健康長寿の源、それは、テロメア！

テロメア　イフェクト エリザベス・ブラックバーン　エリッサ・エペル　
森内薫訳　NHK出版
　今回紹介する本は、健康寿命にご興味のある方には必読の書である。
テロメアって聞いたことありますか。テロメアが長い人は、健康寿命が長いというお話です。

　最近の科学や臨床の場からもたらされた発見により、病気の発生について新たな概念が生まれた。加齢に伴う大半の疾病の原因は、加齢による
テロメアの短縮、及びその背後にあるメカニズムに起因するのではないか
という考え方である。細胞を複製する能力が失われていく事を「複製老化」というが、どの様にそれが起きるかはテロメアで説明できる。
　また、テロメアの短縮は遅らせる事もできれば、逆に延ばす事もできる。あなたのテロメアは、あなたに耳を傾けているのである。

　テロメアは、染色体の端をキャップをしていて、染色体を保護している。（図2）

　人間のテロメアは、1本目のDNAはTTAGGGという塩基配列の反復で構成
されており、２本目のDNAのAATCCCという配列とペアになっている。
撚り合わされた２本がDNAの螺旋構造を作っている。（図8）

　DNAによって作られる遺伝子は染色体の中に存在する。（１つの細胞の
中に２３セット、合計で４６本の染色体がある。）遺伝子のDNAは、目を
茶色にするか青にするかなどを決定する。だが、テロメアのDNAには、そうした働きはない。細胞分裂が起きる際に染色体を守るのがテロメアの役目。この保護作用は極めて重要で、細胞分裂の際には、染色体を無傷で引き渡さなければならない。染色体とその遺伝子にとって細胞分裂は、危険を孕んだ
プロセスであり、何かに守られていなければ、細胞分裂の時、染色体とその中の遺伝物質がたやすく壊れる可能性が有る。染色体が壊れ染色体異常を
起こすと、細胞の機能不全や細胞死が起きたり、がん化した細胞の増殖が
起きたりする。テロメアは染色体の端を密封することで、こうした恐ろしい
シナリオを防止している。

　細胞が分裂する度にテロメアは、染色体の両端から塩基対を失う。人間が年をとり、細胞が分裂を重ねるにつれ、テロメアは短くなる。
「カイザー・パーマネンテ調査プログラム」で１０万人の唾液からテロメアの長さが調べられた。その結果、２０代から７５歳頃まで、漸進的に短くなる事が判明。だが、興味深いことにテロメアの短縮はこの段階でストップし、それどころか、７５歳以降むしろ長くなるように見える。これは、テロメアが短い人は、この時点でもう他界しているから。８０代や９０代まで生きる人は、概して長いテロメアを持っている。（図9）

　２０１５年にコペンハーゲンで行われた６万４０００人を超える人々を
対象とした調査で、テロメアの短縮と早い死期との相関性が認められた。
私達の死期は、たくさんの要因が関わっているが、テロメアの長さが、どれだけ長く私達が生き、どれだけ早く疾患期間に突入するかを決める要因に
なるという結果を示している。喫煙量が多いほどテロメアは短くなる事が
多くの研究から確認されている。白血球のテロメアが普通より長い人は、
大きな病気を患わずに健康寿命が長くなる。（図10）

　悲観論の人は、テロメアの長さが短い。ストレスに遭遇した時、脅威を
感じやすい人は、ストレスをチャレンジとして受け止める人に比べて
テロメアが短い。

　ストレスの元になる出来事がとうに終わっていても、それについて
くよくよ思い返している限り、ストレスは体に居座り、血圧の上昇や心拍数の増加、コルチゾール（ストレスホルモン）の増加などを長期にわたって
引き起こし続ける。

　家族を介護する健康な女性を対象に、日々のストレスへの反応度を調べたものがある。ストレスの多い出来事の後で、ウィルス感染と戦うCD8-T細胞（キラーT-細胞でも知られる）が老化してテロメラーゼ活性値が低いことが
分かった。CD8-T細胞は、ダメージを受けた時に炎症性のサインを送る大切な免疫細胞。過ぎ去った事を何度も思い起こし返す女性は、暗い気持ちや
不安をより多く感じていた。
これは、やがて、テロメアの短縮に関係してくる。

　この話を聞いて、自分のテロメアは短く、寿命が短いのではと心配に
なった方、安心してください。テロメア短縮を改善するテロメアーゼという酵素があり、DNAの修復を助けてくれます。テロメラーゼはタンパク質とRNA（リボ核酸）を含んでおり、テロメアDNAのコピーであるRNAが鋳型となって新たなテロメアを作り修復してくれる。（図11）　

　最近、インターネット上でテロメラーゼを増加させるサプリメントの広告も出されているが、これは、要注意。テロメラーゼは、細胞の無制限な分裂を誘発し、癌がより進行する可能性が有るからである。
瞑想や気功などの心身のテクニックは、ストレス軽減効果に加え、テロメアを修復する酵素であるテロメナーゼを増やす効果もある。運動で心血管系の健康を高めれば、テロメアに良い効果がる。

　テロメアは、ソーセージの様な加工食品を嫌う。好ましいのは新鮮で
健康的な食品（緑黄色野菜や青みの魚類など）。お互いを知らず、信頼し
合っていない等、周囲の人々との社会的つながりがが低いとテロメアは短くなる。子供の頃に複数の有害な事象に晒されるとテロメアには悪影響が
出るが、そこから引き離せば、損傷の一部は回復させることが出来る。

　運動する人のテロメアは、しない人に比べて長い。激しい運動をしている
アスリートは、中程度の運動をする人に比べて、テロメアが長いわけでは
ない。もし、あなたが、ストレスの多い生活を送っているなら、運動は、「すると良い」どころでなく、「必須」である。運動は、60％位の力で
歩く、もしくは、走る。息は少し荒くなるくらいが良いが会話は可能な程度でよい。これを、１日に４０分、週に最低３回行う。

　食べ物もテロメアに影響する。新鮮な野菜や果物、全粒穀物（主に玄米、
玄米を発芽させた発芽玄米、ふすまを取っていない麦、全粒粉の小麦を
使った食品、オートミール、挽きぐるみのソバなど）、ナッツ類、豆類、
オメガ３脂肪酸を含む魚（サケ、イワナ、サバ、マグロ、イワシなど）が
テロメアにとってよい。逆に、悪いのは、レッドミート（牛肉、豚肉）、
ハム、ベーコン、精白パン、コーラ、ソーダ、アルコールの多飲。

　最後に睡眠時間もテロメアに効く。高齢者は、一般に７時間以上の睡眠をとるのが良い。

　毎朝、コーヒーを一杯という方もおられると思うが、これは、テロメアへの影響はないそうだ。安心してモーニイングコーヒーを楽しんでください。

　私は、この本を読んでから、食パンを買う時は、なるべく全粒粉タイプを選び、毎日ナッツ類（アーモンド、クルミ、カシューナッツの素焼き品）
握りこぶし半分位を、毎日食べるようになりました。又、軽いランニングを
週に2回ほど8～10キロ程度、早歩きより少し早いペースで走るように
しています。

　さあ、皆さん、健康な人生をエンジョイしましょう！