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■ 学校から帰ってきたら、あの女の姿は見あたらなかった。 居間はきれいに片づいている。 隅々までが磨き上げられ、塵 一つ見あたらない。 あの女の仕業だった。毎日、この調子だ。 英治はため息をついて、居間に鞄を置いて、何か飲もうと、キッチンの冷蔵庫に向かった。 冷蔵庫を開ける。 ジャムや、牛乳や、味噌や、タッパーに入った様々な食材…すべてが整理整頓され、冷蔵庫内壁に対して垂直に、もしくは平 行に並べてある。 父の好きな銘柄のビールも、しっかり6缶揃えて
前回【1/5】はこちら ■ 目が覚めたのは、夜中の2時くらいだった。 のどが渇いて仕方がない。英治はベッドから起き出すと、キッチンへ向かった。 冷蔵庫を開ける。またボトルは一杯だ。 いや、もうそういうことを考えるのはやめよう、と英治は思った。 そう、考えても理由のない腹立たしさがわいてくるだけだ。 その腹立たしさに、根拠がないことなどわかっている。 僕はもう14歳。 そろそろ少しは大人にならなければ。 コップに注いだ麦茶を一息で飲み干すと、そのま
前回【2/5】はこちら 初回【1/5】はこちら ■ 目が覚めると、朝の5時前だった。 外は明るくなっていたが、家の中はまだ誰も起き出してはいないようだ。 英治はベッドの上で目を覚ました。 Tシャツも、パジャマのズボンも元通りになっていたが、パンツの中はすでに乾き始めた精液でべとべとになっている。 痺れる手足を動かす。 手足は元通り動くようになっていたが、頭はずきずきと痛んだ。 ベッドから下りても、脚の感覚が定かではない。 それまで英治には、夢精の経
前回【3/5】はこちら 初回【1/5】はこちら ■ それから3日間、英治への“白い顔の女”の責めはさらに激しさを増した。 最低3回、射精させられ、英治の体力は限界に達していた。 もはや抵抗の意思は奪われた。 まるで麻薬中毒患者のように、英治は快楽を求めている自分に気づいた。 その時以外の性欲は全て巻き上げられた。 昼間の学校生活で、女生徒を見て性的な感情を持つことも無くなった。 その日の学校の帰り道、英治は強い日差しに照らされ、もはやまっすぐ歩くこ
前回【4/5】はこちら 初回【1/5】はこちら ■ 「ごめんね……苦しい思いをさせて……でももう少し、あたしのわがままを聞いて、我慢してね……」 一重がブラウスを脱ぎ、床に落とした。 さらにベージュのスカートを脱ぎ、それも床に落とした。 白いレースのブラジャーとセットのショーツだけを身につけた、一重が目の前に立っている。 先日、脱衣所で見たときときより一層、その肌は青白く、透き通って見えた。 かすかに上気した顔は、相変わらず悲しげな表情を浮かべながら
■ それは電柱の影から人の家をこっそり盗み見るのに、ぴったりの夜だった。 思っていたよりいい家だ。 そのの窓から漏れる光がとても暖かく見えた。 早くあの光とぬくもりの中に仲間入りしたいけど、約束の時間までまだ15分ほどある。 15分! この木枯らしの中では永遠のように思える時間だった。 おれはナップサックを開けると、すでに読み古してぼろぼろになっている“台本”を取りだした。 台本といっても、50枚ほどのA4コピー紙をペーパークリップで留めたもの
前回【1/5】はこちら ■ ……えーと……ちょっと話す順序を間違えたかな。 これじゃあおれがSM小説もどきの極悪非道のレイプ魔みたいじゃないか。 だから、話をあの夜の1週間前に戻そう。話が前後して申し訳ない。 “奥さん”とおれは繁華街の喫茶店に居た。 どうやって“奥さん”と知り合ったかって?……アプリだよ。 よくある話だろ? “奥さん”と会うのはこれで2回目 …半月ほど前に、おれは“奥さん”と接触して、ホテルに行った。 まあ、その後はだい
前回【2/5】はこちら 初回【1/5】はこちら ■ 話が前後して悪いけど、またちょっとその夜から1週間前に話を戻す。 ちょっとわかりにくくなってきただろうからね。 それに、おれのことをほんもの鬼畜レイプ犯だと思われると困るし。 “奥さん”はおれがあっけに取られていることを全く意に介さず、“行方不明になった女性歯科技工士”事件の顛末を語り続けた。 どうでもいい話だと思うだろ? ……でもおれはあまり退屈しなかった。 一体、その話がおれを今日呼び
前回【3/5】はこちら 初回【1/5】はこちら ■ 「ダンナさん、見たかい?……“奥さん”、イっちゃったよ」 ベッドの上でぐったりと弛緩し、荒い息を吐きながら呻いている“奥さん”を見下ろしながらおれは言った。 ダンナさんの様子はますます凄まじいものになっていた。 顔はもはや紅潮なんて生やさしいものではなく、グロテスクに赤黒く変色している。 おれの陰茎と同じくらい、凶悪に。 「なあ“奥さん”、良かったろ?」 顔を背けている“奥さん”に声をかけた。 「……
前回【4/5】はこちら 初回【1/5】はこちら ■ おかしい。あまりにもおかし過ぎる。 おれが気を失っている間に、地球が宇宙人の怪光線攻撃かなにかを受けて、おれ以外の人間全員の頭がいかれてしまったのか、それともおれが殴られたショックでおかしくなってしまったのか。 どちらかといえば後者のほうが可能性のありそうな話だが、おれにとって一番好ましいのは、これがおれの見ている悪夢だっていうことだ。 悪夢であるなら、いつかは醒める。 ……しかし、一番恐ろしいのは、おれ
■ 経理のタチバナとの関係がここまで続くとは思っていなかった。 タチバナが入社したのは3年前。 おれがこの会社で勤めはじめて10年。 結婚して8年。 娘のユカリが生まれて6年。 タチバナとつき合いはじめたのは1年前だ。 だから、歴史からいうとタチバナとの関係が一番新しい。 タチバナは中途で入社した。 入社したとき26だったから、今年29歳。 おれは32歳。 なんでつきあい始めたのかは、忘れてしまった。 たぶん、おれの方から誘ったんだと思う
【1/3】はこちら ■ 「……わっ!」 おれは思わずスマホに向かって叫んでいた。 切ろうと思ったが、遅かった。 「もしもし?」妻が電話の向こうで言った。「なに? だいじょうぶ?」 「……え……あの……うん、ああ、大丈夫。いや、あの……」 おれは狼狽していた。 「……切ろうとしたら大声出すよ」タチバナが下から言った。「そのまましゃべりなよ」 「……もしもし? もしもし? ……ちょっと何よ? あなた大丈夫?」妻が心配そうに電話口で聞く。「もしもし? もしも
前回【3/2】はこちら 初回【3/1】はこちら ■ 「おい!」また裏声で叫んだ。電話口を塞ぐのをすっかり忘れていた。「やめろ!」 「もしもし? あなた? 聞いてる?……ちょっと、大きな声出してどうしたの?」 どうもこうもない。 タチバナがおれのギンギンにテンパった性器の上に跨ろうとしている。 「ちょっと待てって!……いくらなんでも……」 「もしもし? もしもし? あなた? どうしたの?」 電話の向こうから妻が聞いてくる。 おれは我に返った。 「あ……あの
■ バイトから帰って部屋に入り、明かりをつけた。 部屋の真ん中に、両目と口の部分だけ穴の開いたスキー帽を被った男が立っていた。 ふつうなら心臓が止まるくらいびっくりするところだろう。 女の一人暮らしの部屋に、スキーマスクの男が侵入している。 よほどのことが無い限り、その男はレイプ目的と考えて間違いはない。 しかし、あたしはあまり驚かなかった。 なぜなら、あたしはこの男を知っているからだ。 というか、その男はあたしと半年前に別れた彼氏だった。 覆面