見出し画像

佛師の美的感性

先日佛師の方にお会いしお話する機会がありました。
その時の気づきや感想をまとめてみようと思います。

佛師という職業

「佛師」とは仏像を彫刻する職人さんのことを指します。
寺院や仏壇などのご本尊を木から彫り上げる仕事をされています。
人々の心の支えや信仰の対象となるものを創り出し、表現していくという技術がものを言う職業となります。

一つの木から、肌の質感や表情、優しく穏やかなものから荘厳な雰囲気を表現するために、高い技術力はもちろん相当な精神力が必要とされるそうです。
自分が表現したいものを形にするという作業だけでなく、本堂の設計や依頼主の求めるものを総合的に汲み取る感受性も必要になります。

1000年先まで残る、答えの無い至高のものづくりの世界・・・
見習い期間は相当な修行と勉強が必要になってくる所以ですね。

佛師ならではの感性とは?

面白いなと思ったのは、「引き算の美学」です。
木を彫り出し、徐々に形にしていく作業の特性は、引き算の考え方に近いそうです。

他の芸術作品とは異なり、余白にモノを足していき表現していく手法とは根本的に異なり、削りに削った「残り」が洗練された作品となります。
このイメージは美容師の感性と似ている部分があるのだとか。

しかも、一度引いてしまったら元には戻せません。
どれだけ時間をかけて彫ったものでも最後に少し彫りすぎたので元に戻そう・・・ということは出来ない世界です。

ダイナミックで深い陰影を表現するために、いわゆる攻める彫りをする際、攻めすぎると無粋で下品になってしまいます。
逆に慎重になり彫りを少なく浅くしてしまうと貧相な雰囲気になってしまいます。
この辺りの「本尊を見る人の感受性を想像して刺激するよう表現する技術」は本当に凄いと感心しました。

1000年先を見据えたものづくり

お話した佛師の方は、1000年近く前の仏像の修繕も手掛けることがあるそうです。
たまたま200年前に修繕された仏像の修繕をした際、当時の佛師が明らかに手を抜いたなという感覚や作業の印象が手に取るように分かったと仰っていました。

つまり、途方もない時間を経て次の佛師の手に渡ったときにも胸を張っていられる仕事をしたいという精神を持たれていたことが凄く印象的でした。

1000年先を見据えたものづくりの精神は、佛師の世界だけではなく私の会社やものづくり業界、そして生き方の部分で学ぶべきものがあるなと感じました。
1年先も見れない、見ようとしていない状態では10年、100年先は到底見えてこない気がします。
その先へ少しでも歩みを進めるために精進します!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?