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「生産の東アジア化」がもたらしたもの

先日たまたま戦後の中小企業史にまつわる文章を目にすることがあったので、今回はその中の「生産の東アジア化」についてピックアップしてみます。

分業によるコストカット

そもそも私が目にした記事の主意は「中小企業を取り巻く経済の長期停滞の要因」をテーマにしたものでした。(だったと思います・・)
統計的に、中小企業が戦後からどのような変遷を辿り、現在に至ったのかを簡単に解説していたものでしたが、何となく肌感覚で想像できるものもあればそうでないものもあり面白かったです。

中でも「生産の東アジア化」という動きが日本の中小企業へ与えた影響の大きさについて言及していた部分があったので、記憶を頼りに整理してみます。

1980~90年代にかけて、産業革命以降の大量生産型工業からIT革新へと時代が移り変わる中で、経済のグローバル化が加速すると、東アジアを中心とする不熟練技術者でも一定の製造加工能力を担保出来るようになりました。
これまでは、先進国内で出来上がった仕組やノウハウを産業として転用すると技術や環境の違いにより品質担保出来なかったものが、技術革新や情報化に加え、余剰な人的労働力をもってカバーできるようになりました。

日本国内においては、特殊な技術を必要としない工業分野の国際競争力は相対的に減少していき、大企業のコスト削減を目的とした海外拠点進出が急激に増えました。
特に中国での生産拡大は当初は生産コスト低減が目的でしたが、2000年代には所得向上で拡大する現地マーケットの獲得も目的とし、さらに海外生産比率は加速していったそうです。

こうして中国から東アジア各国へ同様の波及が起こり、国内と国外の分業関係の歴史的な転換があったという話でした。

中小企業を取り巻く環境変化


大企業を中心とした上記の流れは、主従関係に近い中小企業への受注縮小に繋がりました。
特にそれまでの日本の複数下請階層の仕組みでは下位へのしわ寄せが多く、計らずとも零細企業への影響が大きくあったと推測できます。

国内の多くの中小企業は、そのような局面を経て東アジア企業との直接的な競争関係に立たされ、コストカットが出来ないと東アジア企業へ転注されるという事態となりました。

論理的に説明が難しくもどかしいですが、とにかく上記一連の流れは中小企業を取り巻く経済停滞の一因である出来事だったと認識を深めました。

私の考えとこれから

ただし私個人の意見として、「だから日本は停滞したのだ!」「中小企業の仕事を奪う大企業は悪だ!」などと叫ぶつもりはなく、経済のグローバル化の流れの中で起きた因果関係の一つとして捉えるべきだと感じています。
結果として日本の経済停滞を引き起こした要因の一つであるとしても、例えば鎖国し政策により重層下請け構造が淘汰されずに現在まで残っていたらと考えると、それも現在のような国際競争力を持つに至っていない可能性もあると思います。

私たちは過去から学び、次の世代のことを考えた経済の仕組みを構築していかなければなりません。
上記例のように、人的資源のコストカットを海外労働力に転嫁し、それを利鞘とした経済成長をベースに今後を考えるのは明らかにナンセンスだと思います。
昨今の円安により表面化してきましたが、今後は逆に日本が安価労働力の対象となるかも・・?

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