるばかりだ。

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