『触れる指先が熱をもてば』 〜テーマ性愛〜(掌小説)
蒸し暑い、寝苦しい夜。何度寝返りを打ったのか。最初は数えていたが、もうどうでもよくなってしまった。それと同じくらい、目の前にある妻の寝顔を見ても、何の感慨もわかない。お互いに誘い合うことなんて、頭にもない。ひと言ふた言、気のない惰性で言葉を交わし、「おやすみ」と言って目を閉じるだけ。妻は隣に僕がいなくても、気が付かないかもしれない。いや、それは僕も同じだけど。
性欲が消えてしまったというわけではないから、ひとりで処理をする事はあった。それは独身時代、彼女がいなかったころと同じ